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7.強化魔法

エピソードタイトルでネタバレのパターンです(^o^;)

 ロープを駆け下る俺めがけてヴァルタロフが飛びかかって来るが、一瞬だけ完全に手を離して少しだけ落下することで奴の脚の一撃を躱す。


 あぶねー! 今完全に掴まれたと思った。

 奴が離れた隙に少しでも下っておかないと。幸いヴァルタロフは空中で静止出来ない。だから一度攻撃してきたら必ず離れていく。


「二人とも! 親鳥は俺が引きつけるから森に逃げろよ!」

「分かった! すぐに崖下に行くから待っとれよ!」


 ボルゾアの返事が崖上から聞こえた。

 俺は更に下って岩棚を通り過ぎて、更に下へ。

 地面まではあと二十メートルを切った。あと少しで森に降りられる。森に入れば奴の空中からの攻撃は凌げるはずだ。


 旋回したヴァルタロフが再び俺に向かってくる。そして雄叫びを上げた。

 逃げんじゃねえ! 卵返せ! と言ってるのかも。

 もう一撃来る。さっきみたいに少しだけ落下して躱すか? いや……、

 下に目を向けると木が密集した森林地帯。地面までは二十メートルだが、あの木の先端までは十メートルちょい。


 いける。まさかこの歳になって森に向かってダイブすることになるとは思わなかったが、奴の追撃を逃れるにはコレしかない。

 万が一にでも奴に体を掴まれたらそこで終わりなんだからな。

 向かってくるヴァルタロフに背中を向けて、ロープに繋がった命綱を外す。

 よし! 覚悟決めろ! ラドウィン=ロングロッド! 行くぞ!


 ロープから手を離し、崖の壁面を蹴って眼下に広がる森林地帯へとダイブした。


 いででででっ!

 木の枝が俺の体を容赦なく叩きつける。着地の時にリュックをぶつけないようにしないと。

 落下しながら枝を掴んで地面までの落下を食い止める。何とか枝を掴んで木にぶら下がる形で体の落下が止まった。

 空を見上げると、俺を追いかけたヴァルタロフがすぐ上を旋回していた。

 やばっ! 早く離れないとここでもあぶねえ。すぐに木を伝って地面まで降り立つ。

 

 周りは木が生い茂っていて、ヴァルタロフが下りて来られるような隙間は見当たらない。

 よーし……、あとは奴が何処かに行くまでやり過ごして、ミザネア達と合流出来れば……。


 森の中を慎重に歩を進めていく。上に目を向けるが、地上からは木の枝が邪魔でほとんど空は見えないので、今ヴァルタロフがどのあたりを飛んでいるのか分からない。

 諦めてくれたか? とりあえずミザネア達が崖から下ってくるだろうと思われる獣道の方向へ向かう。


 ミザネア達と崖の上と下で高低差はあるが、回り込んだとしても距離はそんなに離れていないはずだ。最悪、大声で呼べば見つかると思うが、ヴァルタロフや他の魔獣に見つかると厄介なので、それは最終手段だな。

 道なき道を進んで行くと、少し離れた所でドスンと大きな音。続いて木がメリメリと折られるような音が続く。


 まさか……。

 その音のする方に目を向けると、木の間から、何か巨大な物が木をなぎ倒しながらこちらに向かってくる。あの鳥、無理やり森の中に着地しやがった。

 まだ諦めてなかったのかよ……しつこいな。


 離れた場所に降り立ったヴァルタロフが嘴で木をなぎ倒しながら最短距離でこちらに近付いてくる。しかもかなり早いペースで。

 これは確実に追いつかれるな。

 大人の胴ぐらいある木の幹を次々と食い千切りながら、ヴァルタロフが目の前に立ちはだかった。俺は剣を抜いて構える。


 周りは森だ。ここなら奴は自由に飛ぶことは出来ないから掴まれてすぐに空へ上がられることはないだろう。けど、あの嘴の威力……。腕ぐらい一瞬で千切られそうだ。

 悠然と立ちはだかるヴァルタロフが俺を見下ろす。羽を閉じているが、頭までの高さは三メートルはあるだろう。かなりの巨体だ。


 ここで俺は逃げるか、応戦するかの選択を迫られる。まず逃げるだが、かなり厳しいだろうな。足場はあまり良くない。奴は木をなぎ倒しながら最短距離で俺に向かってくる。奴に背中を向けて、後ろからあの嘴で食い付かれたら終わりだ。かと言って、卵を返したら見逃してくれる、という雰囲気でもなさそうだ。というわけで逃亡は却下。

 

 なら応戦というわけだが……。

 絶対に奴が飛べる場所に行かないように応戦しなければ、掴まれて飛ばれたらそこで終わりだ。周りの木を上手く使えばそれはいけそうな気がする。

 

 剣を構える俺に警戒しているのか、様子を窺うようにこちらを見下ろすヴァルタロフ。


 俺はミスリルランクの冒険者だが、パワーもスピードもおそらくは平均以下しかないと思っている。それにとんでもない剣技があるわけでもない。

 じゃあ何故二十年以上も冒険者を続けられて、且つ冒険者として二番目のランクであるミスリルランクまで昇ることが出来たのか。

 

 たった一つの俺の得意魔法……強化魔法のおかげだ。

 剣士、戦士タイプの冒険者のほとんどは魔法を使えない。一部使える者もいるが、そのほとんどは攻撃魔法だ。俺のような強化魔法を使える剣士はほとんど聞いたことがない。

 俺は自分で自分に強化魔法をかけることが出来る、極めて希少な冒険者なのだ。

 しかも俺の強化魔法は体の筋力、瞬発力、体力を上げるだけでなく、物体にもかけることも出来る。物体を強化すると、剣だったら切れ味や耐久力。防具だったら防御力を上げることが出来る。そんな強化魔法は魔術師でもなかなか使える奴はいない。

 強化魔法が効いている数分間、俺の強さは跳ね上がるということなのだ。


 その強化魔法を使うことで俺は過酷な冒険者生活を三十年近くも続けられたのだ。

 ヴァルタロフはかなり強力な魔獣だ。強化魔法のない俺だったら勝負にもならないだろう。


 ヴァルタロフが低く身構えた。

 俺は身体強化魔法と物体強化魔法をかけた。これで俺は数分間、驚異的な身体能力で動くことができ、手にした剣は凄まじい切れ味と耐久力を発揮する。

 

 先に動いたのはヴァルタロフ。地面を蹴って木を押しのけて、その巨体が俺に向かって突進してきた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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