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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第四章 クリスタルランクにクエストを頼まれる

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32.人外の片鱗

 ハルバリの先導で根城近くまで移動した俺達はそこで別々に別れていく。

 ディケイド、ボルゾアと順に配置につき、ハルバリが立ち止まった。ハルバリがゼスチャーで根城の背後への道順を示す。

 俺とミザネアはそれに頷き、森の中を進む。木々の間からリパードベアの根城が見えた。

 高さ十メートルはあろうかという、土や木を集めた、シルエットは半球体の塚。

 天然の物じゃねえな。奴らが材料をかき集めて作った城だな。

 その根城を横目に俺とミザネアがディケイド達がいる対角線側にたどり着いた。

 隙間から覗き込むと、リパードベアが二匹見える。見張りは根城を囲むように四匹いるということだな。

 根城に視線を向けるとぽっかりと開いた出入り口が見える。幅、高さ共に二メートルといったところ。身を屈めて出入りするんだろう。

 視線をミザネアに向ける。


「あの穴だが、魔法は届くか?」

「ええ。ここならギリギリ届くわ」

「よし。じゃあ派手に始めてくれ」

「ええ。もちろん」


 静かに詠唱を始めるミザネア。俺も身を低くしていつでも飛び出せるように構える。

 すくっと立ち上がったミザネアが両手を前に突き出す。その手から生まれた薄い光の球が放たれた。高速で放たれた球は根城の出入り口の周りに当たる。

 土と木で出来た根城の穴がその衝撃で塞がっていく。

 よし! 上手くいった。

 ここから見える二匹のリパードベアがその衝撃音に気付き、穴の方に駆け出した。

 俺も強化魔法をかけて根城に向かう。


「ミザネア! 援護頼む! あまり前に出過ぎるなよ」

「ええ! 任せて!」


 左から来る奴の方が近い。じゃあ、左から倒す。右の奴は……と、視線を向けると右に見えるリパードベアの背後から、ハルバリが大剣で斬りかかった。

 あれはハルバリに任せて大丈夫だな。じゃあ、さっさと左をやるか。


 リパードベアが猛スピードで近付く俺に気付いた。立ち上がり、前脚を上げて俺を威嚇する。十本の長く鋭い爪。スピードを緩めずリパードベアに向かう。間合いに入れば俺に向かって振り下ろしてくるだろう。

 咆哮を上げて、リパードベアが前脚を振り下ろす。その動きを見切って急転回でその攻撃を躱す。

 この魔獣にとって今の時間帯は真夜中と同じ。動きが鈍い。


 しゅっ!


 振り抜いた剣がリパードベアの前脚の一本を断ち切った。

 斬られたリパードベアが悲鳴だか咆哮だか分からない声を上げた。

 地面を蹴って首めがけてもう一撃。

 首から鮮血を噴き上げてリパードベアの巨体が崩れ落ちた。


 視線をハルバリの方に向けると、彼女も一匹仕留めたようで、俺の方を見てニヤリと笑った。そして根城の反対側へと走り出した。


「おっちゃん! 向こう側に行くで!」

「分かった! ミザネア! 来れるか?」


 ミザネアの方に振り返ると、既に彼女はこっちに向かって走り出していた。

 俺に追いつくと、すぐに二人で根城の反対側に向かう。その時にミザネアが崩した穴の方を見たが、中からリパードベアが出てくる気配はなかった。

 作戦通りだ。あとはもう一つの穴から出てくるリパードベアを順番に倒していくだけだ。



 根城の反対側に着くと、既に三匹のベアの死骸が横たわっていた。返り血を浴びているディケイドが、根城に唯一残された穴に向かっていた。

 走っている俺はそのままボルゾアが相手をしているリパードベアの背後から剣を振り下ろす。


「おう! ラド! 早かったの」

「ああ。大丈夫か? ボルゾア」

「おう! まだ大丈夫じゃ!」


 根城の穴に振り返る。そこで穴から出てくるリパードベアどもを相手どり、暴れまくるクリスタルランク冒険者の二人。

 ディケイドは剣槍を振り回し、長い間合いを生かしてリパードベアをなぎ倒す。

 ハルバリは素早い動きで死角へ回り込み、大剣でリパードベアを斬り刻んでいく。

 それを見ながらミザネアが呟く。


「もう私達、出番ないかもね」

「そうだな」


 それぐらい二人の戦いぶりは凄まじかった。圧倒的なパワーとスピード。そしてそれを維持するスタミナ。

 クリスタルランク冒険者は人外の強さとよく言うが、二人の戦いはまさにそれだった。

 根城の周りにはあっという間にリパードベアの死骸がばら撒かれていく。


 バキィ!


 突然、根城から大きな音が響く。根城に別の穴が空き、そこから一匹のリパードベアがのっそりと姿を現す。

 

 ボスだ。一目でこの根城の主と分かる。他のリパードベアより圧倒的にデカい。

 そのボスが、仲間のリパードベアを蹂躙しているディケイドとハルバリに向かって大きな咆哮を上げる。

 まだ二人は他の奴を相手にしている。そこに乱入されるのはマズい。


「ボルゾア! ミザネア! 俺達であのデカいのをやるぞ」

「ええ!」

「分かった!」


 先行して俺が駆け出す。ボスが俺の姿に気付き、その凶悪な両眼で睨みつける。若い冒険者なら縮み上がるような睨みだ。


「ラドさん! 撃つよ!」


 背後からミザネアの声。俺は走りながら右に体を寄せる。体を追い越すようにミザネアの無属性攻撃魔法がボスの巨躯に食い込む。さほど効いている感じはない。

 ボスの間合いに入った俺はボスの爪の攻撃を躱しながら、剣撃を入れていく。

 ボルゾアが大盾で奴の爪を受け、バトルアックスで斬り返す。


 ボルゾアの動きが……やっぱり鈍い。いくら頑丈でも、まともに喰らったら……。

 そう考えているとボルゾアが攻撃を受けた拍子に体勢を崩し、片膝を地面につく。

 マズい!

 そこへボスが前脚を振り下ろす。


 ガギィッ!


 地面からせり上がった土の壁がボスのその一撃を防いだ。ミザネアの土魔法だ。ミザネアがボルゾアに向かって叫ぶ。


「ボルゾア! 下がって!」


 ボルゾアが転がるようにボスから距離を取る。ボスの注意が、下がるボルゾアに向かう。

 そのチャンスを俺は逃さない。大きく跳んでボスの首を狙ったが、すんでの所で前脚で防がれた。斬ったその前脚がだらりと下がる。

 着地した俺にボスが向き直る。

 見下ろしてくるボスのリパードベア。

 

 その瞬間、俺の視界の外から高速で飛んできた何かが、ボスの腹に深く突き刺さった。後ろによろけるボス。突き刺さっているのはディケイドの剣槍。

 ボスの足元めがけて俺が跳んだ。股下をくぐり抜けながらボスの後ろ脚を斬る。

 着地と同時に振り返ると、ハルバリがこっちに向かって猛スピードで駆けていた。

 ハルバリが地面を蹴った。そして空中で大きく大剣を振り、そのままボスの頭上を飛び越えて俺の側で着地した。


 ボスの首から噴水のように噴き出す鮮血。ハルバリの一撃はボスの首を捉えていた。崩れ落ちるリパードベアのボス。


 決まったな。ボスがやられれば他のベアどもは散り散りになるだろう。

 ハルバリがびゅんっと大剣を振り、刀身についた血を振り払う。


「おっちゃん、大丈夫か?」

「ああ。全く問題ない」


 生き生きとした笑顔を見せるハルバリ。

 悠然と歩いてきたディケイドがボスの胸に突き刺さった剣槍を引き抜き、俺達を見回す。


「みんな無事か?」

「ええ。大丈夫よ」

「ディケイド。あっちは終わったんかの?」


 フッと笑ったディケイドが親指で根城の穴の方を指差す。そこにはディケイドとハルバリが仕留めて、動かなくなったリパードベアの死骸が十数匹が転がっていた。

 あの短時間でこの数……マジかよ。


「根城の中にまだいるかもしれんが、ボスがこれじゃ、もう終わりだろ」


 ディケイドが足元のボスの頭を蹴りながら答える。

 やっぱクリスタルランク……エグいわ。ハンパない強さだね。


 ハルバリがさっきボスが開けた根城の穴に向かって歩き出す。


「ほな、ウチが中調べてくるわ。後処理は頼むで」

「分かった。終わったら根城に火をつけるからな」


 了解と、手を上げてハルバリは穴の中へと入って行った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!

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