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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第五章 おじさん冒険者と二人の魔術師

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41.マッドハイエナ

 森の獣道を進むこと数時間。俺達は草原地帯へと出てきた。なだらかな丘陵が地平線まで続く草原。所々草のない所もあるが、膝ほどの高さの草が視界全体に広がっている。

 その草原地帯にポツポツとある傘のような形をした木。その木が、遮蔽物のない草原地帯に数少ない日陰を作っていた。他には大きな岩がわずかに見えるだけだ。


「マッドハイエナは群れを作るけど、巣は作らないそうだから、もし群れが休んでいるならああいう木の下とかだと思う」

「分かったわ」

「こくり」


 俺の言葉に二人が応える。

 相手は数で攻めてくるマッドハイエナ。

 障害物の少ないこの草原地帯ではハイエナどもに囲まれる事は絶対に避けなければならない。こちらは近接戦闘は俺しか出来ない。俺はともかく、魔術師の二人は複数のマッドハイエナに一気に襲われたらあっという間に殺されてしまうだろう。

 だけど二人は有能な魔術師だ。 

 二人の攻撃魔法を上手く使えば効率良くマッドハイエナどもを討伐出来るはずだ。

 

 頭の中で作戦を考えながら草原地帯を進み、マッドハイエナの群れを探す。

 二人の得意魔法を活かした作戦となると……あっ、この方法だったら上手くいけるかも。とりあえず二人に意見を聞いてみないとな。実行するのは二人だし、無理ってなるかもしれんし。


「ミザネア、ツァミ。ちょっと作戦を思いついたんだけど、いいかい?」

「ええ。どんな作戦?」


 俺が思いついた作戦の説明を、ミザネアは冷静に、ツァミは目をキラキラさせて食い入るように聞き入る。

 ミザネアの得意魔法は土魔法と無属性攻撃魔法。そしてツァミは氷魔法。しかもツァミはさっき覚えたばかりの範囲攻撃魔法を試したがっている。

 この二人ならではの作戦だ。

 作戦を聞き終えた二人は、


「こくり。ツァミ、やる。一人で全部仕留める」

「それなら効率良くいけそうね。私の土魔法次第だけど」

「逃した奴は俺が対処するよ」

「あんまり離れないでね、ラドさん」

「ああ。深追いはしないよ」


 魔法によるマッドハイエナ討伐作戦も決まり、俺達は草原地帯へと足を踏み入れて行った。


 ◇◇


 大きな丘陵の上に立ち、見下ろした草原には一本の大きな木。高さは二十メートルぐらいか。大きな傘のようなその木が作る影の中で蠢く十数個の黒い物体。

 どうやらあの木の木陰に目的の群れはいるみたいだ。


「ラドさん。あれ」

「ああ。間違いない。マッドハイエナの群れだ」

「あんな所からあの村までわざわざ来ていたのね」

「ああ。ここまでほとんど他の動物に会わなかったから、獲物がいなかったんだろうね。それか、奴らが食い尽くしたか」

「どちらにしてもここで終わりね」

「ああ、そうだね。ミザネア、位置的にどの辺りがいい?」

「うーん、ここでも悪くないけどちょっと見通しが良過ぎるかな。あっちの丘の方がいいかも」

「よし。じゃあ、回り込んであの丘の上まで移動しよう」


 俺達は身を屈め、マッドハイエナに見つからないよう離れた丘へ移動した。

 草むらに身を潜めながらマッドハイエナの群れの位置を確認する。奴らはさっきの木の下からは移動していない。俺達の接近にも気付いていないようだ。

 さっきの丘の上より近付いたとはいえ、まだ二人の魔法の射程距離よりも遠い。奴らをおびき寄せる必要があるな。

 俺の出番だ。


「ミザネア、ツァミ。俺が石を投げて奴らをおびき寄せるぞ。準備はいいか?」

「ええ。いつでもいいわよ」

「こくり。だいじょぶ」


 身体強化魔法をかけて、足元の石を拾う。普通の状態だったら全く届かない距離だが、強化魔法をかければ難なく届く。

 その場で振りかぶって、マッドハイエナの群れに向かって全力でその石を投げつけた。


 ドスッ!


 マッドハイエナ達の真ん中に投げた石が落ちる。一匹も当たらなかったのはちょっと残念だけど、奴らが俺達の姿に気付いた。

 寝そべって休んでいた奴らも起き上がり、二十匹ほどのマッドハイエナの視線が一斉に俺達に向けられる。

 俺達を獲物と認識したようだ。二十匹のマッドハイエナが様子を窺いながら、こちらに向かって歩き出した。


 さて……ここからはミザネアの出番だ。

 普通ならマッドハイエナは俺達を逃さないように周りをとり囲みながら距離を詰めてくるだろう。現にマッドハイエナの群れから数匹が離れて、俺達を挟み込むように左右へ広がって歩みを進めてきている。


「ミザネア。頼む」

「了解。ツァミ、魔法の準備ね」

「こくり」


 横に広がりながらマッドハイエナの群れがジリジリと俺達に迫ってくる。その距離は約三十メートル。

 ミザネアが詠唱を始める。俺も戦闘に備えて強化魔法の効果を上げる。


 ゴウッという音と共に、広がるマッドハイエナの群れの左右の地面から鋭く尖った土杭が飛び出した。その土杭に反応した両端のマッドハイエナが跳びはねて、群れの中央に寄った形になる。更に続けて土杭が何本も地面から飛び出てくる。

 

 土杭はマッドハイエナには当たっていないが、群れはその土杭を避けながら視線を右往左往させている。

 ミザネアの土魔法が生み出す土杭は、見事にマッドハイエナどもを中央へと寄せ集めていく。

 

 一匹のマッドハイエナが吠えた。その咆哮を皮切りに、全てのマッドハイエナが俺達に向かって走り出した。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

もし良ければ、ブックマークや☆評価の方もよろしくお願いします!


ちなみにラドウィンは強化魔法発動時だと、遠投は二百メートルを超えます

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