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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第三章 おじさん冒険者と真っ直ぐな女性達

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19.乙女の心

 ツァミとクエストに行った翌日、俺は町へ出ていた。今朝の行き先はギルドではなく、魔道具店。

 何故そんな所に向かっているかというと、ツァミに何か良い魔道具がないか探すためだ。


 昨日の彼女の魔法は強力だったが氷槍(アイスジャベリン)と唱えて、出てきたのはバカでかな氷の塊ばかりで見当違いの方向にばかり撃たれていた。

 たぶん彼女は自分の魔法をしっかり使いこなせていないんじゃないかと思う。

 俺に魔法の知識はないけど、魔道具店に行けば何か彼女の魔法の助けになるような魔道具があるかもしれないと考えたからだ。


 俺がそこまで彼女にやってあげる義理はないけど、冷たく突き放す勇気もない。なので出来る限りの事はしてあげようと思っただけだ。


 ◇◇


 魔道具店はほとんど行った事がない。なので、唯一知っている店にとりあえず行ってみる。このお店はどちらかというと生活を補助するような魔道具を取り扱っている。お湯を沸かしたり、飲み物を冷やしたりするような生活魔道具と呼ばれる物をメインに置いている。

 

 うーん……。やっぱりちょっと違うな。ツァミの魔法を補助出来るような物は置いてなさそうだ。

 といっても他に魔道具店を知らないし……どうしたものか。

 棚を見回しながら店内を一周してみるが、やはり見当たらない。


「ラドさん?」

「ん? あ……」


 声を掛けられて振り返ると、そこに居たのはミザネアだった。

 ちょうどいい。彼女は冒険者で、魔術師だ。ツァミの攻撃魔法の補助になるような魔道具を何か知っているかもしれない。


「こんなお店でどうしたんですか? お買い物?」

「ああ。ちょうど良かった、ミザネア。ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「はい。何ですか?」


 ツァミの名前は伏せて、俺はミザネアに魔法を扱いやすくなるような魔道具とかないのかを聞いてみた。


「魔法を扱いやすくですか……。ラドさんが使うわけじゃないんですよね?」

「まさか。俺は攻撃魔法は使えないよ」

「んー、だったらロッドを使えばいいと思いますよ」

「ロッド? ロッドって杖だよね?」

「そうです。魔石が使われている奴ですよ」


 そういえば若い魔術師はたまに使っているな。手に持ったロッドから攻撃魔法を放つのを見たことがある。あれはそういう物だったのか。


「ロッドだったら私の知っている魔道具店に売っていますよ」

「本当? 何処にあるの?」

「それじゃ、私が案内しますよ。ちょっと買い物があるので、少しだけ待ってもらってもいいですか?」

「うん。構わないよ。助かる」


 ミザネアはそう言って手早く自分の買い物を済ませると、俺の元に戻って来た。


「お待たせ。それじゃ、ラドさん。行きましょうか」

「よろしく頼むよ」


 こうして俺はミザネアと一緒に別の魔道具店へと向かった。


 ◇◇


 ミザネアが案内してくれたのは魔術師御用達の魔道具店。店内には冒険者の魔術師が使うようなロッドやワンド、更に魔力が込められたローブや指輪などが陳列されていた。

 剣士で言う所の武器屋のようなものか。魔術師は普通の武器屋で買える物はほとんどないが、こういう魔道具店で冒険の装備品を買うみたいだ。長年冒険者をやっているけど、初めて知った。

 ミザネアの案内でロッドが陳列された棚へと向かう。

 ロッドとは五十センチほどの木の棒で、先端に魔石が装飾されている。この魔石が色々と魔術師の魔法をサポートするそうだ。


「私はほとんどロッドは使わないんですけど、まだ魔力操作に慣れていない頃はこういったロッドで魔法を制御した方が魔力を節約出来るし、指向性が安定するんですよ」

「指向性?」

「簡単に言うと、魔法の狙いを定める事ですね。上手く制御出来ないと狙った所に攻撃魔法が放てないんです」

「なるほど……」


 とりあえず適当に選んだロッドを手に取ってみる。見た目の割りにずっしりとした重みがあり、加工された木の部分はかなり丈夫そうだ。先端に紫色の魔石が埋め込まれている。


「この魔石も物によって色々と効果が違ってて、魔力を制御するだけじゃなく、増幅したり分散させたりとかの効果があるんですよ」

「なるほど……奥深いね」

「私からすると剣士が使う剣の方が奥深いですけどね」

「そうかな? まあいいや。とりあえず俺には良く分からないから魔法を制御するタイプのロッドを見繕ってもらえないかな」

「いいですよ。だとしたら……」


 ミザネアが三本ほどロッドを選んで持ってきてくれた。で、その中の一本を差し出す。


「多分これが一番いいですね。魔法初心者用で使いやすいと思います」

「へー、どれどれ…」


 と手渡されたけど、俺には違いがさっぱり分からない。埋め込まれている魔石の色と値段が違う、ぐらいしか分からない。

 一度ツァミに使ってもらうのがいいだろうな。


「じゃあ、とりあえずコレにしてみるよ」

「分かりました。誰かへのプレゼントですか?」

「ん? まあ、そんなところかな」

「ふーん……」


 何か含みのある返事が返ってきた。気になることか?


「私は初心者じゃないんだけどなぁ……」

「ん? 何か言った?」

「いえいえ、じゃあコレにしましょうか」


 選んだロッドを購入して、魔道具店を出た。


「ありがとう、ミザネア。助かったよ」

「いえいえ。これぐらいで良ければいつでもどうぞ」

「そういえばボルゾアから君が魔導書の解析をしてるって聞いていたけど、それはもう終わったのかい?」

「はい。といってもまだ全部じゃないですけど、ほとんど終わりました」

「そう。じゃあもうすぐクエストを受けるのかい?」

「近いうちにって感じですかね。どうしてですか?」

「また魔法の事で相談するかもしれないからまたその時はよろしく頼むよ」

「あ、あぁ……そっちですか……」

「え? そっちって?」

「いえいえ。こっちの話です。いつでも相談してください。私で良ければ、いつでも相談に乗りますよ。何だったら食事でもしながらでどうですか?」

「はは、食事の時間まで取らせたら申し訳ないよ」

「別に私はいいんですけど……」

「え? 何?」

「いえ! またいつでも言ってきてください」

「うん、ありがとう。それじゃ」

「はい。それでは」


 ミザネアと別れて俺は宿へと帰って行った。

 いやー、ホントにいいタイミングでミザネアに会えて助かった。これでツァミの魔法が上達してくれれば彼女も仲間を探しやすくなるだろう。

 次にツァミに会った時にコレ(ロッド)を使ってもらおう。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

この第三章は閑話のような感じになります。



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