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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第八章 護衛とフェスティバル

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67.おねだり顔

「サリーデのフェスティバル付きの依頼なの? 凄いじゃない! 行きたい、行きたい!」


 ディケイドから仕事内容を聞いたミザネアが興奮気味に話す。隣でツァミがあ然とミザネアの顔を見上げている。そのツァミが俺に視線を向ける。


「おじたん。ふぇすてぃばるって何?」

「ああ。お祭りの事だよ、ツァミ」

「おぉ、お祭り!」


 ミザネアとツァミは今日は二人で魔法の練習をしていたそうだ。ツァミのパーティーが休みの時はこうやって時々ミザネアがツァミに魔法を教えているらしい。

 その帰りにギルドへ寄ったら俺とディケイドを見つけて、驚かせるつもりでディケイドの背後の席にいたそうだ。

 

 ミザネアがツァミに向かって、


「ツァミ。ただのお祭りじゃないのよ。大陸中から色んなお店が集まってくる凄いお祭りなのよ。普段手に入らないような商品もフェスティバルでは売られてたりするんだから」

「へぇー、スゴい……」


 ミザネアの熱の入った説明にツァミが押されたように頷く。ミザネアがそのままディケイドに目を向ける。


「ねえ、ディケイドさん。私もその依頼、受けていいの?」

「ああ、いいぞ。人数はまだ欲しいし、魔術師が来てくれると俺も助かる」

「やった!」


 俺より先にミザネアが引き受けちゃったよ。ミザネアが俺の方に目を向ける。


「もちろん、ラドさんも引き受けるんでしょ?」

「まあ……そうだな」


 ディケイドが笑みを浮かべながらこちらを向く。

 

「よし! じゃあ決まりだな。ラドウィン」

「ああ、分かった。引き受けるよ」


 今朝、もうややこしい頼み事は断ろうと誓ったところなのに! 報酬の良さについ引き受けてしまった。どうして俺はこんなにも誘惑に弱いんだ……。

 と、ディケイドの背後からこちらを覗くツァミと視線が合う。


「おじたんとミザちゃん、町を出るの?」

「ああ。一ヶ月ぐらいだけどな」


 淋しそうな目をしたツァミがすぐ隣のディケイドを見上げる。困った顔をしたディケイドが、脇から覗くツァミと視線を合わせた。


「ツァミも……行っちゃ駄目?」

「き、君も!?」


 ツァミとディケイドは初対面だ。

 ツァミと出会った頃、ツァミは初めて会う人の前では俺の陰に隠れていたのに。今ではこんなにもグイグイいけるようになって……立派になったな…………じゃなくて!


「ツァミ。お前はミッグスのパーティーがあるだろ? 一ヶ月も町を離れるのはマズいだろ?」


 俺がそう言うと、ミザネアが入ってくる。


「それなら大丈夫だと思うよ、ラドさん。今、ツァミのパーティーの子が一人怪我して休養中だから」

「またぁ? またフロークが怪我したのか?」

「ううん。今度はミッグス。皆、ひ弱。私とエリハナは怪我しない」


 更に言うようになったな……。てか、また怪我してんのかよ。ミッグスとフロークはツァミに陰でこんな事言われてるなんて思ってないだろうな……。


 だがそれでもディケイドは顔をしかめる。


「でもお嬢ちゃんはまだブロンズだろ? 悪いが、この仕事はブロンズにはちょっと厳しいな」

「ぶぅ……」


 頬を膨らませるツァミの横でミザネアが割り込む。


「でもディケイドさん。ツァミの魔力と魔法はブロンズ以上ですよ。それは私が保証します」

「確かに魔術師は貴重だから一人でも欲しいところだけどよ……」


 淋しそうな目をディケイドに向けたまま動かないツァミ。

 

 このツァミの視線に勝てるか? ディケイド?

 ちなみに俺はこのツァミのおねだり顔に勝ったことはない。いつも負けてツァミとクエストを受ける羽目になっている。おじさんにとって、このツァミのおねだり顔は反則なのだ。

 ツァミとディケイドが見つめ合う事、数秒間。


「…………分かった。一応依頼人に聞いてみよう」

「やた!」


 勝った。ツァミがクリスタルランクのディケイドをも陥落させた。

 小さく溜め息をついたディケイドが俺の方に向き直る。


「これでこのツァミちゃんも入れて四人か。だとすると合計六人か……。ま、アイツもいるし、何とかなるか」

「ん? あとハルバリだけじゃなかった? あとは誰がいるんだ?」

「依頼人専属の護衛が一人いる。弓使いでなかなか腕も立つ」

「へえ。なるほど」


 弓使いの護衛か。最近狩猟も始めたし、ちょっと弓の使い方とか教わろうかな。


 ディケイドがミザネアとツァミを同じテーブルに招くと、


「じゃあ皆でメシ食って、軽く決起集会といくか。明日は昼前には出発するからな。よろしく頼むぜ」


 こうして俺達四人は同じテーブルで食事を取り、明日からの護衛の仕事の英気を養った。

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