103.元殺し屋は狂犬?
冒険者ギルドで魔晶石を換金してもらう頃にはもう外はだいぶ暗くなっていた。
さて、今日の晩メシはどうしようか?
とりあえずギルド以外の酒場にでも行こうかと外に向かう。
そして当たり前のように付いて来るレヴィアラ。
「もしかして一緒にメシに行こうとしてる?」
「駄目? 大丈夫。ご飯一緒に食べたらすぐに帰るから」
こいつ基準で何が大丈夫なのか分からんが、まあ今日一日一緒にいて特に変な事も言わなかったしメシぐらいは別にいいか。
突き放すのは簡単だけど、それはしない方がいいような気がするし。
すっかり暗くなった町を、二人で酒場を目指して歩く。
「よう。ちょっといいか?」
声をかけられて俺とレヴィアラが振り返る。そこには冒険者の男三人組。
「そんなおっさんじゃなくて、俺達とメシ行かねえか?」
「俺達と行く方が楽しいぜ、姉ちゃん」
ギルドから尾けられているのは気付いていたけど、やっぱりレヴィアラをナンパするのが目的だったか。
三人組は俺達を囲み、俺に分かりやすいくらいの圧をかけてくる。
こいつら、俺がミスリルランクって分かってんのかな? それか舐められてる?
一番体のデカい男が俺に近付き、更に圧をかけてくる。
「おっさん。いいだろ? お前みたいなシケたおっさんには勿体ないからよ。俺達が連れてくぜ」
「お前、一人で石拾いばっかしてるおっさんだろ? 恥ずかしくねえの? ミスリルのくせによ」
好き放題言って、笑う三人組。
まあ、本当の事だし別に俺は恥ずかしいとは思ってないからいいんだけどね。
「あー……君たち。この娘と遊びたいんだね?」
「あ? おう」
「じゃあどうぞ。連れて行っていいよ」
「へ?」
呆気に取られる三人組がお互いに顔を見合わせる。全く抵抗する素振りもない俺に戸惑いつつも、顔がニヤつき出す男達。
「じゃあ、姉ちゃんよ。おっさんもこう言ってる事だし、俺達と行こうぜ」
ジト目で男達を見回した後、俺に目を向けるレヴィアラ。俺が肩を竦めると、レヴィアラがニヤリと口角を上げた。そして男達に妖しい視線を戻す。
「へぇ~。三人でワタシを楽しませてくれるの?」
「ああ。そのおっさんより俺達と一緒の方が楽しいぜ」
レヴィアラの口角が更に歪に吊り上がった。そして妖しく細めた濃灰色の瞳が男どもの顔を舐めるように見つめる。
「そう? もちろんアッチの方でも楽しませてくれるのよね?」
「アッチ? お、おう。もちろんだ」
「へぇ。それじゃあ、すぐにでもお願いしたいわぁ」
「す、すぐに?」
「ええ。駄目?」
「お、おう。いいぜ、なあ!」
いきなりぶっ込んでくるレヴィアラに驚きながらも、欲望に抗えない男ども。一人の男が欲望丸出しで、レヴィアラにだらしない顔を近付ける。レヴィアラの艶かしい動きの指がその男の顎を撫でる。そして囁くようにレヴィアラが口を開く。
「こんな所じゃ目立つから向こうに行かない? 三人同時でいいわよ?」
「ど、同時で!? お、おう!」
俺の存在などすっかり忘れて、レヴィアラが導く路地裏に付いて行く三人のゲスども。
意味はないかもしれないが、一瞬目が合ったレヴィアラに殺すんじゃないぞ、と念を送る。少し狂気を感じる笑みを返すレヴィアラ。
三人の男とレヴィアラが俺を置いて、通りから離れた路地裏へと消えて行った。
さて……たぶんレヴィアラならあんな小物の男どもにやられるとは思わないけど、逆にやり過ぎないかちょっと心配になってきた。俺のやり方もちょっとズルかったかもしれないな。
少し経ってからそろそろ頃合いかと思い、路地裏の方へ様子を見に行く。
路地からそっと覗くと、男を罵倒する低く抑えたレヴィアラの声が聞こえてくる。
「アンタ達みたいな汚いゴミカスはワタシ達に気安く声をかけないでね? 分かった?」
「う……あ、あぁ」
「え? 聞こえない? 返事も出来ないの? ゴミカス」
「す、すいや、せん……」
二人の男は地べたに倒れ気を失っていた。一番俺を煽っていたデカい男は顔中をアザだらけにされ、レヴィアラに壁ドンされている。
どうやら三人ともボコボコに殴られた上にイチモツをレヴィアラに強打されたらしく、地べたに転がる二人も、壁ドンされている男も全員情けなく股間を押さえていた。
更にレヴィアラの罵倒は続く。
「ゴミカスが一丁前に盛ってんじゃないのよ。今度ワタシの前に現れたら、ここにぶら下がってるその貧相なモノ……切り落とすからね? 分かった?」
「ひ、ひいぃっ」
「きったない声ね……返事は?」
「は、はひぃ!」
鞘に収まっている刀で股間を小突かれた男が悲鳴のような返事をする。
俺にも思わず股間に冷たい感覚が走る。なんとも恐ろしい脅迫だ。
路地から覗く俺に気付いたレヴィアラが壁ドンしていた男の頭に一撃食らわせて、気絶させてから俺の元へと寄ってくる。
「終わったよ、ラドウィン」
「お、おう」
「これで良かったんだよね? それとも殺しておいた方がよかった?」
「駄目駄目! 殺すのは絶対に駄目!」
振り返りそうになるレヴィアラを慌てて止める。
やっぱりヤバいなコイツ……。
ニッコリと微笑むレヴィアラがさっきの声色と違って澄んだ声で話し出す。
「さて、ゴミ掃除も終わったし、ご飯に行こっか?」
「そ、そうだな」
まだ何となく俺も股間に肌寒い感覚を覚えながら、二人で通りの方へと戻って行った。
とりあえずこいつはあまり怒らせないようにしよう。あの罵倒と仕打ちは怖すぎる。
そう俺は心に誓うのだった……。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
ブックマーク、☆評価はいつでも大歓迎です!




