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段取り編43 行き当たりばったりな段取りの果てに

 新年明けましておめでとう御座います。

 本年も宜しく御願いします。


 出発日前日、絶賛荷物のパッキング中、Wi-Fiの受け取りで私だけラウンジ入場が後回しになってしまう事が判明して、へこんでしまう時間も惜しいもんだから、着々と準備の方を進めなければならない。


 何せ今午後11時半で、後4時間後には起きていて、5時間後にはここを出て行かなければならないって、いやはや今までの準備って何だったの?って思わずにいられない体たらくなのだ。


 となれば、準備する方も『修羅場モード』突入するのは当然な訳でして・・・


 「ええっと、下着の上&Tシャツは8枚と下着の下が6枚、それをまとめる頭陀袋が3枚っと、それからぁ・・・」


 とバタバタしていると、


 「はい、君とあの子の分の上と下の下着がこれね。纏めておく袋と、洗い物を入れる袋はこれね」

 

 とさながら女神の様に思える妻から下賜されるエリクサーのごとき『こんなこともあろうかと』な準備を与えて頂いて、


 「マジか、感謝の極み」


 と思わず感謝の念が言葉になってしまったのも、当然の話であろう。


 「それとぉ、ウェットティッシュとか、アルコールスプレーでしょ。後は虫よけシート、虫刺されの薬、汗拭きシート、ティシュペーパー、ハンカチ代わりのハンドタオル一式と首から巻けるタオル一式とぉ・・・」

 「貴方の心に五体投地」

 「でもってぇ、歯ブラシ&歯磨き粉&フロスでしょ、それと綿棒、爪切、毛抜き、ガーゼ、テープ、ハサミ、絆創膏各種、鎮痛解熱剤、抗ヒスタミン剤、下痢止め、胃薬、咳止めと総合感冒薬、目薬、抗生物質軟膏、酔い止め、日焼け止め、それと向こうのホテルでのアメニティがアレだった時の為の保険でシャンプー、リンス、ボディーソープ・・・ああ、液体系は全部小さなボトルに入れ替え済みで全部ボトルに名前書いといたからね。それを纏めて透明ジップロックに入れてあるから丸ごと手荷物に持って行ってね」

 「来世も貴方の卑しい下僕としてかしずかせて下さい」

 「うん、そういうの良いから君も手ぇ動かそっか」

 「へぇ~い」


 と言うアホなやり取りをしつつ、両人のスーツケースとショルダーバッグにそれぞれのアイテムをしまい込む。


・ToDoリスト「出発日前日、荷物等をチェックリストを用いて妻とダブルチェック」


 を一緒に確認して最終的にまとまった所持品リストは・・・


・ショルダーバッグ>『パスポート』『ESTA渡航認証のコピー』『航空券(eチケットの控え)』『海外旅行保険証のプリント』『ジャズクラブ、ヘリツアー、ディナークルーズのチケットプリント』『各種メインイベント、サブイベント情報記載のプリント』『旅のしおり』『クリアファイル多数』『筆記用具』『NYの地下鉄路線図プリントアウト』『NYのバス路線図プリントアウト』『ボストンの地下鉄路線図プリントアウト』『ボストンのバス路線図プリントアウト』『ボストンフリーダムトレイルルートプリントアウト』『ハーバード大周辺拡大図』『MIT周辺拡大図』『3人分のパスポートコピー』『地球の歩き方』『折りたたみ傘』『ウインドブレーカー』『帽子』『財布(日本円)&クレジットカード』『財布(米ドル)』『ビニール袋大小複数枚』『45Lのゴミ袋複数枚』『予備のメガネ』『タオル数枚』『マスク複数』『ポケットティッシュ』『ウェットティッシュ』『虫よけシート』『汗拭きシート』『綿棒』『爪切り』『毛抜き』『ガーゼ』『テープ』『絆創膏各種』『鎮痛解熱剤』『抗ヒスタミン剤』『下痢止め』『胃薬』『咳止め』『総合感冒薬』『抗生物質軟膏』『酔い止め』『歯ブラシ』『歯磨き粉』『フロス』『スマホ充電器』『電源タップ』『変圧器』『Wi-Fi(当日レンタル予定)』


・ショルダーバッグ内透明ポーチ>『アルコールスプレー』『日焼け止め』『虫刺され薬』『目薬』『シャンプー』『リンス』『ボディーソープ』


・スーツケース>『スーツケースベルト』『携帯折り畳みトートバッグ3枚』『ビニール袋大小複数枚』『45Lのゴミ袋複数枚』『ハサミ』『筆記用具』『インスタントスープ』『ティーバッグあるいはインスタントコーヒー複数』『マスク30枚程度』『ポケットティッシュ複数』『ウェットティッシュ複数』『下着上下日数分+3日』『くつ下日数分+2日』『Tシャツ日数分+3日』『タオル日数分+3日』『タオル地ハンカチ日数分+3日』『ジーンズ(これは当日履いていく)』『綿パン』『ボタンシャツ3枚』『ジャケット』


 これでも、スーツケースはスカスカなので、今回の旅行でまあまあ嵩張るお土産を購入したとしても、問題無く収納出来るだろう。

 

 これでようやく寝ることが出来る。

 ・・・2時間位だけど・・・

 何かもう最後までバッタバッタなのは仕様なのかしら?


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 今までがあっという間とは言うつもりは無い。

 むしろ長すぎて世界も我が家も色んな事があり過ぎた。


 父が大病を患った。

 外科手術による摘出後もリハビリが長く続いたし、今でも定期的な検診が欠かせなくなっている。


 コロナ禍が世界を覆い会社も多大な損失を被った。

 世界経済全体が止まってしまい、各国政府が大規模な金融緩和政策を行いその副作用としてのインフレに苦しめられていた。

 人々のコミュニケーションもコロナ禍を切っ掛けに大きく様変わりしてしまった。

 様々な祭事や催事も制限を受け、担い手に対する技術や情報や伝統の継承、と言う面でもハンデを背負わざるを得なくなった。


 一方的なロシアの侵略に端を発した宇露戦争も既に1年以上経過しているが、戦線は膠着気味で外交での解決の糸口すら見いだせない状況に陥っている。

 戦場においては様々なドローンが使用され、毎日恐ろしい物量の砲弾が消費され、戦争の概念が劇的に変化したと言われているのだが、その辺りに関しては不勉強なので良く判らない。


 企画立ち上げの時に中学生だった息子は今では大学生となって、毎日それなりに充実した学生生活を送っている。

 あの頃はまだ小さくチンマリとしていたのが、人並み平均の身長になり私の背丈を若干とは言え超える事になった。


 あの時から。


 「来年アメリカに行くから、もろもろ手配しなさい」


 とあの時の父から今回の旅行に関する企画立案を無茶振りされたあの日から4年の歳月が流れた。

 あの日から始まった企画が、私達3人による3世代の旅がいよいよ始まる。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 3時半の目覚ましが鳴った瞬間、2時間程度しか寝ていないのに一瞬で目が覚め直ぐに目覚ましを止める事が出来た。

 何か気持ちが高ぶっているのかもしれない。


 起床後、トイレで用を足し、洗面所で洗顔&歯磨き&髭剃りを済ませる。

 冷蔵庫から麦茶のジャグを取り出し各人のコップに注ぐ。

 仏壇の扉を開け、ライトを点け、花の水を交換し御先祖様に朝の挨拶を済ませる。

 毎朝起きてから行う私のルーティン。


 何時もだったらここから自分の分の朝のお茶を飲んでから息子の部屋に行く、と言う流れなのだが今朝は息子も彼自身の目覚ましを使っていたので同時刻に目を覚ました。

 とは言え朝が弱い彼の場合は、起きて来ていてもさながらゾンビの如くあっちにフラフラこっちにユラユラしていて、どうにもポンコツで使えない状態なのだ。


 「おい、オメェの分のコンタクトのセットちゃんとしまったのか?」

 「・・・・・・おぉ・・・」


 大丈夫かオイ?

 少なくとも俺よか睡眠時間が多いんだからちゃっちゃとシャッキリして貰わなければ困る。


 「さっさと顔を洗えし」

 「・・・・・・んぁ・・・」


 と返事らしい返事も出来ずにフラフラと洗面所の方に行く。

 ダメだこりゃ。全く使いもんになんねぇ・・・


 その間、今朝まで充電していた携帯の充電器をバッグに仕舞い、チェックリストにチェックを入れ、スーツケース2個を玄関の方に出し、自分の着替えを行う。

 とは言え、靴下履いて、ズボンを履いて、Tシャツ着て、腕時計付けて、鍵と財布ポッケに入れてマスクとハンカチ、ティッシュを尻ポケットに入れたらもうお仕舞なので、殆ど時間もかからないのだ。


 だから、ゾンビから徐々に人間にクラスチェンジしていく息子がモッタラモッタラしている間にやる事を終えた私は携帯で昨日の相場を確認する事にした。


 大体円ドルチャートは143円台半ばでウロチョロしている。

 先月は138円台まで行ってたんだがなぁ・・・


 今朝のS&P500は・・・4500を割っている様だな・・・だが年初3800台だった事を考えたら年初以降で18%も上がっているので、7カ月のパフォーマンスとしては驚異の『ブル相場』となっている。

 ありがたや、ありがたや。

 今回の目的地の一つにチャージングブルもあるので、天候次第だが機会があれば行って更なる御利益にあやかりたいものである。


 やがて、ゾンビからまあまあポンコツな人間にクラスチェンジ済な息子がダイニングにやって来て注いでいた麦茶を一気に飲み干す。


 そうこうする間に時間ももう4時15分近くになっていた。

 その頃にはバタバタしている音に起きてしまった妻もリビングダイニングに顔を出す。

 勿論『寝癖で爆発頭もカワユス』とか口走る事は絶対にしない。

 家内安全は絶対正義なのだ。


 息子もエッチラオッチラと着替えてショルダーバッグを持って来た。


 「んじゃぁ、そろそろ行くか」

 「ん」


 双方ショルダーバッグを背負って玄関に向かう。

 その後を妻もついて来てくれた。

 履き慣れた運動靴を履こうとしたら、両方にキチンと魔法の粉が掛かっていた。


 「粉、ありがとねー」

 「いえいえ、忘れちゃったら玄関が臭いでドエライ事になっちゃうからやっておかないと」

 「・・・そんな酷いっけ?」

 「大体臭いの元凶って同じ事言うんだよねぇ・・・」

 

 とあきれ顔で彼女が言う。

 うん、なんか、サーセン。

 正直彼女には頭が上がらない事が多すぎる自覚はある。

 だからと言って改善が出来るのか、となるとそれはまた別の話なのだが・・・


 玄関を出たらもう空は白んでいた。


 スーツケースをゴロゴロ転がし、エレベーターの所に移動しボタンを押す。


 ふと悪戯心が湧いて出て、一緒に見送りに来ていた彼女に


 「ねぇねぇ、いってきますのちゅ~はぁ?」


 と言いながら口をタコさん状態にしチュパチュパ音を鳴らす。


 そんな私の姿に彼女は破顔し


 「・・・バァカ」

 

 と言って苦笑して、そんな2人のやりとりを息子はあきれ顔で眺めている。


 こんな瞬間が多分我が家にとっての『幸せ』な時間なのだと思う。


 やがて、エレベーターが来て扉が開く。

 2人がスーツケースと共にエレベーターに入り振り返る。


 「じゃあ・・・いってきます」


 と私が言い、


 「いってくる」


 とぶっきらぼうに息子が言う。

 要は照れくさいのだ。

 それに対して


 「いってらっしゃい」


 と彼女が微笑みながら手を振る。

 次の瞬間にはエレベーターの扉がゴトンと閉まった。


 微笑みながら手を振る彼女の姿(頭がまあまあな寝癖つき)が何時までも私の脳裏に残った。


修羅場モード>私の世代では「コミックパーティー」だったりします。勿論更に上の世代にとっての『修羅場モード』の別な引用元もあれば、更に下の世代にとっての『修羅場モード』な別の引用元な作品もあったりで、何時の世も創作活動の締め切りは似たり寄ったりだったりするんですよねぇ(遠い目)


こんなこともあろうかと>汎用性の高い技術者なら一度は言ってみたいセリフのトップランカーですね。

 汎用性が高すぎるので、古今東西様々な作品で出て来ているので、老若男女でどの作品からですか?と聞くと様々な作品名が出て来るセリフでもあります。

 ハイ、私の場合はヤマトの真田さんですね。


今朝のS&P500は>まさか2024年末には6000台に到達する上昇相場になるとは、この時はどんな楽観派のインベスターでも予想していなかったんですよねぇ・・・だって2年で50%以上のブル相場ですよ?普通インベスターがそんな予想したら他の市場関係者から鼻で嗤われますって。

 逆も叱りなので、正に市場の神は理不尽で無慈悲で誰も予想が出来ない存在なんですよ。


 えーっと、今回で『段取り編』が終了となります。

 いやぁ・・・長かったなぁ。何でこんなに長くなっちゃったんだろう?

 書いてる本人がビックリしている体たらくで、スケジュール&タスク管理ズタズタで一体全体何だかなぁって感じです。


 さてはて、次回から最終章である『洋行記編』になるんですが・・・


 誠に申し訳ありませんが、2つの理由で再開予定が2025年7~8月位になります。


・言い訳その1>単純にストックが全部きれいさっぱり無くなっちゃって追いつかれちゃったんですね。

 ええ、オメェどんだけ執筆スピード遅いんだよって石投げられそうでアレなんですけど、このお話実は23年8月に帰国して直ぐに書き始めていたんです。

 である程度書き溜めていたんですけど、何だか毎週毎週着実にストックが消費されていくのに書く方が全くこのスピードに追い付く事が出来ずに、ここに来て完全に追いつかれちゃったんですね。

 実はこれ書いてるのも12月も30日になってですから、まあ、完璧にストックが無くなってしまってどうにもならんのです。こればっかりは誠に申し訳ありません、としか言い様が無いです。


・言い訳その2>これまた個人的な話なんですけど、25年2月にちょいと病院の先生に『君と夜明けのコーヒーを飲みたい(超意訳)』って話になっちゃって、その前後2月初旬から3月中旬位までなーんも出来なくなっちゃったんです。

 まあ、別に大病患ったって話では無いんですけど、やっておいた方が良いよぉって事で入院&手術を受ける事になっちまった訳ですね。


 ですんで、この時期は書き溜める事も一切出来ないので、実質書き溜めのスタートが1月にちょろっと、と後は3月も終わり位になってからになるんで、で上記の様に25年7~8月位には何とか辛うじてお見せ出来る位にまで書き溜め分が積み立て出来るかなぁ、なってくれたらいいなぁ、と淡い期待を持っていたりしています。


 最終章である『洋行記編』は正直『段取り編』以下のボリュームになります。なるはずです。つかならないと私が死にます。


 内容的には、『段取り編』で色々苦労して作った段取りが面白い位に現地で瓦解して正に行き当たりばったりな展開になって頭抱える私、って話になります。

 そんな姿をゲラゲラと御笑読頂き、こんな人になっちゃいけないよ、って警句にして頂ければ幸いです、


 まあ、7~8カ月もすればそもそも皆さまお忘れになられるんだろうなぁ、と思いつつも再開の折にもしも御笑読頂ければこれに勝る幸いは御座いません。 

 

 2025年が皆様にとって、ついでに私にとって良い年になる事を祈念してこの章を終わらせたいと思います。

 皆様、御笑読、誠に有難う御座いました。


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