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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第六章 おじさん冒険者、目をつけられる

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50/90

50.ギルド長の謝罪

区切りの50話です!

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます!

 俺が冒険者ギルドに姿を見せると、受付嬢が慌ててカウンターの裏へと駆けて行った。たぶんセレス女史を呼びに行ったんだろう。

 すぐに別の職員に声を掛けられ、俺はギルドのセレス女史の部屋へ案内された。


 ギルド長室。重々しい扉を案内してくれた女性職員がノックする。


「ギルド長。ラドウィンさんをお連れしました」


 中からセレス女史の応える声が聞こえ、扉を開けた職員に中へ入るように促される。

 中へ入ると、温かみのある木の香りとほのかな花の香り。それほど大きな部屋ではないが、中央に立派なテーブルとソファが目に入る。

 その向こうに直立不動で佇むセレス女史の姿。


「ラドウィンさん、どうぞお掛けになってください」

「どうも……」


 おずおずと部屋へ入っていき、ソファに腰掛ける。

 しばらくすると、淹れたての紅茶を手にセレス女史が向かい側へと座った。


「どうぞ。ラドウィンさん」

「どうも……。えっと……」


 何か色々と聞かれるとは思っていたが……。

 するとセレス女史が座ったまま深々と頭を下げる。


「この度は本当に申し訳ございませんでした」

「いやいや……何でセレスさんが謝るんですか!?」

「私が判断を誤った為に、ラドウィンさんが冒険者から襲撃を受けるという事になってしまい……」

「判断って……何の、ですか?」

「あなたを襲ったグリハン=バングリム……。もっと早くに冒険者資格を取り消していれば……」

「いや、それは関係ないでしょう。冒険者資格を取り消されたぐらい、何とも思わないでしょ」

「まあ……そうかもしれませんが……」

「今回の件は俺の慢心です。俺のミスですから」


 そう言うと、セレス女史は下げていた頭を上げ、俺に申し訳なさそうな視線を向けた。


 グリハンに襲われたのは俺のミスだ。

 それが治癒院で一人でいる時にたどり着いた俺の答えだ。

 

 一人で大概の事は出来る……いざとなれば強化魔法で何とか切り抜けられる……。そんな俺の慢心があんな計画性も連携もない襲撃を許してしまった。そして怪我を負ってしまった。

 もっと自分が慎重に行動していれば……襲撃は回避出来たかもしれない。


 襲撃された時もそうだ。いつでも逃げられるとタカをくくっていた。

 自分の命が危険に晒されるまで、俺は相手を無力化させる事を優先していた。

 

 何故、すぐに相手を殺そうとしなかったのか?

 たぶん勝てる相手だと油断していたからだ。腹を決めるのが遅かった。だから俺は重症を負い、グリハンにも逃げられたんだ。全ては俺の慢心……油断が生んだことだ。


 そんな思考に沈む俺を、セレス女史の声が引き戻す。


「憲兵隊から伺いました。貴方を襲ったのはグリハン=バングリム。そして仲間のメルディア=カーライオと、ゼオラ=ズオで間違いないでしょう」


 手甲鉤女がメルディアで、魔術師がゼオラというらしい。二人ともグリハンのパーティーメンバーで俺が憲兵隊に話した特徴とも一致するらしい。

 三人は色々な町を転々としている冒険者だが、ほとんどの町で何かしらの問題を起こしているそうだ。

 その為、ギルドネットワークでは三人とも要注意人物とされ、グリハンとゼオラに至っては冒険者ランク降格の処分という過去もあるらしい。


 そんな問題人物であったからこそ、事前に対処出来なかった事を、セレス女史は悔やんでいるのだろう。

 その説明をしながら、セレス女史は時々苦々しい表情を見せていた。


 セレス女史が真剣な表情に戻る。

 

「冒険者ギルドとしては憲兵隊に全面的に協力して、一日も早くグリハン達を捕らえる事を約束します」

「そうですね。ありがとうございます」


 ん? そういえば三人とも逃げられたんだろうか? 俺が遺跡群から立ち去る時にはゼオラという魔術師はまだ気を失っていたはずだが……。


「セレスさん。ゼオラは捕まったんですか?」

「いえ、ゼオラは遺跡群の外れで死んでいるのが見つかりました。なので、姿を消しているのはグリハンとメルディアの二人だけです」

「……死んだ? それは俺が放置したから……」

「いいえ。ゼオラはメルディアに殺されたそうです」

「何で分かるんですか?」

「ゼオラの死因は首と胸に受けた手甲鉤による刺殺と断定されました。仲間のメルディアに殺された……というのが憲兵隊の考えです」


 ゼオラはグリハン達に見捨てられたということか……。

 更にセレス女史が続ける。


「ラドウィンさんはゼオラと交戦した際、彼の両腕を切断したらしいですね」

「そうです」

「ゼオラの両腕はその死体の傍らで発見されたということらしいので、ゼオラは気がついた後、自分の腕を抱えてグリハンとの合流場所である遺跡群の外れに向かい、そこで殺されたというのが妥当でしょうね」

「そう……ですか」

「ラドウィンさんが気に病むことではないと思います」


 自分で手を下したわけじゃないから確かにそうかもしれないが、腕を失った事でグリハンに見限られたか。もしかしたら腕は繋がったかもしれないが、グリハンがそれを許さなかったか。

 どちらにしても胸のすくような話ではないな。


 セレス女史は静かに続ける。


「この一件で、グリハンにあった噂の疑いが一層強くなりました。奴にはラドウィンさんの件も含めて追及しなければなりません」


 グリハンと揉めた冒険者が直後に事故で死んだというヤツか。それは奴の口から聞いている。その事は既にリューラ達憲兵隊にも話している。ここから先、奴を捕らえて断ずるのは憲兵隊の仕事だ。


 ひと通りの話を終えて、セレス女史が俺に尋ねてくる。


「ところでラドウィンさん。もうお体は大丈夫なのですか?」

「治癒師には一週間はクエストを受けないよう釘を刺されましたけど、怪我はもう問題ないですね」

「そうでしたか。今回の件には冒険者ギルドにも非があると思っていますので、治療にかかった費用はお支払いをしようと……」

「本当に!?」

「え、ええ……。でも意外と早く退院されたので、良かったなと……」


 なんてこった! そんな事は早く言ってよ、ギルド長! 俺、治療費がめちゃくちゃ高くなると思って無理して早く退院しちゃったじゃん! だったらまた入院して……ってそんな事はムリか。

 しまった! お金の事だったので思わず身を乗り出してしまった。

 セレス女史が実に居心地の悪そうな顔をしている。

 今さらだが、ここはちょっとでも大人の余裕を見せねば……。


「ゴ、ゴホン。大丈夫です。さっきも言ったように、今回の件は俺の慢心が生んだミスですから……。治療費は自分で払いますよ」


 仕方ない。セレス女史からのせっかくの申し出だが少しでも治療費をケチろうとしたのは自分なのだ。それぐらいは払わないとな。


「ラドウィンさんがそう仰るのでしたら……分かりました。ではまた機会を改めて別の形で謝罪することにします」

「別の形?」

「ええ。お体が全快してからでもいいので」

「何ですか?」

「一度ゆっくりお酒でも飲みに行きませんか?」

「お酒? 俺と?」

「はい」

「セレス……さんと?」

「……はい。駄目ですか?」

「いや、駄目ではないですけど……いいの? ギルド長が冒険者とお酒なんか飲みに行って?」

「ラドウィンさんなら問題ないでしょう」


 どういう事?


「私とラドウィンさんは立場は違いますけど、長く共に戦った戦友と思っていますよ?」

「まあ……そうかもしれませんね」

「私とお酒に行くのはイヤですか?」


 イヤ、と言うか、今誘われている事実に驚いていますよ。確かに俺が王都にいた期間は抜けているけど、十五年以上前からお互いを知っている人間なんてほとんどいないしね。危険な仕事だから、戦友という認識も分からなくもない。けど……

 美人ではあるが、普段から男を寄せ付けない凄いオーラの持ち主。失礼だけど、俺の方はセレス女史をそんなふうに見た事ないんだよね。

 でも無下に断るのも失礼だと思うので……。


「まあ……じゃあイヤじゃないので、行きますか?」

「仕方無しって感じですね」

「そんな事ないですよ。セレスさんがこんなおじさんを飲みに誘うなんて夢にも思わなかったものですから」

「まあ、私もそれなりにもういい歳ですから……」

「そう……か」

「そこは否定して欲しかったですけどね!」


 やっぱり何かこの人(セレス女史)の扱い、難しいわ!

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!

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