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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第二章 おじさん冒険者、色々出会う

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12.新参者

おじさん念願ののんびり冒険者生活の始まりです

 昨日の騎兵師団庁舎ではえらい目にあった。あの後ベルアド武器店に寄って、バザフに愚痴の一つでも言ってやろうと思ったが、俺に配達を頼むくらい忙しいと思うので、止めておいた。

 また後日改めて文句言ってやろう。


 というわけで今日は朝から冒険者ギルドに来ている。前は急遽ミザネア達と巨鳥ヴァルタロフの卵を取りに行くことになってしまったから受けれなかったが、今日は当初の予定だった魔晶石採取のクエストを受けに来たのだ。

 

 クエストを受注して、魔晶石専用の革袋をギルドのカウンターで受け取る。採取が終了する時にこの袋に魔晶石を詰めて買い取ってもらう事になる。

 ちなみにこの袋に入っていない魔晶石もギルドは買い取ってくれるが、買取り額は激安になる。これは魔晶石の乱獲を防ぐ為にそうなっている。

 いくら無限に湧き出すといっても、皆が一斉に採取しだしたらどうなるか分からないからね。

 買取り用の袋を貸し出して、その袋に入る量だけ正規の買取り額で買い取りますよ、という方法でギルドは魔晶石の供給バランスを保っているというわけだ。そういうの、考える人はホントに凄いなと思うよね。

 俺なんて、どうやったら宿の割引が長く続けられるか、という事で頭いっぱいだからね。


 ◇◇◇


 やって来たのはイオアトスの南から南東方面に広がる草原地帯。この広大な草原地帯の中にあるのが遺跡群地帯だ。

 数百年前の王都があったらしく、数多くの遺跡が残っている一帯だ。

 その遺跡群の中にある古墳や迷宮の地下に魔晶石が発生する。


 何故そんな場所に魔晶石が発生するのかというと、この遺跡群の地中深くには大きな魔力の通り道があるらしい。

 その通り道から溢れた余剰な魔力が、かつて王都として栄えたこの遺跡群の地下にある古墳や迷宮の壁や床などに結晶化して湧いてくるのだ。


 なんでも王都衰退後に自然発生した洞窟などもあって、その洞窟の中にも魔晶石は発生する。

 更に南東の方角にある山岳地帯の洞窟でも魔晶石が採れるが、イオアトスからはけっこう遠くなるので、そこまで足を伸ばす冒険者はそれほど多くない。

 なのでこのクエストを受けた冒険者のほとんどはこの遺跡群の中にある古墳や迷宮の中で魔晶石を採取する。もちろん俺も最初からそのつもりだ。


 十年振りの遺跡群での魔晶石採取。当時の記憶を思い出しながら、遺跡群の中を進んでいく。俺が目指すのはいくつかある迷宮の内、一番広いと言われている迷宮だ。そこは何層かの迷宮になっていて、その浅い階層は新参者の採取場所になっていて競争率が高いが、少し下層に潜れば他の冒険者はあまり来ず、けっこう効率良く魔晶石が採れる。


 というわけで迷宮に辿り着いた俺は、下層へと下りていく。ここまでの道のりで魔獣には出くわさなかった。遺跡群に入ってからも冒険者を見たのは二組だけ。

 競争相手が少ない。いい感じだ。だったら今のうち袋一杯に魔晶石を採取してしまおう。


 迷宮を三層ほど下りた所で、壁や床に湧いている魔晶石を見つけた。それを小さなハンマーで手際良く剥がして革袋に詰めていく。久々とはいえ、昔散々やった作業だ。この辺の手際の良さは若い者には負けないよ。


 ◇◇◇

 

 順調に採取していき、革袋にだいぶ魔晶石が詰まってきた。もうそろそろ帰りますか。

 そう思って立ち上がった時に、回廊の奥からドタドタと走る足音が聞こえてくる。たぶん人間の足音。それも複数人だ。

 足音が近付いてくる方を警戒する。


 前もよくあったんだよな。新参者の冒険者が、魔晶石を採るのに夢中になって迷宮の奥に入ってしまったり、魔獣が近付いて来てるのに気が付かなくて奇襲うけてピンチになったりということが。


 回廊の奥からこちらに向かって走って来ているのは三人の冒険者。その後ろを三匹の狼型の魔獣が追いかけている。

 やっぱりそうだった。助けてやるか。

 俺はその三人に向かって手を振りながら叫ぶ。


「おーいっ! こっちだ!」

「え!? あ! た、助け……」

「殺られる! 助けてっ!」

 

 俺の姿に気付いた三人の冒険者が俺の方に向かって走ってくる。追いかけてきているのはブラックウルフだな。大型の狼型魔獣だ。迷宮の闇に紛れて冒険者を襲ういやらしい魔獣だ。新参者が相手にするにはかなり危険な魔獣だ。

 でもブラックウルフが群れているのなんて珍しいな。三匹であの冒険者を襲ったのか?


「俺がウルフを引き受ける。早く逃げろ!」

「え? はいっ!」


 三人の冒険者は俺の側を通り過ぎた。すれ違いざまにチラッと見えたけど、アイアンランクだった。

 その冒険者達のすぐ後ろまで迫っていたブラックウルフに剣を抜く。

 あ、これ借りた剣だった。傷付かないように剣だけ強化魔法かけとくか。

 

 剣に強化魔法をかけて、まず先頭の一匹に向かって剣を水平に振る。そしてそのまま流れるように、飛びかかってきた二匹目を袈裟斬りにする。

 最後の三匹目はそれを見て、走る速度を弱めた。賢明な判断だと思うけど、もう遅いな。

 そこはもう俺の間合いだ。


 立ち止まった三匹目に、鋭い踏み込みからの突きを放つ。そのブラックウルフの首元に剣が突き立てられた。

 三匹とも一撃。ギャンと小さな断末魔を上げて動かなくなった。


 俺が三匹のブラックウルフを倒したのを見て安心したのか、逃げてきた冒険者達が床にへたり込んだ。その三人の元へ近付く。


「おーい、大丈夫かい?」

「あ、ありがとうございます……」

「た、助かりました……」

「すいません……」


 三人とも肩で息をしながらそれぞれに礼を言ってくる。


「気を付けなよ。採取してる時も誰か見張りを立てないと急に襲われるからね」

「そ、そうですね……。すいません」


 三人は申し訳なさそうに頭を下げる。まあ、アイアンランクだからね。これも経験だ。たまたま今回は俺が通りがかったから良かったけど、この三人だけならウルフ三匹はかなり危なかっただろうな。それで言えば……、


「そういえば……さっきのブラックウルフ、三匹で襲ってきたのか?」

「は、はい。足音が聞こえてきて、振り向いたらもうこっちに向かって走ってきていて……」

「ふーん、珍しいね」

「そうなんですか?」

「うん。こいつらは基本単独で行動していて、群れるなんて聞いたことないんだけどね」


 三人は首を捻りながら俺の話を聞いていた。で、リーダーらしき男が話しかけてくる。


「でも最近この遺跡群近くにも強い魔獣が出るから、気を付けるようにとは聞いてましたけど……」

「そうなんだ。だったらもっと慎重にいかないと駄目だね」

「すいません……」


 三人が申し訳なさそうに頭を下げる。でもそんな話があったのか。本来この辺りはそれほど強い魔獣は出ない。だから新参者でも魔晶石を採取するには最適な場所ということで、ギルドも新参者には薦めてるぐらいだからな。


「とりあえず地上まで一緒に行くよ。歩けるかい?」

「はい。大丈夫です」


 三人は息を整えながら立ち上がった。

 所々怪我をしているみたいだが、歩けないほどではないみたいだ。

 若いとスタミナの回復力も早いね。おじさんになって一番痛感したのは持久力の低下だからね。ベンゼル達といた時も何度か休憩の延長を申し出たことがあったよ。そのうちに彼らは俺の様子を見て、休憩時間を決めるようになってくれたけどね。

 その点はだいぶ彼らに気を使わせちゃったね。


 立ち上がった三人を見て、一度剣の状態を確認する。

 うん。傷、ヘコみ無し。

 借り物だからね。良かった。


 俺と新参者三人は地上へと向かって歩き出した。 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


次の話から新キャラがちょこちょこ出てきます。是非、次からもよろしくお願いします。

そしてブックマークもお願い致しますm(_ _)m

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