探し物
カルーアのところに連れて行った二人を尋問してわかったのは、
「い、異世界人がここらに居るから、この道具を仕掛ければ異世界人の持つ特殊な魔力を感知して居場所を突き止められるって言われただけだ!」
「俺らはただ、異世界人探しって理由とこれを仕掛けるって事しか知らねえよ!」
という事だけ。
「君らにそれを依頼したのは?」
「……髪の長い男」
「多分、上の方の立場だ。裏にも精通してるっぽかったが、動きが上流だった」
「他にソイツの情報は?」
「私の主がその異世界人を探していてね、とは言ってたが、それ以上は知るか!」
「本当に俺達は何も知らねえんだ!」
「うんうんそっか、やって良し」
カルーアがそう告げると同時、片方をサムライロックが、もう片方をミスサイゴンが一撃で意識を刈り取っていた。
「これ以上取れる情報も無さそうだね。まあこれらは素材としてティガに売り払うとして」
つまり命あるまま帰す事も無く髪の毛も臓器も血液も何もかもを売り払うという事だが、何も知らされていないとはいえ喧嘩を売っちゃ駄目なところに喧嘩を売ったのだから致し方あるまい。
「髪の長い男、かあ。またリッツァに聞きにいかないと。マリンスノー、一緒に来る?」
「ええ」
「オッケー」
立ち上がり、カルーアはサムライロックとミスサイゴンを見る。
「その二人、ティガのところに運び込んで売りに行っといてくれる? 分け前は5:5ね」
「あらぁ、デートのセッティング?」
「そのつもり」
「でっ、でで、デ!?」
ミスサイゴンはクスクスと笑って、見るからに狼狽した様子のサムライロックに腕を絡めた。
「帰りに連れ込み宿でも寄る? うちはサムライロック相手なら良いわよぉ」
「ヒエッ!? や、その、で御座るな、さ、ささ、誘いはその、大変嬉しく思うので御座るが心の準備が、その、アレで御座るのと、ええと」
顔どころか耳や首まで真っ赤に染め上げながら、ミスサイゴンに向き合いサムライロックが言う。
「……こ、ここ、此度の一件が解決したらば、せ、拙者の方から、ミスサイゴン殿にお誘いをさせて頂きたく」
「そう」
ミスサイゴンの目がキュゥッと細められ、口元には満足げな笑みが浮かんだ。
「じゃ、今回はお預けねぇ。早めに解決するよう祈ってるわ」
でも、とミスサイゴンはサムライロックの胸倉を掴んで足を引っかける事でカクンと膝を付かせ、目線の位置が逆転したサムライロックを見下ろしながら笑みを深める。
そのまま、ミスサイゴンはサムライロックの唇に自身の唇を軽く重ねた。
理解が追い付いていない様子のサムライロックに目尻を緩め、ミスサイゴンは硬直しているサムライロックの唇を舌の先端でちろりと舐める。
「あんまり遅いと、またこっちから誘うわよ?」
その言葉に、サムライロックは無言のまま顔を先程以上の赤に染め上げ、後ろにくたりと倒れ込む。
風俗嬢の子として産まれたとは思えない純情さを持つサムライロックには色気が強過ぎたらしく、目を回して気絶していた。
元々そこらを歩いている風俗嬢が際どい恰好しているのにも赤面する程なので、惚れた相手からの積極的なアプローチともなれば許容範囲を軽くオーバーしたらしい。
「じゃ、後は任せて僕らは行こっか」
そしてそんな有り様を見ながらカルーアはあっさりとそう言った。
からかうでも無ければ心配するでも無い辺り、心配は無用だと確信しているのだろう。