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9話:鳥、ふたたび

「――(わり)ぃお前ら!オレ様の寝坊でお前らの遅刻が決定したッ!」

「「⋯⋯⋯⋯はぁぁぁぁあ!?」」


 それは今朝、シルたちの泊まる客室の窓からオレンジのクチバシを持つ鳥が飛び込んできたときのこと。


「⋯⋯⋯うるさいわね、どーしたの?」


 隣の部屋の窓から歯ブラシを構えたマイニーが顔をのぞかせるが、「すまねえ、大事な日にすまねえとは思ってるんだ。 まさか昨日ライガーのやつに借りた本があんなに面白いとは⋯⋯ッ!」


「「ぜんぶあんたのせいじゃねえかよッ!」」


 ぽんっと人化したワシードがツッコむ二人をスルーして「とゆーことでマイニー。生徒会長の夢は諦めてくれ」


「そんな夢言ってないけどッ! 入学前から遅刻しているってのはわかったわよぉぉぉぉぉッ!」


 ふう、マイニーが隣室でよかったぜ、と窓枠に座って汗をふくワシードにヒョンとシルのドロップキックが炸裂したところで、三人は急いで廊下に出た。



「そー慌てんなや。 一分も一時間も遅刻にゃ変わんねえって」


 その事実は決して消えない――前科乙っ!とほざく鳥姿のワシードをロープでぐるぐる巻きにして会場まで先導させる三人。


「ふっざけんじゃないわよっ! 会場に着いたら全部あんたのせいって大声で言ってやるんだから!」


「言い訳は女々しいぜお嬢ちゃん? んなことすりゃ白い目で見られんのはおめーらのほうだろーな」


 けっけっけ、おっと女々さんでしたくわぁ――?とクチバシを尖らす鳥。マイニーからプチっと何かが切れた音がして、鳥が身震いした。


「さ、さてジョークはこのあたりにして見ろ、ここが大ホールだ」

 

 マイニーが片目を押さえると同時、大きな扉の前で鳥が止まった。鳥は扉に耳を当てる。それからシルたち三人に「無駄口はここまでだ、静かにしろ」と、声をひそめてささやく。


「いいか、五列並ぶテーブルの左から二番目がお前らの寮だ。 なかは司会進行のミルフィーネ待ちってところだからバレないようにそっと自分の寮の席につくんだぞ。 いいな?」


 オレ様だって反省してるんだ、注目浴びたくないだろ?出来るだけ目立たないように席につけ、とワシード。


「う、うん」「鳥お前⋯そんな真面目な顔もできんだな」「まあ、目立ちたくはないわね」


「――よし行け!」


 三人がうなずいたとき、ロープで巻かれた鳥が、扉にドロップキックした。


 ――バンッ!と大きな音を立て、入学式会場の扉が大きく開く⋯。


「おい」「鳥」「あなた」


「ケェーーーーッケッケッケエーーーーーッ!」


 全校生徒の視線を浴びた三人がそこを見たときには、ロープを切り裂いてツバサを広げた鳥が「アディオス! アスタラビスタベイベー!」っと飛んでいく姿。


「「「クソったれ鳥ヤロウがァァァァァッ!」」」


 全校生徒の白い目が、三人を冷たく射抜いた。



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