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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第五章 おじさん冒険者と二人の魔術師

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42/81

42.打ち上げってことで

この話でこの章は終わりです。

ちょっと短い章でしたが、次の章もまたお願いします!

 痺れを切らしたマッドハイエナどもの突進。二十匹のハイエナが列を作って一直線に俺達に向かってくる。


 作戦通りだ。ミザネアが次の土魔法を発動させる。

 マッドハイエナ達の左右に、今度は土壁がせり上がる。その土壁は俺達の目の前まで続く。

 俺達とマッドハイエナ達が土の回廊で一直線に結ばれた。土壁に阻まれて広がることが出来ないマッドハイエナは俺達に一直線に向かってくるしかない。


 俺達の作戦は、ミザネアの土魔法でマッドハイエナを出来るだけ一か所に集約させて、ツァミの氷魔法で一網打尽にするというものだ。

 ミザネアは最初に土杭で左右からプレッシャーをかけて、群れを中央に集めた。

 そして焦って走り出したマッドハイエナ達を今度は土壁で挟み込み、散らばらせないようにする。奴らがこの土壁から出るには下がるか、前に進んで俺達を倒すしかない。

 たった三人が相手だ。二十匹のマッドハイエナが下がるという選択肢を選ぶ事はないだろう。


 そしてその思惑通り、マッドハイエナ達は俺達に向かって突進してきた。

 そしてここからこの作戦の総仕上げ。

 俺達の周りの空気の温度が下がる。ツァミが詠唱を始め、ロッドを前に突き出した。


「ツァミ! 撃て!」

氷嵐(アイスストーム)!」


 向かってくるマッドハイエナに、極寒の吹雪のような魔法が降り注ぐ。先頭付近の数匹が走りながら凍りつき、崩れ落ちていく。凍りつくのを逃れたマッドハイエナには氷の粒が突き刺さり、鮮血が上がる。


「ツァミ! まだまだよ! 連発で撃って!」

「こくり。氷嵐(アイスストーム)!」


 すぐにツァミが追撃の氷嵐を撃ち込む。

 土壁に囲まれたこの場所の温度が更に下がる。俺はツァミの魔法をすり抜けて来ているハイエナがいないか、注意を向ける。

 この高さの土壁だ。簡単には乗り越えられない。ハイエナどもを挟み込む、ミザネアの土魔法が作り出した土壁は三メートルを越えていた。


 ツァミが三発目の氷嵐を放った。俺達とマッドハイエナの先頭との距離は十メートルほど。しかしその突進は止められ、もう既に群れの半分以上は地面に転がっている。

 上手くツァミの氷嵐の被弾を避けた二匹が俺達に迫ってきた。

 ツァミは魔法の撃ち終わりで、完全に無防備だ。


「下がれ! ツァミ」

「こっち!」


 ミザネアがツァミの腕を掴んで、数歩後退した。入れ替わるように俺が前に出て、迫る二匹に剣撃を放つ。二匹のマッドハイエナの頭が飛んだ。

 俺はそのまま横に転がって、再び剣を構える。マッドハイエナの残りは数匹。その数匹がまだ俺達に迫る。

 俺の体の横を、衝撃波と冷気が通り抜けていった。

 ミザネアの無属性攻撃魔法とツァミの氷嵐。二人の攻撃魔法が残りのマッドハイエナどもを一掃した。

 発動した魔法が収まり、草原に出来た土壁に挟まれた回廊にはマッドハイエナの死骸が積み重なった。


「討ち漏らしがないか、確認してくる」


 二人にそう言って、マッドハイエナの死骸を確認していく。

 

 二人の魔法で完全に倒せたみたいだ。逃げた奴もいなさそうだし。

 ひと通り確認を終えると、二人に向かって親指を立てた。


「お疲れ! 討伐完了だ」

「本当? お疲れ、ラドさん」

「やた!」


 二人の嬉しそうな笑顔が弾けた。

 討伐証明を剥ぎ取った俺達は村への帰路についた。


 ◇◇


 森を抜けて、村に戻ると村長が一番に迎えに来てくれた。

 今回のマッドハイエナによる被害は町レベルで見れば、それほど大きなものじゃない。だが人口百人にも満たないこの村にとっては、生活の糧である家畜を奪われるのはまさしく死活問題だったのだろう。

 討伐証明を見せられた村長は喜びの声を上げて、すぐに村中に知らせに走っていった。


 間もなく十数人の村人が集まり、口々に俺達に感謝の言葉をかけてくれた。中には泣いて喜ぶ老婆の姿もあった。

 そして俺達が帰る時にはミザネアとツァミは村の老人達から一杯、食べ物やらお菓子を貰って鞄がパンパンになっていた。


 ◇◇


 イオアトスに戻り、すぐにギルドへクエスト完了の報告をしに行く。三人で報酬を受け取っていると、背後から声をかけられる。


「ツァミちゃん!」

「あ、エリハナ」

「クエスト行ってたの?」

「こくり。おじたんとミザちゃんと一緒」

「え? ミ、ミザちゃん?」


 戸惑うエリハナにミザネアがニッコリと微笑みかける。


「ミザネアよ。初めまして」

「あ、えと、エリハナです。初めまして」

「ごめんね、エリハナ。ツァミを借りてクエストを受けてたんだ」

「あ、いえ。私達が休みの間、前にツァミがラドウィンさんとクエスト受けるって言ってましたし」


 パーティーメンバーにも言ってたのね。


「フロークの方はどうだい? まだかかりそう?」

「いえ、もう大丈夫ですよ。あと二、三日ぐらいでクエストにも行けると思います」

「そう。それは良かった」


 これでツァミから追われる日々から解放されるな。でもそれなりに稼ぎにはなったし、それはツァミに対して失礼か。


「で、今日は復帰クエストをどれにするか下見に来たんです。あとでツァミちゃんも一緒に見る?」

「こくり。エリハナ、聞いて。ツァミ、新しい魔法覚えた」

「ホント? すごいじゃん! 後でどんなのか教えてよ」

「こくり」


 若い娘のキャピキャピした会話をほんわかとした気持ちで見つめるおじさん。んー、歳を感じる瞬間だね。


「おじたん、行ってくる」

「ありがとうございました。ラドウィンさん、ミザネアさん」

「ああ、ミッグスとフロークにもよろしく」


 ツァミとエリハナは俺とミザネアに頭を下げて、クエストボードの方へと行ってしまった。

 さて……俺は帰るとしますか。


「ラドさん」

「ん? 何だい?」

「お酒が美味しいって薦められたお店があるんだけど……」

「へー、いいね」

「場所も聞いて、気になってるんだけど……チラっ」


 あからさま過ぎる……。何でこんなおじさんとお酒を飲みたいと思うんだろうか?


「ちょっと一人で入るのは勇気がいるんだよね……チラっ」


 話し終わりに分かりやすく俺の顔を覗き込むミザネア。まあ彼女の魔法のお陰で今日はだいぶ楽出来たしな。


「そうだね。じゃあ、一緒に行ってみるかい?」

「いいの?」

「だって一人じゃ入りにくいんだろ? 俺もその美味しいお酒って気になるし。大人の俺達はこれからクエストの打ち上げってことでどうだい?」

「そうだよね! じゃあ、行きましょう! 行きましょう!」


 笑顔を輝かせたミザネアに体を押されるようにして、俺とミザネアはギルドを出てすっかり暗くなった町へと歩き出した。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

次話から新しい章になります。

珍しくおじさんがピンチを迎えるお話になりますので、ぜひご一読くださいm(_ _)m

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