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段取り編32 義理も人情もタダじゃない

 ようやく段取りが終わろうとした瞬間に息子からニューヨーク大のブックストア、と言うリクエストを頂戴し、自身の運の賽の目の悪さ(ファンブル)さ加減に辟易した翌日の夜、ネットでニューヨーク大のブックストアを調べてみる事にした。


 所在地が726 Broadway, New York, NY 10003となっていて、場所的にはワシントンスクエア公園の近く、今回予定しているイベントのエリアで言えばソーホー地区とユニオンスクエア公園の大体中間地点、最寄り駅的にはR、W路線の8 St-NYU駅、そして6路線のAstor PI駅になる。


 注意点があるとすれば営業時間になるだろうか?

 丁度9月から始まる新学期に合わせる形で営業時間とか拡張してくれていればラッキーなんだが・・・

 調べてみると、私達がニューヨークに行く8月10日から13日に関しては、

 月曜日から金曜日までがAM9:00~PM18:00まで、

 土曜日がAM10:00~PM17:00まで、となっていて日曜と祝日がお休みとなっている。


 って事は11日金曜日か12日土曜日のどちらかに行く必要があって、11日金曜日の場合夕方には国連ツアーが設定されているから、同日に可能性がある場合午前中だけ、となるだろう。

 雨天であった場合は、午前中にアメリカ自然史博物館を組み込んでいるから、そこから移動、と言う形で容易にセッティング出来るはずだ。

 問題は晴天の場合。

 このケースだと、朝からマンハッタンブリッジ&ブルックリンブリッジ踏破>ダンボ地区散策、ロウアーマンハッタンへ移動&同地区散策>911と言う流れになっているから、恐らくエリアが違うブックストアをスケジュールにねじ込む時間的余裕は無いと思う。


 では12日土曜日の場合はどうだろう?

 この日から分岐ルートが複数になるから、それぞれのルートについて考える必要がある。


 朝・ユニオンスクエアグリーンマーケット>グランドセントラル駅>ノースフェイス&ナイキでのショッピング>ブライアントパーク、ニューヨーク公共図書館、ロックフェラーセンター、セントパトリック大聖堂、サミットワンヴァンダービルトかトップオブザロックで高層ビル展望台イベント消化(晴天時その1ルート)

 朝・ユニオンスクエアグリーンマーケット>スモーガスバーグ>ユダヤ人街>ドミノパーク>ブルックリン地区でショッピング(晴天時その2ルート)

 朝・ユニオンスクエアグリーンマーケット>シティフィールド PM1:00~(晴天&千賀投手先発登板確定の場合)(晴天時その3ルート)

 朝・アメリカ自然史博物館>グランドセントラル駅>ノースフェイス&ナイキでのショッピング>ロックフェラーセンター、セントパトリック大聖堂>サミットワンヴァンダービルトで高層ビル展望台イベント消化(雨天時、11日にアメリカ自然史博物館カードを切っていない場合ルート)

 朝・メトロポリタン美術館>グランドセントラル駅>ノースフェイス&ナイキでのショッピング>ロックフェラーセンター、セントパトリック大聖堂>サミットワンヴァンダービルトで高層ビル展望台イベント消化(雨天時、11日にアメリカ自然史博物館カードを切っている場合ルート)


 スケジュール的にはやっぱり雨天のケースが楽に組み込めそうだ。

 どちらのケースでも問題は無いだろう。


 晴天時に一番楽なのが「晴天時その3ルート」だろう。

 グリーンマーケットイベント終了後にシティーフィールドに行く前にブックストアに寄ってお土産を購入後、一旦ホテルに戻り購入したグリーンマーケットの『戦利品』とブックストアのお土産を置いておけば身軽にシティフィールドに向かえる。


 で晴天時セカンドベストは「晴天時その2ルート」のケースだろう。

 ルート3シナリオと同じ様にグリーンマーケット>ブックストア>一旦ホテルってルートで『デッキ』が組める。

 若干スモーガスバーグに到着する時間が押すかもしれないが、恐らく想定内の誤差で収まるだろう。


 で、一番難易度が高いのが「晴天時その1ルート」となる。


 ルートの内容から時間的に押す可能性の高い高層ビル展望台イベントを13日日曜日にスライドさせるシナリオが先ず考えられる。

 この場合、恐らく移動時間も含めても余裕でブックストアを組み込めるだろう。

 リスクがあるとすれば、13日のシナリオに高層ビル展望台イベントを組み込む事が『マスト』になるから、恐らくその場合晴天時にやはりイベント消化時間がそれなりに必要となる『ハイライン散策』イベントを切り捨てる必要が出て来る、と言う点か。

 あるいは、ブライアントパーク、ニューヨーク公共図書館、ロックフェラーセンター、セントパトリック大聖堂辺りの幾つかのサブイベントを捨てるパターンもあるかも知れない。

 その場合、どのサブイベントをどれ位捨てればブックストアでの時間を確保する事が出来るのか、その見極めが難しい点が問題となる。


 こればかりは、今から決め打ちをする、と言うよりも、現地でのイベント消化具合であったり、天候等の影響等を踏まえて、『高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する』と言う形で現地で判断するしか無いのだろう。


 大体こんな感じだろうか?

 

◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 「おーい、お友達から貰ったお土産は持って帰って来たのかー?」


 リビングでソファにゴロ寝しながら携帯ゲームに勤しんでいる「元凶」相手にブックストアで買うお土産のターゲットとする価格帯を見極める為の情報源である貰ったお土産の確認を求めた。

 ・・・へんじがないただのしかばねのようだ。


 「おーい、ソシャゲマニアの課金バカむすこやーい。オメェさんに聞いてんだよ、アホタレがぁ」


 と少し大きめの声でもう一度呼びかける。

 ゲームと同時に音楽聞いているのか、耳にエアポッツが刺さってる。

 すると、左耳のエアポッツを外しながら


 「何か言った?」


 とほざきやがった。

 コノ、クソガキめ。


 「うん、今回のニューヨーク大ブックストアに行くにあたって、どれ位の価格帯の土産を買うべきか実際に皆から貰ったお土産を確認しないといけないから今日持って帰って来たって言うお土産を見せてねって話」

 「・・・父さんなんかその前にゴチャゴチャと俺の悪口言ってたろ」

 「え~そんな事お父さんが言う訳無いじゃぁ~ん。大事な、大事な一人息子なんだからさぁ~」

 「・・・チッ・・・キメェ」

 「ウルセェッ!サッサと出せ、このバカむすこめっ!誰のせいで俺の手間暇増える羽目に陥ってると思ってんだよっ!オイッ!コノヤロウッ!バカヤロウッ!」

 「いやいや、親が息子相手にアウトレイジごっことかマジ萎えるから。・・・えーっと、俺の部屋の机の上にリュックが置いてあるから、全部その中に入ってるよ。やっぱりアレなの?同じ位の単価とか、そう言うの気にして買う方が良いもんなの?」


 と息子が尋ねる。

 へぇ、珍しい。

 普段そんな事気にもしない性格だと思っていたんだがね。


 「そらそうよ。例えば、高額なお土産とかを目上の方から頂いてしまった場合だと、速攻で御礼を返す必要があるけど、御礼自体は貰ったモノの価格帯のザックリ半額位で良い、って話がある。あくまでも目上の方相手だから金額を揃える必要は無いって事だろう。でもって、友人とか気を使わなくて良い相手であれば、お土産で返礼する場合貰ったモノとザックリ同じ位の価格範囲で収まるレベルのお返しがお勧めらしい。アホみたいに安いと軽んじられていると思われるし、先方だって『えーっ』て反応になるじゃん。逆にお土産のお返しで明らかに倍以上もする価格帯のお土産です、とか渡しちゃうと普通に先方に対して要らん気遣いをさせてしまうから逆効果だったりするケースもあるんだよ」

 「うわぁ、めんどくせぇな、そう言うの」

 「何言ってんだよ。人付き合いなんてのはなぁ、面倒事と厄介事が仲良くチークダンス踊ってる様なモンなんだぞ。世の中、義理も人情もタダってモンは基本無いんだよ。あるとしてもそれは『初回お試し』だったり、よくよく見れば『クーリングオフの無いリボ払い』だったりするのがほとんどだ。だけど、それを疎かにするデメリットとリスクは前々から何回何回も言い続けて来たからオメェさんでも理解出来るだろ?」

 「・・・()()()嫌なんだよ」

 「こっちの方でも貰ったお土産の価格帯とか大体の推測で測って置くけど、念の為オメェさんの方でも誰から何貰ったか、その価格帯がどれ位か今日中に調べて置けよ」

 「うぃー」


 とやる気の欠片も無い返事で、エアポッツを再び耳に挿し自分の世界に没入していった。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 息子の部屋の机の上にリュックは無造作に置かれていた。


 ただでさえ最近の勉強はベッドの上で色々な体勢で(時々アクロバティックな体勢で)iPadを使って行っているから、机に座って勉学に勤しむと言う生活からはとんとご無沙汰になっているからなのか、机の上や下、椅子回りや床に食い散らかしたお菓子のパッケージやら、シュリンクフィルムもまだ取っていない空きペットボトルやら、確実に中を洗っていない空き缶やら、学校の帰り道で色々買ったのだろうガチャガチャの空きケースやカードゲームの空きパックやらが、さながら『ゴミの品評会』の様にとっ散らかっている有様になっていて、


 「うわぁ、こら妻の『雷警報』が今日中にでも鳴り響くなぁ・・・」


 と思わず声に出てしまうレベルだった。


 リュックの中を広げると『お菓子の空き袋をクッション』にして無造作に土産物が放り込まれていて、それ等を机の上に散在しているゴミをどかしながら、一つずつ机の隅に並べていった。


 先ずハワイ大のトートバッグ。

 恐らくスクールカラーなのだろうか、コットン地の生地にグリーンの文字でハワイ大、とシンプルに書かれていた、使い勝手の良い一品。

 次はUCLAのトートバッグ。

 『UNIVERSITY of CALIFORNIA LOS ANGELES』と手書き風に書かれた青文字とその下に描かれている手描きの校舎やスタジアム、マスコットキャラクターと思われるクマの様なデフォルメキャラが可愛らしい。

 次は台湾大のバックパック。

 黒色の生地にデカデカと『NTU』と書かれたアイテムはシンプルイズベストな造りで、確かに台湾大のグッズ自体が珍しいだろうからある意味貴重なアイテムなのかも知れない。


 と、こうしてみると、殆どがバッグ類だった事に驚いた。

 と同時に確かに体のサイズ等の情報を得るのが難しいからだろうか、Tシャツの類は選択肢として入り難いのだな、とも思った。

 後、ワレモノになるリスクからか、陶製のコップ等が無かったのもなるほど、と得心した。

 確かにそういう意味ではバッグ類はスーツケースに仕舞う時にかさ張らないし、ワレモノでも無いし、コスト的にもお土産品として使って貰えるラインとしては実は良い選択肢なのかも知れない。

 パッと見の価格帯的にはザックリ20~30ドル位だろうか?


 部屋に持って行ったノートパソコンを立ち上げてニューヨーク大ブックストアのオンラインストアページを検索して、どの様な商品があるのかを確認する事にした。


 「NYU BOOKSTORE」でググるとブックストアのページのリンクが出て来た。そこから入るとニューヨーク大のスクールカラーは紫色な様でストアのページ自身が紫色で彩られていた。

 ブックストアの紹介ページの文章の一番最初に『The NYU Bookstore』と色分けされている部分があるから、そこをポチる。

 すると、『Official New York University Book Store Apparel, Merchandise&Gifts』のページに飛ぶ。

 ページの上部に『Search Keywords or ISBN』の表示があるから、その中に学部名を英語表記で記載、ポチる。

 そうする事で、その学部のグッズが展開されるから、後はソートで『Relevance』『Best sellers』『Newest』『Price Low to High』『Price High to Low』の中から選びソートする。


 先ずニューヨーク大のブックストアで取り扱いがある大学のグッズってそもそもアイテム数が日本の有名な大学と比較しても多い方だと感じた。

 特に驚いたのは息子が言っていた様に、運動系部活毎のグッズ、例えばバレーボールとかバスケットボール等のグッズであったり、学部毎のグッズ、例えばリベラルアーツとか法律学等のグッズが展開されている、と言う点だった。

 息子の大学でも委託販売と言う形でグッズ製造業者が幾つもアイテムを製造、販売しているのは知っていたが、少なくとも部活毎、学部毎にTシャツやパーカー、帽子の様なアパレルや、ポケット付きホルダーの様なステーショナリー、タンブラーの様な食器に至るまで設定されているって相当「ガチ」じゃねーか。


 価格帯も安いと一桁ドルから、上は300ドルオーバーまでと幅広く設定されている。

 まあ、大体の商品群の設定価格帯は15~30ドル辺りで収束されている様だ。


 となれば、今回お土産で頂いたグッズの価格帯とほぼ合致するだろうから、選ぶのにそこまで苦労は要らないだろう。


 お目当ての価格帯のグッズを調べてみると、キャップか、タンブラーがお勧めの様だ。

 価格帯も20~30ドルと言う枠内で収まる。

 ただ、持ち帰りと言う面だけで言えばキャップ一択の様な気がする。

 タンブラーだとスタッキングが上手く出来ないと相当かさ張る事が想像出来たからだ。

 まあ、この辺りは現地で息子と相談する事にしよう。


 何とか目処が立ったから、パソコンをシャットダウンする作業をしつつ、待ち時間に床や椅子回り、机の下やカバンの中に散らばっているゴミの数々を机の上に種類毎にソートしながら端からキレイに並べていく。結構量が多いから、お土産品はベッドの上に改めて置き直して、ゴミの仕分け&陳列作業を終わらせる。

 最終的に机の上に種類毎にキレイに整列させたゴミの大隊が完成した。

 うん、見事な仕分けっぷりじゃないか。

 我ながら良い仕事をしたな、うん。


 そうこうすると、


 「あーがーったよ~っ」


 と脱衣所の方からさっきまで風呂に入っていた妻の声が聞こえて来た。

 順番に風呂に入るから、次は俺の番だ。

 パソコンがシャットダウン出来た事を確認後仕舞い、風呂前のお茶を一杯引っかけて風呂場に向かう。

 脱衣所に入る時にパジャマ姿の妻と入れ違いになった。

 その姿は頭や肩からホッカホカの湯気が出ているかの様な感じで、心の中で思わず『あんまん』とか思ってしまった。

 絶対に言わんけど。


 「直ぐに入るだろうから、お風呂のふたは閉めて無いよ。もしお湯が温かったら、追い炊きしてね」

 「おお、ありがとねぇ。あ、そうだ」

 

 とダイニングに向かおうとする妻を呼び止める。


 「ん?どうしたの?」

 「うん、さっき俺の方でアイツがお友達から貰った土産物の中身を確認したとこだったんだよ。アイツの部屋の『机の上』に全部並べて置いたから、確認しておいてね」

 「あ、そうなんだ、お土産まだ見せて貰っていなかったんだよねぇ。うん、判った、ありがとね」


 と、そのまま息子の部屋の方に向かう。

 私がすっぽんぽんで風呂場に入る頃、廊下の方から絶賛ゲーム中な息子を呼び出す妻の『優しい』声が聞こえて来たのだが、私は何も言う事も無く、鼻歌交じりでシャワーの栓を捻った。


 「日頃の行い、因果応報、自業自得、息子よ、ちったぁ学習しようぜ・・・」

 

 と言うつぶやきはシャワーの水音でかき消され私以外の誰も聞く事は無かった。

 

>コノヤロウッ!、バカヤロウッ!


 や、マジで北野武監督作品はスゲェなぁって思いましたよ。

 芸人としてのビートたけしと共に個人的、昭和の英雄の一人ですね。(映画作品全部平成以降に作られているけど、彼の才能を形作ったのは紛れも無く、あの昭和と言う良くも悪くもトチ狂った時代そのものでした)

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