104.絶対に付いてくる女
最後の肉を口に運び、麦酒で流し込んだ。
レヴィアラと二人でやって来た酒場での食事を終えて、追加の麦酒を飲みながら改めて明日のネルアリアの依頼を受けるかどうかを考えていた。
向かい側に座るレヴィアラも食事を終えて、所在なさげに食事用のナイフを指で回していた。
「なあ。何回も聞くけど、明日の依頼を受けたらお前も付いて来るんだよな?」
「そのつもりだけど、やっぱりイヤ?」
「そうだな。受けるんなら出来れば一人で受けたいと思ってる」
「そっか……」
寂しそうな表情を見せるレヴィアラ。
黙って澄ましていればかなりの美人なのだが、時おり見せるあの病的な笑顔と、超冷徹な目が強過ぎて素直に美人だと受け入れられないんだよな……。
すると何かを思い出したように鞄を漁り出すレヴィアラ。取り出したのは薄灰色の小さな石がチェーンに繋がったアクセサリー。
チェーンにはベルトに取り付ける為のリングが付いていた。
「ラドウィン。これを受け取ってくれたら、今回が最後にする」
そう言ってそのアクセサリーを俺に差し出す。
「これは……魔道具か?」
「そう」
俺に渡した物と全く同じアクセサリーを持つレヴィアラが微笑む。
「これは頭領との連絡用に使っていた魔道具。こうやって少しだけ魔力を込めると……」
レヴィアラが握っている石が淡い赤色の光を放つ。同時に俺が持つ石も同じように光る。
「この二つは繋がっているの。お互い呼び出したい時にコレを使っていたの」
前にネルアリアが盗賊団のアジトで使っていた指輪と同じような物か。あの時も離れた装飾品を光らせていたもんな。
「今は距離が近いから分かりにくいけど、お互いの位置も何となく分かる優れものよ」
「なるほど……でも何故これを俺に?」
「ワタシが必要になったらこれを使って呼んで欲しい」
「そういうことか」
「で、ワタシがラドウィンとヤりたくなったらこれで呼ぶから」
「ぶっ……、お前……」
「あははは……ウソウソ。でもこれならお互い必要な時に呼べるでしょう?」
「まあ、そうだけど……」
俺がレヴィアラを必要になる時なんてあるだろうか? だがこれを持っているだけでストーカー状態のレヴィアラが俺から離れてくれるんなら別にいいかと思う。
「分かった。じゃあとりあえず持っておく」
「うん。遠慮せずに呼んでいいから。ワタシは絶対にすぐに来るから」
そう言って微笑むレヴィアラ。
「でも明日の依頼は付いて来るんだよな?」
「うん。でも最後にするから」
「別に付いて来なくてもいいんじゃないか? わざわざ王都まで行かなきゃならないんだぞ?」
王都までは三日ほどかかる上にネルアリアは今回の件は出来るだけ穏便に話を進めるつもりだと言っていた。だから絶対に戦闘になって危険だというわけじゃない。
すぐに答えないレヴィアラが真剣な表情で俺に目を向ける。
「ちょっと……イヤな予感がするんだよね」
「イヤな予感?」
「ワタシのこういう時のこういう予感って意外と当たるの」
「ほう」
「だから今回は絶対に付いて行く」
女の勘ってヤツだろうか。
どちらにせよレヴィアラの意思は固い。どう説得しても諦めさせるのはちょっと難しそうだ。
「王都の貴族ってラドウィンが思っているより厄介だからね」
「貴族を知っているのか?」
「貴族絡みの仕事は何回か、ね」
レヴィアラが真剣な表情で応える。
殺し屋の時に関わりが多少あったみたいだな。貴族なんてものは俺には無縁の人種だからね。その辺りは分からないが、レヴィアラは俺にくっついていたいというより、依頼を受ける俺のことを本当に心配しているような気がする。
「分かった。じゃあ今回が最後だ。これが終わったら俺に付いて回るのは止めてくれるな?」
「うん。約束」(でも遠くから見てるのは駄目じゃないよね?)
「? 何か言ったか?」
「ううん。何も」
「破ったらこの魔道具も捨てるからな」
「…………うん」
少し間が空いたのと、何かボソボソ言ったのが気になるけど、まあいいか。
俺は結局明日のネルアリアを受ける事にした。
一人でのんびり魔晶石拾いをしていたいが、それが今回の件が絡んだ魔力龍脈の乱れのせいで脅かされているし、ネルアリアに付いて行くリューラが心配だというのもある。
盗賊団のアジト突入から始まった一連の件が、今回の魔力龍脈の乱れという事象に繋がっていたんだから、俺も最後まで関わらないと駄目か、という気持ちになったというのもある。
でもまあまずは、今回の依頼はネルアリアが穏便に収めてくれるのを期待する事にしよう。
次の話から新章になります。
引き続きよろしくお願いします。
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