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パーティーをリストラされたおじさん冒険者(46)は実は無自覚に最強でした〜そしておじさんなのに何故か無自覚にモテてしまいます〜  作者: 十目 イチ
第九章 キケン?な女

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107.オリベラーナ嬢

 日もだいぶ傾き出した頃、俺達はヴァナオルの屋敷を出て、バーラン=ギレアスの屋敷へと向かった。


 バーランの屋敷もヴァナオルの屋敷も王都の高級区画の中にある。

 以前、俺も王都で十年ほど活動していたが、この辺りの高級区画には足を踏み入れた事はない。

 ここは俺みたいな冒険者が歩いていたら速攻でどこかの警備員に声をかけられて、憲兵を呼ばれて連れて行かれる……そんな場所だからね。

 荘厳な屋敷が並ぶ通りを進んだ所で俺達の乗った馬車が速度を緩める。


「リューラ。レヴィアラ。あの向こうに馬車が見えるか?」

「はい。見えます」

「あの馬車にヴァナオルがおるはずじゃ。お主らはヴァナオルと騎兵師団と待機じゃ。良いな?」

「分かりました」


 リューラとレヴィアラは馬車を降りて、通りを挟んだ所に停車している馬車へと向かった。そして再び俺達の馬車が動き出す。

 今、この馬車には俺とネルアリアとミザネアの三人だけだ。

 ヴァナオルが、バーランとアポを取っているらしい。

 そしてネルアリアはヴァナオルの代理としてバーランの所へと赴くという段取りだ。俺とミザネアは、ネルアリアの護衛兼従者として彼女に同行するという流れになっている。


 あと数分でバーランの屋敷という所で、少し気になっていた事をネルアリアに聞いてみる。


「ネルアリア。騎兵師団は何処で待機しているんだ?」

「手筈通りならば、もうバーランの屋敷の周りに配置しておるはずじゃ」

「バーランが逃亡を図ったらどうやって騎兵師団に知らせるんだ?」


 ネルアリアが手の甲を俺に向ける。細い指にはめられた指輪が光る。


「あの時の倉庫で使った指輪じゃ。もう片方はヴァナ坊が持っておる。これが光ると騎兵師団が突入を開始する手筈になっておる」


 なるほど。色々と使い勝手がいいようで。

 そうこうしているうちに馬車は一つの屋敷の敷地へと入っていく。門前の衛兵に呼び止められ、馬車の窓をネルアリアが開ける。衛兵がネルアリアを見て、毅然とした声を上げる。


「ここはギレアス家の邸宅である。何用であるか?」

「ヴァナオル=フォーライアの代理で参った。書状はこちらにある」


 ネルアリアはそう言いながら筒状に丸められた書状を衛兵に渡す。

 衛兵はすぐに中身を確認すると、


「承知した。確認をするのでしばし待たれよ」

「ふむ」


 別の衛兵に書状を渡し、渡された衛兵は屋敷へと走って行った。窓を閉めたネルアリアが外には聞こえない小声で、


「用心深い奴じゃな……面倒くさいの」


 いや、議会貴族の屋敷だったらこれぐらい当然だろ。皆、自腹で警備員雇ってるぐらいなんだからよ。


 しばらく待っていると、屋敷の門が開いた。


「確認が取れた。入られよ」


 衛兵に言われ、俺達が乗った馬車は敷地内へと進んで行く。



 屋敷の前に馬車を停め、俺達は馬車を降りた。すると一人の衛兵が俺達の前に現れる。


「ネルアリア=シスフォード様とお付きの方。お待たせ致しました。ご案内させていただきます」


 衛兵に連れられて、俺達は屋敷の玄関の中へ入って行った。

 かなり広い玄関ホール。中央の奥まった所には二階へと続く大きな階段があり、ホールの左右には廊下が伸びていた。

 おそらく応接室のような所に案内されるのだろうと思っていたら、玄関を入ってすぐに男の声が玄関ホールに響いた。


「ようこそ! ネルアリア嬢!」


 玄関ホール奥の階段から男が発した声だった。男は軽い足取りで二階部分から下りてくる。


「お主がバーランか?」

「いかにも! 私がバーラン=ギレアス伯爵であります。ネルアリア嬢はヴァナオル卿の代理だという事だが……」

「そうじゃ」


 バーランがホールのフロアまで下りて来て、ゆっくりと俺達に近付いてくる。


 議会貴族と聞いていたからヴァナオルとかと同じようなおじさま貴族を想像していたが、バーランはかなり若かった。

 金髪をキッチリと後ろへ流し、聡明で神経質そうな印象があった。

 バーランが足を止めて、ホールに良く通る声で話し出す。


「ヴァナオル卿から次の議会の相談だと聞いていましたが、何故代理で貴女が来られたのでしょうか? しかも護衛の人間まで付けて。お聞かせ願えますか? ネルアリア嬢?」

「ふん」


 いちいちキザな喋り方をする奴だなと思ったが、ネルアリアも同じように思ったらしく、面倒くさそうに応える。


「お主に用があったのは妾じゃ」

「ほう? どのようなご用件で?」


 バーランがそう問いかけたと同時に俺達の後ろ、玄関の扉が閉ざされた。


「バーランよ。お主、遺物を探しておるな?」


 遺物という言葉にバーランの体がピクリと反応した。そして手を口に当てて、笑いを堪えるように体を震わせる。


「ネルアリア嬢……」

「お主のような若輩者に嬢などと呼ばれる筋合いはないのだがの?」

「やはり貴女はフォーライア家の人間ですね?」


 ネルアリアは何も答えない。だがその沈黙をバーランは肯定と受け取ったようだ。


「オリベラーナ=フォーライア……ですね?」

「妾の本当の名を知った所で何も得する事はないぞ?」

「ええ。知っただけではね。フォーライア家の長女で、その才覚と手腕で天才と呼ばれ、ある日忽然と、王国の政界と社交界から姿を消した王政議会議長を務めたフォーライア家のご令嬢……」


 ネルアリアは何も答えない。

 てか、ネルアリアってそんな凄い人なの? 王政議会議長って言った?

 とんでもないお嬢様やん!


 階段上部から見下ろすバーランの視線がネルアリアに向けられる。もうその顔からは笑顔が消え、冷徹にネルアリアだけを見つめていた。


「貴女の命と引き換えならば、フォーライア家は遺物を差し出すのではありませんか?」


 それが合図だったのか、ホール中に武器を構えた衛兵がなだれ込む。俺達三人は完全に取り囲まれてしまった。

 バーランが更に続ける。


「ヴァナオル卿を捕らえるつもりでしたが、予定変更です。ですが貴女ならばヴァナオル卿と十分に釣り合えますよね?」

「さあ? どうだかの?」


 ネルアリアがバーランを見据えながら、俺とミザネアに声をかける。


「二人とも、準備は出来ておるか?」

「はい」


 おいおい! マジか!? バーランは無駄な抵抗とかしない奴とか言ってなかったか!? いきなり貴族を人質にしようとしてるじゃねえか! 結局こうなるのかよ!


 俺は渋々、剣を抜いて構えた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


これからも是非よろしくお願いします!

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