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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第八章 護衛とフェスティバル

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71.魔獣の襲撃

 すぐさまナディライが御者に声をかけ、最後尾にいた俺達の馬車がスピードを上げて先頭の馬車の隣に並ぶ。

 ディケイドが身を乗り出して、ハルバリに声をかける。


「ハルバリ! 何か見えたか?」

「狼系の魔獣や! 数は分からんけど群れが両側から囲んどるわ」

「分かった」


 今、馬車が走っているのは広い街道だ。その街道の両側は森になっていて、ハルバリは森の方を見ている。そちらに目を向けると、確かに数匹の狼のような魔獣が、馬車と並走するように森の中を走っているのが見えた。

 

 馬車の両側を挟み込むようにしているのか。すぐに襲ってくる様子はなさそうだが……。

 ディケイドがミザネアに声をかける。


「ミザネア。攻撃魔法で狙えそうか?」

「たぶん狙えるけど……私より適任がいるわ」


 ミザネアが俺の方を見て微笑む。

 なるほど……微妙に距離がある上に相手の姿はハッキリ見えない。なら単発で打ち込むミザネアの無属性の攻撃魔法より()()()の方が確かに適任だ。

 ミザネアの意図を読んだ俺がツァミに声をかける。


「ツァミ! 魔獣の姿は見えるか?」

「こくり。見える」

「たぶん周りに何匹もいるはずだ。得意の氷槍を撃ち込みまくってやれ!」

「わかったー!」


 ディケイドが心配そうに俺の方に目を向ける。


「おい、大丈夫なのか?」

「ああ。こういう数でくる敵だったらツァミの独壇場だよ」


 ツァミが御者台に移動して、魔法の詠唱を始める。すぐ隣にはミザネアが馬車から落ちないよう、ツァミの体を支えた。

 ツァミがロッドをかざす。


氷槍(アイスジャベリン)!!」


 ツァミのロッドから生み出された氷の槍が次から次へと森へ吸い込まれていく。連射された氷の槍が森の中を走る魔獣に突き刺さっていく。

 右側を撃ち続けること数十秒。魔獣の姿が見えなくなったところでツァミが体の向きを変える。


「次、こっちー!」


 何とも緊張感のない声だが、本人は至って真面目だ。次は馬車の左側の森を走る魔獣に狙いを定める。すぐ後ろの荷台からサフィアとティレイアも顔を覗かせて、ツァミの様子を見守っていた。


氷槍(アイスジャベリン)ー!!」


 再び氷の槍の速射砲が森に吸い込まれる。それと同時に聞こえる魔獣の鳴き声。

 俺の隣でナディライが弓を構えたので、すぐにそれを制止する。


「ナディライ。援護なら不要だよ」

「しかし、それではツァミちゃんの魔力が……」

「あいつはブロンズだけど魔力量は桁違いだ。これぐらいで魔力不足にはならないよ。有名な魔術師のお墨付きだ」

「そうですか……」

「それより後ろからも来ているのがいる。もし弓の射程が届くんならそっちをお願いしてもいいか?」


 ナディライが弾かれたように馬車の後方に目を向ける。


「本当だ……分かりました。後ろの魔獣は僕が引き受けます」

「うん。頼んだよ」


 皆、両側に気を取られていたけど、ツァミが魔法を撃ち始めた時から何匹かが馬車の後方に回り込んでいた事に俺は気付いていた。充分な距離があるから後でもいいかと無視してたけど。

 ナディライが手伝いたそうだから、せっかくだし彼に任せよう。ナディライはすぐに荷台から飛び出ると、最後方を走る馬車へと跳び移っていった。

 へー、かなり身軽なんだな。

 

 そうこうしているうちにツァミの氷槍は両側の狼型の魔獣を一掃していた。もう両側の森に、並走している魔獣の姿は見えない。


「おじたん!」

「ん?」

「ぶい!」

「良くやった! ツァミ」


 ドヤ顔でブイサインするツァミ。彼女の体を支えていたミザネアも、笑顔で俺にブイサインを見せる。

 同じく御者台にいたハルバリが俺達に向かって叫ぶ。


「とりあえず両側はもうおらんわ!」

「分かった! ナディライが後ろの奴を相手してくれてるから二人は一旦馬車の中に戻るんだ」


 ディケイドの指示で、ツァミとミザネアが馬車の中に戻る。ハルバリは引き続き周辺を警戒する為に御者台に残った。

 

 馬車に戻ったツァミの頭を撫でながら、お菓子をあげているティレイアの姿が見えた。なんかまるで飼い犬だな……。


 俺達の乗った馬車は少しスピードを落とし、最後尾の方へ戻っていく。そしてナディライが俺達の馬車へと戻ってきた。


「追いかけてくる魔獣はもういませんね」

「そうか。ありがとう、ナディライ」


 ナディライを労ったディケイドが俺に目を向ける。


「この襲撃を馬車を止めずに撃退出来たのは大きいな。ラドウィンはすぐに奴らが後ろに回り込んだのに気付いたのか?」

「ああ。ツァミが魔法を撃ったあたりだな」

「なるほどな……」


 ディケイドは口では納得したように話すが、顔は不思議そうな顔をしていた。

  

 俺の身体強化魔法は筋力や瞬発力を飛躍的に向上させる。更にはその強化する部位や効果の強弱も調整が出来る。

 これが出来るのは今まで俺しか見たことがない。ルキュアとベンゼルもそんな調整は出来ていなかった。


 実は警笛が聞こえた瞬間に俺は視覚と聴覚だけに身体強化魔法をかけていた。そのおかげで後ろに回り込んだ奴らの存在にすぐに気付けたのだ。


 もちろん効果は数分しか持たないからずっと索敵するのは無理だが、強化魔法がかかっている間ならたぶん俺の索敵能力はハルバリよりも高いだろう。ディケイドが不思議がるのも当然だ。こんな事出来るなんて誰にも言った事ないしね。

 まあ、こういうのは年の功ってヤツだね。


 ナディライの弓の腕も大したものだと思う。数匹とはいえ走る馬車の上で、あっという間に追いかけてくる魔獣を射止めるんだからな。

 さっきもちょっとだけ教えてもらったけど、時間が出来たらもっとしっかり教えてもらおっと。


 こうして最初の魔獣襲撃を何事もなく退けた俺達は森を抜けて、日没前に山岳地帯の手前にある宿場町へとたどり着いたのであった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

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