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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第七章 盗賊団を追い詰めろ

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58.紅く光る両眼

 仁王立ちしたダイラー隊長の息は荒く、その両眼は紅く爛々と輝いている。

 何かの魔法か? 何にしても正常な状態じゃない。

 あのミザネアの土の牢と頭目の男を一撃で切り裂いた、さっきの強力な一撃を思い出す。

 胸を切り裂かれた男は口から血の泡を吹きながらぶっ倒れている。


 ダイラー隊長の真っ赤な両眼がこちらを向いた。


「ネルアリア……。お前はここで消す」

「ダイラー……お主……何を飲んだのじゃ?」

「奇跡の力だ……」


 奇跡の力……?

 ダイラーがこっちに体を向けた。俺の背後でリューラが叫ぶ。


「隊長! やめてください!」


 リューラのその声を無視してダイラー隊長のサーベルがゆっくりと動く。

 来る……しかもさっきと同じくらいの攻撃が。


 瞬時に最大効果の強化魔法をかける。

 ダイラー隊長が俺に向かってサーベルを振り下ろした。


 ガキィィィンッ!!


 俺の剣とダイラー隊長のサーベルが衝突する。

 なんつー重さだ。剣も強化してなかったら剣ごと斬られてる所だ。


「隊長っ!」

「ダイラー!」

「ラドさんっ!」


 俺とダイラー隊長が鍔迫り合いの形になり、周りで成り行きを見守っていた憲兵達が武器を抜く。

 鍔迫り合いをするダイラー隊長の口元が歪んだ。


「ラドウィン……そこをどけ。そうすればお前は見逃してやる」

「…………やだね」

「そうか……ならばここで全員死ね」


 ダイラー隊長がサーベルで俺の体ごと押し返す。凄まじい力で押された俺は三歩ほど下がった。

 すると振り返ったダイラー隊長が周りの憲兵達に向かって跳んだ。


「避けろ――!!」


 ブゥン!!


 ダイラー隊長の剣撃はひと振りで数人の憲兵を斬り裂いた。そしてそのまま捕縛されていた盗賊達を斬る。


「隊長!! やめてください!」

「逃げろ! 全員逃げるんだ!」


 俺とリューラが同時に叫んだ。ダイラー隊長はここにいる全員を殺すつもりだ。

 戸惑いながら武器を構える憲兵、捕縛された無抵抗の盗賊が、次々と圧倒的な力でサーベルを振るダイラー隊長の餌食になる。


 拘束された盗賊たちが悲鳴を上げながら立ち上がって倉庫の出口に向かって走り出す。憲兵達は武器を構えているが、異様な雰囲気を出すダイラー隊長に気圧されて後退っていた。


 突然ダイラー隊長の目の前に土の壁が迫り上がった。ミザネアの土魔法だ。


「憲兵ども! 今のうちに盗賊を連れて逃げるんじゃ!」


 ネルアリアの声に残った憲兵達が反応し、捕縛していた盗賊たちを連れて倉庫の扉に向かう。


「させるか――!」


 ダイラー隊長が土壁を蹴り破り、逃げる憲兵達に迫る。


「ラドウィン!」

「はいよっ!」


 強化された瞬発力と筋力を最大限に生かして、ダイラー隊長に向かって跳んだ。


「ダイラー!」


 俺の叫びにダイラーが反応する。俺の袈裟斬りを受け止めたダイラーが数歩下がった。


「ラドウィン……やはり邪魔するか」

「ああ。悪いがね」


 再びダイラー隊長と鍔迫り合いの形になったが、今度は押される前に俺から後ろに下がった。下がった瞬間にダイラー隊長の体に無属性攻撃魔法の光弾と、魔法の矢が次々と突き刺さる。

 ミザネアとネルアリアの攻撃魔法だ。二つの攻撃魔法を同時に喰らったダイラー隊長の動きが一瞬止まる。

 さすがにこれを喰らって無傷ってわけにはいかねえだろ。

 

 だが次の瞬間、ダイラー隊長の体に突き刺さった魔法の光がチリのように消える。

 何だ今の!? しかもほぼ無傷かよ!

 戸惑う俺の後ろからネルアリアの声が聞こえる。


「対魔法障壁じゃ! ラドウィン!」


 対魔法障壁!? つまり魔法は効かねえってこと? ダイラーはそんな魔法唱えた様子なかったぞ!?

 ニヤリと嗤ったダイラー隊長が振り返り、再び倉庫の出口に向かう憲兵達を追いかける。

 くそっ! あくまでもここにいる全員を殺る気かよ!


 ダイラー隊長の背中を追いかける。が、ダイラー隊長の前に憲兵の一人が立ちはだかった。


「隊長! 止まってください!」

「リューラ!!」


 ダイラー隊長がリューラに斬りかかる。リューラはその一撃を受け流すように剣で弾いた。

 上手い! ダイラー隊長の重い一撃はまともに受けると吹っ飛ばされる。俺とダイラー隊長の戦闘を見て、リューラは分かっていたんだろう。

 

 更にダイラー隊長がリューラへサーベルを振り下ろす。リューラはその剣撃の力の方向を変えるように巧みに剣で弾いていく。卓越した動体視力と反射神経が成せる技だ。

 足を止めたダイラー隊長に追いついた俺はダイラー隊長の背後から斬りかかる。卑怯だとか関係ない。

 今はコイツ(ダイラー隊長)を止める事を最優先させる!


 しかし俺の剣撃は空を斬った。ダイラー隊長は上へ飛び、俺の一撃を躱した。

 だが結果的に逃げる憲兵達とダイラー隊長の間に、俺とリューラが立ちはだかる配置になった。

 俺とリューラの前に、両眼を真っ赤に輝かせたダイラー隊長が立ちつくす。

 ダイラー隊長の不気味な紅い視線が俺とリューラの間を往復する。


「ダイラー隊長……もうやめてください」

「そうだ。もう諦めろ」


 俺達を見下ろすダイラー隊長の口元が歪む。


「諦める?」

「そうじゃ。お主にもう勝ち目はない」


 ダイラー隊長の背後からネルアリアとミザネアが近付いてくる。

 四人に囲まれたダイラー。

 何を使って体を強化させたか分からないが、この四人に囲まれて無事に逃げおおせるはずはない。

 だがダイラー隊長の表情に焦りや、諦めの感情は見られない。


「ダイラーよ。お主がさっき奇跡の力と呼んだのは魔石じゃな」


 魔石? 身体強化の効果がある魔石? そんな物があるのか?

 ダイラー隊長がゆっくり背後に近付くネルアリアの方に振り返る。

 ネルアリアが目を細めて、ダイラー隊長のその不気味な紅い視線を受け止めた。

 低い声でダイラー隊長が答える。


「お前に話すことはない」

「そうか……なら後で無理やり聞かせてもらうぞ」


 ネルアリアがチラリと俺に視線を向けた後、魔法の詠唱を始める。隣のミザネアも詠唱を始めた。

 その動きを見たダイラー隊長がネルアリアとミザネアに向かって地面を蹴った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

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作者のモチベが爆上がりする事間違いなしです。

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