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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第七章 盗賊団を追い詰めろ

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59.簡単に言ってくれるけど…

急に涼しくなってきたので、体調管理が大変です。

皆さんもご自愛ください。

 通常、魔術師は剣士などの前衛職と共に戦闘をする。一人冒険者というのもいるが、俺みたいに一人でクエストを受けるのは剣士や戦士だ。魔術師が一人でクエストを受けることはほとんどない。

 魔術師の一人冒険者は特定のパーティーに属さず、雇われ助っ人という形で活動している者がほとんどだ。


 それは何故かというと魔術師には決定的な弱点があるからだ。


 魔法の詠唱。

 魔法を発動する際の詠唱は必ず必要で、熟練度が上がれば短くすることも出来るが、全くの無詠唱で魔法を発動出来ることはない。

 詠唱の間、魔術師は無防備になる。魔獣などと相対した時にその時間は致命的な弱点となるのだ。

 だから魔術師はその弱点を晒さない為に、必ず前衛職と共に戦闘をするのだ。


 ダイラーはその弱点を理解(わか)っている。ネルアリアとミザネアが詠唱を始めた瞬間、彼女らの前に俺やリューラのような前衛職はいない。

 魔術師最大の弱点をダイラーは突いたのだ。

 俺とリューラはダイラーの背後を追う。何故この状況でネルアリアとミザネアが魔法を発動させようとしたのかは分からないが、ダイラーがその隙を狙っているなら防ぐしかない。


 二人がダイラーの間合いに入った。詠唱はまだ続いている。

 くそ! 速い! 間に合わない!


 ダイラーのサーベルが振り上げられた瞬間、その足元から凄まじい速度で土壁が飛び出した。

 態勢を崩したダイラーの一撃が土壁の上部を削る。

 振り返ったダイラーが態勢を崩したまま、迫る俺とリューラにサーベルを振る。

 それを左右に別れて躱す。


「リューラ! 君は距離を取れ! 俺が決める」

「ラドウィンさん!」


 リューラが少しダイラーから離れ、俺は逆に懐に突っ込んでいった。


「ラドウィンッ!」


 ダイラーが雄叫びと共に放つ剣撃は凄まじい速度だ。威力も一撃で体を両断出来るぐらいあるだろう。

 

 しかしさっきからダイラーの攻撃は全て単発だ。その威力とスピードは確かに驚異的だが、連発してこない。いや、たぶん連発出来ないんだろう。

 ダイラーが何を飲んだのかは分からないが、強化魔法のように筋力や瞬発力を上げる類の物だというのは確実だ。

 だが、その強化にダイラーの頭がついていっていない。

 使いこなせずに振り回されている感じだ。だから大きな攻撃を単発で放つしか出来ないんだ。

 だから奴の隙は攻撃終わりにある。


 振り下ろされたサーベルを紙一重で躱す。突風を引き起こすような一撃が地面にめり込み、床が爆ぜる。

 横に回り込みながら水平斬り。俺のその一撃をダイラーは引き抜いたサーベルで防ぐ。しかし俺は弾かれた剣をそのまま上に振り上げ、電光の速度で振り下ろす。

 ダイラーの右上腕から血が噴き出る。


「ぐっ……」


 そして斬り上げでそのままダイラーの右脇腹を狙う。その一撃をダイラーは身を捩らせながらサーベルで受ける。

 反応されたか。だったら……


 受けられた剣を引いて、ダイラーの右足を狙う。だがその俺の剣撃の前に飛んできたのはダイラーの蹴りだった。

 剣を受けながらの無理な態勢から左回し蹴り。避けられないと判断した俺は右腕でその蹴りをガードする。


 ドガッ!


 完璧にガード出来たが、めちゃくちゃ重い蹴りだ。上半身が持っていかれそうになるのを踏ん張って耐える。

 蹴りを引いたダイラーがサーベルを振り下ろす。後ろに跳んでその一撃を躱した。

 ダイラーのサーベルが再び地面を斬りつけた。


 どれもこれも凄まじい威力だ。一撃でもまともに食らったらやられるな。蹴られた右腕も相当痛い。

 ダイラーの真っ赤な眼が俺を睨みつける。しかしすぐにその視線が俺の少し上を向いた。


「ダイラーよ。ここまでじゃ」


 ネルアリアがさっきミザネアが作った土壁の上に乗っていた。

 見下ろすネルアリアに向かってダイラーが静かに声を上げる。


「ふっ……俺に魔法は効かんぞ? ネルアリア」

「そうかもしれんの。じゃが、ラドウィンならお主を止められる」


 二人の視線が俺に向く。

 いやいや、確かに止めるつもりだけどそんなに期待値を上げられるのは困るよ。


「ラドウィン。ダイラーを止めよ」

「簡単に言うなよ……」

「ふっ……お前に俺がやれるか? ラドウィン」


 そんなもん分かりません。けど、やらなきゃやられるんで、やってやりますよ。


 ダイラーが鋭く踏み込み、突きを放つ。想定以上の間合いの遠さ。それを反応だけで躱し、胴への一撃を返す。

 ダイラーもそれを下がることで避けたが、切っ先は脇腹を掠める。やはり攻撃終わりに隙が出来る。

 このままカウンターを狙えば……とれる。


 ダイラーが下がり、サーベルを構え直す。

 この距離であれば、奴がどれだけ速く踏み込んできても躱せる。そして奴の攻撃後の隙を突けば盤石だろう。

 俺もダイラーに剣を向け、睨み合いになった。


 俺に向けられていた紅い両眼がふと俺から外れた。その視線の先にリューラが見えた。

 しまった!!


 ダイラーが体の向きを変え、リューラに向かって駆けた。

 慌てたリューラが向かって来るダイラーにサーベルを振る。しかしダイラーはその一撃をかいくぐり、左手でリューラの喉元を掴んだ。


「がはっ!」

「リューラ!!」


 首を掴んだまま、ダイラーがリューラの背後に回る。


「動くな! 動けばこの女の首をへし折る」

「リューラ!」


 捕まったリューラは何とかその手を剥がそうと手足をバタつかせて抵抗しているが、ダイラーは全く動じない。


 ダイラーの凶悪な紅い眼がネルアリアに向く。


「ネルアリア。この女を殺されたくなかったら、ラドウィンに攻撃魔法を撃て」


 は? 何だと!? まともに勝負したら勝てないと悟ったのか?

 ネルアリアがそんな提案に乗るわけ……。


「すまんの、ラドウィン」


 申し訳なさそうな顔でネルアリアが俺の方に手を向ける。

 

 嘘でしょ? 普通もうちょっと迷わない? 何でそんな即決?


 ネルアリアは小さく詠唱を始めた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

これからもよろしくお願いいたします!

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