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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第四章 クリスタルランクにクエストを頼まれる

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31.熊の根城

 翌朝、日の出と共に俺達は昨日と同じ森へと入って行った。隊列は昨日と同じ。

 先頭を行くハルバリが軽やかな足取りで森の奥へと進んで行く。

 最後尾で俺とミザネアが並んでついて行く。俺の数メートル前にはボルゾアがいる。しっかりとした足取りで、隣に並ぶディケイドと周りを警戒しながらハルバリの後を続いていく。

 ディケイドが二メートル近い身長で、それより四十センチほど低い身長のボルゾアは小さく見えるが、その横幅と手足の太さは負けていない。

 超重量の装備を全く苦にしない鍛え上げられた体は森の中の草木を掻き分けて歩く。

 まだまだ現役で出来る体だ。勿体ない気がするが、家族が出来たのであればそれを最優先に考えるべきだろう。あくまでミザネアと俺の推測でしかないが、きっとボルゾアは家族の為に冒険者を辞める。ただミザネアを一人に出来ないからなんとか続けている。

 だからミザネアはもう一人で大丈夫だという事を、このクエストが終わった後に伝えると言っている。

 俺もミザネアに賛成だ。他に出来る仕事があり、守るべき家族がいる。わざわざ危険な冒険者を続ける理由はないだろう。

 

 俺も家族が出来たら、そんな選択を迫られるのだろうか? 家族ねぇ……もうすぐ四十七になる俺には簡単に自分の家族など想像出来なかった。


 ◇◇


 森に入って何度か魔獣に遭遇した。しかしハルバリとディケイド、更にボルゾアの三人が蹴散らしてくれた。ここまで俺は全く出番なし。

 最後に魔獣を倒してから数時間が経った。この数時間が何を意味するのか。

 ディケイドが呟いた。


「確実に近付いているな」

「そうだね。魔獣の気配が無くなった」


 その呟きに答えたのは俺だ。リパードベアの根城は近い。恐らくリパードベアの群れは根城周辺の魔獣を掃討したんだろう。だから魔獣の気配がないこの辺りはその掃討の範囲だったということだ。


 ハルバリが振り返って俺達に”止まれ”のハンドサインを送る。続けて”様子を見てくる”とゼスチャーして、隊列を一人で離れて行った。

 残された四人はその場で身を低くして待機する。


 しばらくしてハルバリが戻ってきて、集まるように指示する。

 全員が集まるとハルバリが小声で話し出す。

 

「見つけたで。百メートルほど先に塚みたいな根城作っとるわ」

「熊野郎は?」

「四匹が表に出とる。他には見当たらへん」

「他の熊野郎は根城の中で寝てるって事だな」

「そういうこっちゃな」


 ハルバリが楽しそうに残忍な笑みを浮かべた。やっと本命の登場にハルバリは待ち切れないといった感じだ。

 ディケイドが低い声で作戦を話し出す。


「じゃあ表に出ている四匹から対処するぞ。ミザネア以外の四人で各一匹ずつ片付ける。ミザネアは俺達の援護が出来る位置で待機」

「いや、ちょっと待ってくれ」

「ラドウィン、どうした?」

「ハルバリ。根城の出入り口の数は分かるか?」

「見えたのは一つだけや。それがどないした?」

「ぐるっと回った?」

「いや、根城の後ろは見てへん」

「まずそれを確認しよう。出入り口が複数あるなら一つを残して潰した方が早い」

「なるほどな……よし、ハルバリ。もう一回根城を確認してきてくれ」

「分かった。ちょっと待っときや。すぐ見てくるわ」


 ハルバリが素早く駆けて行った。

 ディケイドが俺に目を向ける。


「根城から出てくる熊野郎を一か所に集めるんだな?」

「ああ。そうだ。こっちの方が数が少ない。分散されると面倒になるし、ボスが逃げないとも限らないからな」

「確かにな」


 ディケイドは得心がいったようで、深く頷く。するとハルバリが音もなく戻って来る。


「穴は前に一つ、後方にも一つあったわ。全部で二つや」

「分かった」

「で、どうする? ラドウィン」


 さっきまで作戦を立てていたディケイドが俺に振ってきた。試されているのかな?


「俺とミザネアが後方に回って、ミザネアの魔法で穴を一つ塞ぐ。それを合図に三人は周りのリパードベアへの攻撃を始めてくれ」

「ラドウィンは?」

「俺はミザネアの魔法が穴を塞いだのを確認したら表の方の加勢に回る」

「表の奴を倒してから、一つだけ残した穴から出てくる熊野郎を相手していくってわけだな」

「そういうこと」

「よし、それで行こう。何か意見は?」


 ディケイドの問いにハルバリが手を上げる。


「最初におっちゃんがミザネアについて行く理由は?」

「それは……」

「私の騎士(ナイト)だから当然でしょ?」


 俺が答えようとするのをミザネアが遮った。そうじゃないけど……

 

「いや……魔術師一人をリパードベアの根城の周りをうろつかせるわけにはいかんでしょ?」

「あ、なるほどな。分かったわ」


 手を打って納得するハルバリ。

 それを見てミザネアが口を尖らせる。

 

「もう……ラドさん真面目に答えすぎ。面白くなーい」

「こんな場面でおじさんに面白さは求めないでよ……」

「ハッハッハ……ラドはやっぱりラドだの」


 どういう意味だよ? ボルゾア。

 とにかく俺達の作戦は決まった。この作戦に懸念があるとすれば、ミザネアが穴を塞いで、どのくらいの時間でリパードベアが根城から出てくるのか分からないところだ。

 早く出てくるほど、俺達が不利になる。頭数は確実に向こうの方が多いからな。

 表の四匹も最初は三人で相手しなきゃいけない。俺が素早く加勢しないと三人の負担が大きくなる。


「配置を決めるぞ」


 ディケイドが俺達の配置を決める。俺とミザネアは根城をぐるっと回り込んで背後を取る。


「戦闘開始の合図はミザネアの魔法だ。いいな?」


 俺達は顔を見合わせて頷いた。

 そしてハルバリの先導でいよいよリパードベアの根城へと向かう。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます! めちゃくちゃモチベーション上がります!

まだの方は是非!

これからもよろしくお願いしますm(_ _)m

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