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― 第0節:無音の海 ―
それはまだ、
世界が「まだ、何にも問われていなかった頃」のこと。
空はなかった。
光もなかった。
時間すらも、まだ息をしていなかった。
あるのは、音さえ許されぬ沈黙。
無でもなく、混沌でもなく、ただ「語られていない可能性」だけが漂っていた。
しかしその深奥で、ひとつの震えが生まれた。
それは誰にも気づかれぬほど微かな揺らぎ。
けれど、それこそが――
宇宙の最初の問いであった。
なぜ在るのか。
何が始まるのか。
その問いが、やがてかたちを持ち始める。
“問い”は“声”になり、
“声”は“存在”を呼び寄せる。
そして三つの意識が、闇の内から目を覚ました。