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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第八章 護衛とフェスティバル

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68.ハーフエルフの三姉弟

 宿屋の近くでミザネアとツァミと合流して、ディケイド達との集合場所へと向かう。正午まではまだ充分に時間はある。

 動き出した町の喧騒を抜けて、イオアトスの外壁近くにある乗り合い馬車の停車場へと向かう。


 いくつもの馬車が並ぶ乗り合い場。

 ひと際大きな体、肩に剣槍を背負ったディケイドはすぐに見つかった。その隣には真っ赤な髪の小柄な獣耳少女。背中に大剣を背負ったハルバリだ。二人ともよく目立つ。


 近付くと、すぐに二人は俺達に気付いた。


「おう! ラドウィン」

「やあ。お待たせ」


 応えるディケイドに、無言で軽く手を挙げるだけのハルバリ。そのハルバリの視線が俺からミザネア、そしてツァミの所で止まった。


「なんや、おっちゃん。アンタ、子供がおったんか?」

「違うよ!」


 俺といると、ツァミはだいたい俺の子供と間違われる。三十歳も離れてるから当然なんだけども。


「ま、とりあえず三人ともこっちに来てくれ。依頼人を紹介する」


 ディケイドに連れられて、少し離れた馬車の方へと移動する。

 今回護衛をする馬車は全部で四台って聞いていた。先頭の馬車の側に黒い服装の、とても綺麗な女性が御者らしき男と話し込んでいた。

 その女性が近付く俺達に気付く。


「おや、その人達なの?」

「ああ。今回の護衛を引き受けてくれたラドウィンと、ミザネア。それと……ツァミだ」

「うふふ……急な依頼なのに受けていただいてありがとう、ね」

「いえ……」

「こちらが今回の依頼人のサフィアさんだ」

「サフィアよ。今回はよろしく、ね」


 金髪のハーフエルフ、サフィアが俺達に軽くお辞儀する。片目が隠れるくらい長い前髪の隙間から綺麗な碧眼が覗く。ハーフエルフの特徴である木の葉のような形の耳、腰まである長い金色の髪は一つに束ねられている。


 俺とミザネアが挨拶と自己紹介をして、最後にツァミが挨拶する前にディケイドが話に入ってくる。


「で、サフィアさん。この娘がさっき話していたブロンズの冒険者なんだが……」

「ツ、ツァミです」

「あら、可愛いお嬢ちゃんね」


 珍しく緊張した面持ちで挨拶するツァミ。依頼人に駄目だと言われたら一緒に行けないからな、と言ってあるからかなり緊張しているようだ。


「あ、あの……ツァミ、頑張る。行くの、駄目?」


 一瞬驚いたような表情を見せたサフィアがにこやかに微笑む。


「うふふ……ツァミちゃんは魔術師なのよね?」

「こくり。ツァミ、魔術師」

「来ても大丈夫よ。私達の事、しっかり守ってちょうだい、ね」

「こくり。ツァミ、頑張る」


 笑顔で応えるツァミが、俺とミザネアに向かってブイサインする。ひとまず依頼人からは認められたようだ。

 にこやかな笑みを浮かべながら、


「可愛いらしい女性ばかりで華やかになるわね。それに……商売にも繋がりそうだわ、ね」


 華やかは分かるが、何故商売に繋がるのか? 何かよく分からないがサフィアの笑顔からはその考えが読み取れない。

 

 依頼人への紹介が終わって、俺達はディケイドに連れられて別の馬車の方に向かう。そこにいたのは長身痩躯のハーフエルフの男。


「ナディライ。今、いいか?」

「あ、ディケイドさん。大丈夫ですよ」


 ナディライと呼ばれたハーフエルフの男が俺達に近付いてくる。


「こいつはナディライだ。サフィアさんの所で専属の護衛をしている」

「ナディライです。今回は急な依頼にも関わらず、引き受けていただいてありがとうございます」


 専属の護衛なのにえらく丁寧な挨拶。何故かと思ったらすぐに謎が解けた。


「ナディライはサフィアさんの弟だ」

「姉ともどもよろしくお願いします」


 長身のナディライが頭を下げる。

 うん、かなりのイケメン。サフィアと同じ金色の髪はハーフエルフにしては珍しく短めだが、整った顔立ちや木の葉のように尖った耳の形はハーフエルフのそれだった。

 このナディライが弓使いか。爽やかな好青年って感じだな。

 ナディライとの挨拶を終えて、ディケイドが辺りを見回しながら尋ねる。


「ナディライ。ティレイアはどこだ?」

「えっと、レイア姉さんは何か買い物があると言ってちょっと出ています、すいません」

「あいつ……こんなギリギリで買い物かよ」


 ディケイドが頭をゴシゴシ描きながら顔をしかめる。隣にいたハルバリが冷静な声で話す。


「あいつは元々そういう奴やろ」

「まあ、そうだな」


 ハルバリの言葉に納得するディケイド。

 苦笑いを浮かべるナディライ。

 すると、町の方から大きな紙袋を抱えた女性がこっちに向かって走ってくる。おそらくだが、紙袋がデカくて足元は見えていないと思う。

 それを見たナディライが叫ぶ。


「レイア姉さん! そんなに急がなくて大丈夫ですよ! ちゃんと足元見て……あっ」


 紙袋を抱えた女性が豪快に躓いて転んだ。慌てて駆け寄るナディライ。


「大丈夫ですか? レイア姉さん」

「だ、大丈夫だよ……ナディ。見て……アタシは転んだけど、この袋の中のパン達は無事だよ。アタシ、スゴいと思わない?」


 紙袋を抱えたまますぐに立ち上がる女性は、ナディライにドヤ顔で話す。


「ディケイドさん達が待ってますよ」

「え? もう来たの?」


 紙袋を抱えた女性が俺達の姿に気付き、また走り出した。


「あー! ハルちゃーん! ディケー! おっはー!」

「おっはーじゃねえよ! お前、出発前にどこ行ってやがった?」

「いやー、せっかくイオアトスに来たからにはあのパン屋のパンを買わねば、と思ってねー。皆の分の買ってきたのだよ!」

「そうかそうか……分かったからよ。とりあえず今回の護衛の奴らを紹介するぞ」


 サフィアやナディライと同じくハーフエルフ。髪は金色だが少し青みがかっている。肩ぐらいの長さで軽くウェーブしている髪と常にニコニコとした笑顔から活発な印象を受ける。

 紙袋からパンを取り出して、俺とミザネアにパンを手渡す。


「ここのパン美味しいんだよ! 知ってる? 焼きたてを買ってきたのだよ! あげるね」

「は、はぁ……」


 ディケイドがその女性の頭を鷲掴みにする。


「とりあえずちょっとの間、じっとしてろ」

「ちょっと、ディケ! アタシを雑に扱うな!」

「こいつはティレイアだ。依頼人サフィアさんの妹で、さっきのナディライの姉だ」


 ティレイアは頭をディケイドに掴まれたまま、満面の笑顔を俺達に向ける。


「ティレイアです! いえーい! よろしく!」


 俺達を順に見るティレイアの視線がツァミの所で止まった。


「!? 何なに!? めっちゃ可愛い女の子いるんですけど!? え? え?」


 ディケイドの腕を振り解き、ツァミの眼前まで近付いてくる。ツァミが少し怯んだので、俺が代わって紹介する。

 

「こいつは冒険者のツァミって言います。あ、俺はラドウィンです」

「あ、ご丁寧にどうも。ツァミちゃんはラドウィンさんの娘さん?」

「違う違う。ただの冒険者仲間だよ」

「へぇ~……あっ! じゃあ、アタシ達と一緒に護衛するんだねっ! よろしく! ツァミちゃん、パン食べる?」


 ツァミにパンを差し出すティレイア。スッと隣に来たディケイドがまた話し出す。


「まだ紹介の途中だろうが。とりあえず、こいつは依頼人の妹だが魔術師だ。今回は俺達と一緒に護衛につくからよろしく頼む」


 ティレイアがツァミにパンを差し出しながら、俺達に向かって眩しいくらいの笑顔を向けた。

 姉弟(きょうだい)なのに三人ともなんか……全然雰囲気が違うんだな……。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


初登場のティレイアですが、彼女は可愛い女の子に目がありません。


これからもよろしくお願いします!

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