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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第三章 おじさん冒険者と真っ直ぐな女性達

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20/77

20.ツァミの今後

掲載順を間違えてしまった……

今は修正出来ましたので、引き続きお読みくださいm(_ _)m

よろしくお願いしますm(_ _)m

 俺とツァミが今回受けたクエストは、森林地帯に出現するサーベルビートルという魔獣の討伐だ。

 サーベルビートルは一メートルほどの体長に、長い剣のような角を持つ蟲型の魔獣だ。

 森林地帯に近い村や集落では森の中で狩りをする狩人がいるが、このサーベルビートルによる被害が結構出る。

 狩人が獲物を追って森の中に入り、サーベルビートルに狩人が襲われるのだ。なので定期的にこのサーベルビートルの討伐、駆除がギルドに依頼される。


 剣のような角は危険だが、ちゃんと武装していればそれほど脅威ではない。なのでアイアンやブロンズの冒険者が受ける討伐クエストとしては定番のクエストとなっている。


 こないだのケルビと比べればかなり小さくて素早い魔獣だけど、このぐらいの魔獣の方がツァミの魔法の練習にもなるだろう。

 目的地の森林地帯に行く道中ツァミに、魔道具店で買ったロッドを手渡す。


「おじたん、これ何?」

「ロッドだよ。見たことない?」

「ない」


 ミザネアに教えてもらった通り、攻撃魔法を放つ時に手じゃなくてロッドを通して撃つんだよと説明する。


「ロッドを……通して、撃つ」

「そうそう」


 立ち止まったツァミが草原に向かってロッドを構えて詠唱を始めた。ここで撃つの?


氷槍(アイスジャベリン)!」


 ツァミのロッドから生まれた棒状の氷が勢い良く草原に向かって飛んでいく。


「おおー! 凄い凄い! ちゃんと槍の形になってるよ」

「これで、合ってる?」

「合ってると思うよ」


 ジャベリンなんだから、これが本来のこの魔法の形なんだろう。上手く出来たはずなのにツァミはちょっと浮かない顔をしている。


「あんまり魔力、使った気しない」

「でもちゃんと出来てるよ。たぶん今までは無駄な魔力の放出が大きかったんだと思うよ」

「無駄……」

「制御出来てなかったんだろうね。たぶんこれが本来の消費魔力なんだと思うよ」

「こくり」

「何もない時より狙いやすくないかい?」

「狙いやすい。真っ直ぐ飛ぶ」

「じゃあそれで一回、魔獣を倒してみようか」

「こくり」


 本人的にはまだイマイチしっくり来てないような感じだけど、そのうち慣れるだろう。あれぐらいの威力があればサーベルビートルぐらい一撃で倒せるだろう。

 森に入ってサーベルビートルに遭遇したらまずツァミに先制攻撃させてみよう。


 ◇◇


 目的の森に入った俺達は森の奥へと進んで行く。しばらく進むと、前方から何か物音が聞こえてくる。

 その音は地面で蠢く黒光りする物体から聞こえてくる。サーベルビートルだ。

 何か小動物を捕食しているようで、一心不乱に食事をしている。

 チャンスだ。今なら一撃で仕留められる。俺達は足を止めて、ツァミに小声で話しかける。


「ツァミ。ここから魔法で狙ってみて」

「こくり」

「もし外れて奴が飛んできたらそこの木の裏に隠れるんだ。俺が対処するから」


 サーベルビートルの主な攻撃手段はその長い角による刺突。羽で飛んで全体重を乗せて放ってくる刺突は鉄の胸当てを貫通するほどの威力がある。

 だがコイツには致命的な弱点がある。それは刺突を躱して、角が木などに突き刺さるとコイツは引き抜くのに手こずって少し行動不能になる。そうなれば楽勝で倒せる。

 なのでサーベルビートルと対峙する時は木や壁を背にするというのが鉄則だ。刺突がきても落ち着いて躱せばいい。稀に賢い個体はそれを読んでなかなか突進して来ない奴もいるらしいが。

 俺達はサーベルビートルとの距離を少しづつ縮めて、約十メートルほど離れた位置で止まる。ここならツァミの魔法は充分届く。

 俺達の存在には気付いていると思うが、よほど余裕があるのか、サーベルビートルは食事を止めず食べ続けている。

 よし、好都合だ。的は小さいが、止まっていれば当たる確率は上がる。

 ツァミに向かって頷くと、ツァミが親指を立てる。そしてサーベルビートルに向かってロッドを構え、静かに詠唱を始める。


氷槍(アイスジャベリン)!」


 ツァミのロッドから放たれた氷の槍が一直線にサーベルビートルに向かう。しかし、当たる直前にビートルが真上に飛び、その氷の槍を躱す。

 反応が早いな。

 空中で静止したサーベルビートルがその角を俺達の方に向ける。


「ツァミ! もう一発、撃てるか?」

「こくり」


 ツァミの次弾が発射される前にビートルがこちらに向かって飛んでくる。

 その瞬間、ツァミの次弾が発射された。

 さっきの氷槍よりも大きく、そして速い。

 向かってくるサーベルビートルは俺達を突き刺す事しか考えていなかったんだろう。さっきよりも速い速度で発射された氷の槍はビートルの体を捉えた。

 一発目は直径五センチほどの氷槍。次弾はその約四倍。

 氷槍はビートルの体を掠めるように通り過ぎたが、ビートルはそのまま地面に落下した。

 地面に落ちたビートルの体は右半分がえぐり取られたようになっていた。


「ツァミ! 当たった当たった!」

「おじたん! 当たった――!」


 ハイタッチして喜ぶおじたん剣士と魔術師少女。

 見事な氷槍(アイスジャベリン)だった。こないだの樽みたいな奴とは大違いだ。発射速度も速かった。


 ツァミが嬉しそうな顔で倒したビートルの死骸と、手に持ったロッドを交互に見ている。


「おじたん、コレ、凄いね」

「うん。良かった。使いこなせて何よりだよ」


 その後、何匹かのサーベルビートルをツァミの魔法で倒す事が出来た。彼女は完全にロッドを使い、魔法をコントロール出来ていた。

 俺達は討伐証明のサーベルビートルの角を切り取り、ホクホク顔でイオアトスへと戻って行った。


 ◇◇


 ギルドでクエスト完了の報告を終え、俺とツァミはギルドのレストランで一息ついていた。

 もうツァミは冒険者としての力はアイアンランクを遥かに越えているだろう。上のランクを目指すなら俺と組むのはやっぱりいい選択とは言えない。

 

 ギルドのポイント加算のルールでは上のランクの冒険者と組んでもクエストポイントはあまり入ってこない。一回のクエストで多くのポイントを加点するには同じランクの冒険者と組むのが一番いい。


「ツァミ、早くおじたんと同じミスリルランクになりたい」

「そうか……。うーん」


 悩むところだ。本人は俺と組みたがっているけど、それだとランクを上げるのはかなり時間がかかるだろう。

 俺も一人でのんびりやりたいし。どうすればツァミを納得させられるだろうか。


 そんなふうに悩んでいると、誰かが不意に俺達に声をかけてきた。


「あの、ラドウィンさん」

「ん? あー、君達はあの時の……えと、確かミッグスだったっけ?」

「はい! そうです! あの時は本当にありがとうございました」


 遺跡群の迷宮でレッサーデビルに追いかけられていたアイアンランクの三人組だった。俺を見掛けたので、わざわざお礼を言いにきたらしい。礼儀正しい良い子達だ。

 三人のリーダー格のミッグスがツァミに目を向ける。その視線にツァミが少し身構える。


「あの……こちらはラドウィンさんの……娘さん?」

「ちゃうわ! 確かにそのくらい歳は離れてるけども! 冒険者だよ。最近知り合ったツァミって言うんだ」

「ツ、ツ、ツァミ……です」


 かなり挙動不審だが、ツァミがちゃんと名乗れた。そのツァミに三人組の中の女の子が反応する。


「ツァミちゃんって言うんだ。あたしはエリハナっていうの。よろしく」

「よ、よろしく……」

「あ、ツァミちゃんもあたし達と同じアイアンなんだね〜」

「こくり」


 緊張はしてるみたいだけど、歳の近い女の子と話せてツァミが少し嬉しそうだ。

 その瞬間、俺の脳裏にナイスなアイデアが浮かんだ。


「そうだ。ミッグス達のパーティーにこのツァミを加入させてくれないか?」

「「「え?」」」


 全員が一斉に俺の方を見る。ツァミに至っては瞬きの数が凄い。


「な、な、なんで? おじたん?」

「いいかい、ツァミ。君と俺とではランクがかなり離れてる。それは分かるね?」

「こくり」

「だから俺とクエストを受けてもツァミにはほとんどクエストポイントが加算されない。だから早くランクを上げたいんだったら、同じランクの冒険者と組むのが一番早いんだよ」

「……ん、でも……」


 戸惑うツァミの視線が泳ぐ。俺は三人組の方に顔を向ける。


「君達の中に魔術師はいないよね?」

「はい。魔法使える人って少ないですから……なかなか見つからなくて」

「だったら丁度いい。このツァミは魔術師なんだ」


 魔術師と聞いて三人の目が輝いた。特にエリハナは跳び上がってツァミの手を握る。


「ツァミちゃん、魔術師なの!? 凄い!」

「う、うん……」

「ぜひウチのパーティーに入ってよ! 一緒に頑張ろうよ!」

「お、俺達からもお願いするよ。ぜひ入ってくれないかな?」


 エリハナの後ろで男二人も頭を下げる。戸惑うツァミが助けを求めるように俺に視線を向ける。


「ツァミ。彼らと一緒に頑張ってみな」

「おじたんは?」

「俺は一人でのんびりやるからさ」

「う〜〜」


 ツァミがジト目で見てくるが、これがお別れってわけじゃない。


「ツァミのランクがもう少し上がったら一緒にクエスト受けるよ。それまで彼らと一緒に頑張ってみな」

「そだよ! ラドウィンさんもこう言ってるし、私達と頑張ろうよ!」


 顔を少し伏せたツァミが上目遣いで彼らに視線を向ける。顔はかなり真っ赤だ。だいぶ迷っているみたいだけど、ずっとエリハナの手はしっかり握り返している。

 そして小さな声で呟く。


「ツァミ……頑張る。よ、よろしく」

「うん! 頑張ろう! いっぱいクエスト受けてどんどんランク上げようね!」

「「おう!」」


 エリハナの号令に男二人も雄叫びを上げた。うん。若いって素晴らしい。

 ホントに見ていて眩しいよ。キラキラしてるね。よし、じゃあ俺もちょっと年長者らしい所を見せるか。


「よし! じゃあ皆でメシ食いに行くか! ツァミ加入祝いだ! もちろん俺の奢りだからな!」

「おおー、いいんすか?」

「若者が遠慮なんかするな! 行くぞ!」

「「おおー!」」


 若者四人を引き連れて、俺達はギルドを勢いよく出て行った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

今後もよろしくお願いします!


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