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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第二章 おじさん冒険者、色々出会う

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16.折れるおじたん

 このツァミという女の子は本当に不思議な少女だった。迷宮から戻る道中、彼女と話しながら思った感想だ。

 聞けばこのクエストが彼女の初めてのクエストだったらしい。初めてなのにいきなり迷宮の三層まで下りて行くとは……。


 年齢は十六歳。冒険者は十六歳から登録出来るから年齢条件を満たしてすぐに冒険者になったらしい。見た目は幼く見えるけど大丈夫だったんだな。

 イオアトスの町に来る前は山奥で、師匠と呼ぶ女性と過ごしていたらしい。

 しかもその師匠以外の人間とはこれまでほとんど話したことがないという。

 そんな女の子が何で冒険者になんかなったのか聞いてみると、


「師匠に、町へ行けって、言われた」

「師匠に言われたんだ」

「こくり」

「さっきの魔法も師匠に教えてもらったの?」

「こくり」


 さっきツァミがレッサーデビルに放った氷槍(アイスジャベリン)という攻撃魔法は他の魔術師が使っているのを見たことがある。けどその時は本当の槍みたいに鋭い棒状の氷だった。

 ツァミが出したのは槍とは言えないデカい氷塊だった。もしかしたら別の魔法なんかな? それとも魔力とかが制御出来ていないとか? 魔法に詳しくない俺が考えても仕方ないけど。


 話し方は少し変わってるけど、素直で純粋な()だ。

 仲間がいないってことだから、歳やランクが近い仲間を見つけた方がいいだろうな。魔術師は数が少ないからたぶんすぐに見つかる。

 さっきのアイスジャベリンも形状はともかく、アイアンランクではあれほどの威力の魔法を使える魔術師はそういないだろう。


 迷宮を出て、遺跡群の中を歩く。俺の後ろを大人しく付いてくるツァミ。


「おじたんは、剣士?」

「ああ。そうだよ」


 さっき名前は教えたはずだが? まあ、いいか。


「師匠も、剣、使ってた」

「へー…………え? 師匠って魔術師じゃないの?」

「師匠、魔法、使えない。剣で、魔獣倒してた」

「ええー……」


 まさかツァミに魔法を教えた師匠も俺と同じ魔法の素人だったとは……。


「師匠、昔、冒険者だったって、言ってた」

「師匠も冒険者……。だからツァミにも冒険者になるように薦めたってこと?」

「こくり」


 なるほどね。本当に変わった経歴の女の子だ。でも魔術師としての才能はあるみたいだし、あとは徐々に人にも町にも慣れていくだろう。

 なんたってまだ十六歳だ。何色にでも染まれる年齢だ。願わくばこのまま真っ直ぐに育って欲しいものだ。

 うーん……歳を取ったせいか、このぐらいの歳の子供には変な親心みたいな感情が出てしまうな。


 ◇◇◇


 イオアトスに戻り、ツァミと一緒にギルドへと向かう。日もだいぶ傾いてきているが、一人でクエストに行った時よりも早い戻り時間だ。

 カウンターに行き、クエストの完了と魔晶石の換金をお願いする。そして、それとは別にギルドへ報告。


 

「ええ!? 遺跡群の迷宮にレッサーデビルですか?」

「うん。この迷宮の三層なんだけど……やばいよね?」


 遺跡群周辺の地図を見せながら受付嬢に説明する。レッサーデビルはだいたい下から三番目のランク、シルバーランクのパーティーが相手にするような魔獣だ。新参者の冒険者にはとっては危険な魔獣だ。

 もちろんそんなクラスの魔獣は今までその迷宮に出た事がないから、アイアンランクのツァミにもこのクエストを許可したと思うんだけど……。


「ちゃんとした調査が終わるまで、アイアンとかブロンズの冒険者は危ないから迷宮に入れない方がいいと思うよ」

「そうですね。ギルド長に報告しておきます。ご報告ありがとうございました」

「それともう一ついいかな?」

「はい。何でしょうか?」

「ギルドってパーティーメンバーの斡旋ってしてくれるのかな?」

「斡旋はしていませんが……メンバー募集でしたらあのクエストボードの隣に張り出しておりますが」

「あー、やっぱりあれになるか」

「そうですね。ギルドで個別のパーティーのご紹介などは出来かねます。すみません」

「いやいや、ありがとう。念の為に聞いてみただけだから」


 受付嬢は深々と頭を下げて、俺とツァミの報酬金を手渡す。

 ツァミと同じくらいランクの冒険者を紹介してもらおうと思ったけど、やっぱり無理みたいだ。まあ一緒にメンバー募集の張り紙を見て選ぶくらいは後でしてあげてもいいけど。

 

 待っていたツァミにその報酬金を手渡すと、ツァミはその報酬金の入った革袋を大事そうに抱えた。

 初めてのクエスト報酬だもんな。そりゃ嬉しいよな。


「ツァミはこの後、少し時間あるかい?」

「だいじょぶ」

「あそこに張り紙があるだろ? あそこにパーティーメンバーの募集がいっぱいあるんだけど見てみるかい?」

「何で?」

「今日一人で危なかったろ? だから仲間と一緒にクエストを受けないと今後危険だからさ。ツァミと一緒にクエストを受けてくれる仲間を探そう」


 ツァミが目を細めた。更に口元がへの字に曲がる。何で?


「イヤだ」

「え?」

「おじたんがいるから、仲間いらない」

「いや、俺はたまたま通りがかっただけで仲間じゃないよ。それにツァミにはもっと歳やランクの近い仲間がいた方が……」


 と、ここまで話すとツァミの目にみるみる涙が溜まっていく。


「イヤだ。おじたんがいい」

「え、えぇ〜……」


 俺の方が間違っていないはずだけど、若い娘に泣かれると俺が間違っているように感じてしまう。

 俺、間違ってないよな? 俺みたいなおじさんとパーティー組むより歳の近い奴と組む方が絶対いいに決まってるんだから。

 と思っている間にも、顔を赤くして涙を堪えるツァミ。

 はー……。分かりました。おじたんの負けです。


「分かった。よし。分かった。それじゃこうしよう。とりあえず、次のクエストは俺と一緒に行こうか?」


 ツァミの顔に笑みが浮かぶ。


「うん。ツァミ、おじたんとクエスト行く」

「だけど何日か後だよ。それでもいいかな?」

「こくり。だいじょぶ」

「うん。じゃあ、とりあえず次は俺と一緒にクエストに行こうか」

「こくり」


 とりあえずツァミを納得させました。ちょっとその場しのぎの感はあるけど、泣かれるよりはいい。周りの目もあるし。

 彼女のパーティーメンバーは、彼女に内緒で俺が探すことにしよう。何故俺と一緒に行きたいのか分からないけど、俺と組むのは絶対に良くない。俺にとっても彼女にとっても。


 とりあえず数日後にツァミとギルドで会う約束をして、俺達はギルドを後にした。


 は――……何で懐かれたんだろうか?

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


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