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段取り編29 全てを見る事も、聞く事も、知る事も叶わないって当たり前のお話

 ゴールデンウィークも明けて、ホテルも確保、次に必要なのはボストン行きの航空券の手配と各種メインイベントの中で事前予約が必要な事前予約必須時間指定イベントの中で残っている

・マンハッタンヘリツアー

・ナイトクルーズツアー

・ジャズハウス

 の3つを何時どのタイミングで予約を入れるか、と言う2点になる。

 そしてそれが完了すれば、その後の段取りは各種メインイベントを組み込み、付随するサブイベントを用意、それを雨天時も踏まえて用意すれば全ての段取りは完成となる・・・はずである。


 先ずは航空券の手配だ。

 結局の所、14日月曜日にボストンに移動、となるが、実際のフライト時間が国内便の1時間だったとしても、ニューヨークの空港にはチェックインやセキュリティーゲートの通過等で結構時間を消費する事が確定しているから、おおよそ3時間前には空港に到着しておきたい所だ。

 以前ボストンの段取りを組む際、ニューヨークでの滞在時間との兼ね合いを考えボストン美術館に到着する時間を設定して、そこから逆算する形で出発時間を考えていたので、パソコンに記載されていたエクセルシートを引っ張り出す。


 「シート5・・・ニューヨークホテル06:00出発、空港07:00着、ニューヨーク空港10:00発ボストン空港11:20着、ボストンホテル13:00着、チェックイン後13:30出発、14:30美術館着17:00閉館後ホテルに移動」


 「シート6・・・ニューヨークホテル07:00出発、空港08:00着、ニューヨーク空港11:00発ボストン空港12:20着、ボストンホテル14:00着、チェックイン後14:30出発、15:30美術館着17:00閉館後ホテルに移動」


 ニューヨークのホテル出発を朝6時、または7時に設定すれば少なくとも当日朝の起床時間は5時または6時となり、最低限の睡眠時間は確保出来る事になる。


 後は確実にボストン美術館の滞在可能時間が「2時間半以上」か「1時間半以上」かの選択肢の違いだろう。

 とは言え、ボストンローガン空港>ボストンオムニパーカーハウス>ボストン美術館のルートはそこまで時間を消費しないだろう、と言う事を考えると、実質的な滞在時間はもっと長いのではないだろうか?


 ボストンにおける最大の目的地である以上、本来可能なら朝6時位の始発の便に搭乗し、午前中には入館出来る様にして置きたかったのだが、これだと午前3時には空港に到着する必要があり、そこから逆算するとホテルを午前2時には出発する必要がある。

 実質ほぼ徹夜または睡眠時間1~2時間でスケジュールをこなす必要がある。

 これは父や息子の体力面を考えた場合その選択肢は当然却下せざるを得ない。


 そうなると普通に朝起きて普通に移動する、ボストン美術館の滞在時間は制限されるが是非もなし、と言う選択肢しか選べないのだが、これに対する対応策があるとすれば事前に観たい作品を優先順位を付けてピックアップして、その作品が何処にあるのかチェックし当日一筆書きでルートをなぞる、と言う形で効率良く回る手段で対応する事となる。


 後意外と忘れがちな注意点として、美術館の展示作品はメンテナンスであったり、他の美術館へのレンタルであったりで常に全ての展示品や収蔵品が常設展示されている訳では無く、行った時に必ずしもお目当ての作品を観賞出来る訳では無い、と言う点も留意するべきだろう。

 これに関してはおおよそ1~2カ月前位にボストン美術館のHPで最終確認をして置けばどの作品が観賞出来るか、出来ないかを事前にチェックする事が出来る。

 その結果を踏まえて、リストとルートを構築する、と言う方法が良いだろう。

 それに、仮に各人が観たいものがバラバラだった場合は、最低限全員が共通してみるべき作品を少なくして、自由行動時間を多めに設ける、と言う手段もある。

 何れにしても取捨選択を状況に応じて柔軟に対応するしかない。

 私個人もボストン美術館で観たい作品は複数あるし、それが2人共興味があるなら「共通ルート」に組み込んでも良いし、息子のリクエストについても同じ事が言える。 

 現時点ではToDoリストに『ボストン美術館の各人リクエスト情報の収集』『ボストン美術館の各人リクエスト作品が公開されているか否かの確認を2カ月前切ったら行う』『その公開情報を基に3人で行動する共通ルートを構築する』を追加して置く。


 と言うか、そもそも世の全ての美術館であったり、博物館の展示品や収蔵品をこの目で見る事自体がどだい無理な話なのだ。

 私が大学生だった時、ワシントンのスミソニアン航空宇宙博物館には合計3回行った事があったが、零戦をはじめ第二次世界大戦時の各国が開発した航空機等を毎回見学していた、と言う面もあって遂に全部の展示物を見る事すら出来なかった。

 個人的にはまた見たいと思っている位ワシントンDCに行った時には訪れたい『聖地』の様な場所だったりするのだが、果たして五十路も超えたオッサンにあとどれ位チャンスが残されているのだろうか?


 光陰矢のごとし、月日に関守なし、朝に紅顔ありて夕べに白骨となる・・・毎日を意図せぬ事に忙殺され続け自身の時間を浪費させられ続けようとも、無為な日常を過ごし続けてしまったとしても、仮に価値ある生き方を送る事が出来ていたとしても、恐ろしいほど平等に命の砂時計に溜まっている砂は止め処も無くサラサラと落ち続けていくし、世の無常の荒波は老若男女問わず、貴賤問わず、所構わず、幾らでも情け容赦無くその命を刈り取り続ける。


 我々の手は世の全てを手に取るには余りにもか細く非力で、我々の足は世の全てを歩き尽くすには余りにも短く脆弱で、我々の目は世の全てを見渡すには余りにも低く狭いものに過ぎない。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 さて、飛行機の予約の件だが、普通に考えれば10:00発の便に搭乗するのが良い。

 その方がボストン美術館に滞在出来る時間が1時間分伸びるからだ。


 他方で、当日は「必ずニューヨークからボストンに移動する」と言う目的を果たす必要があるから時間的猶予はニューヨークやボストンでのイベント消化と比較しても多少長めに取って置く必要もある。

 万が一誰の目覚ましでも起きませんでしたとか冗談の様なミスをしでかしたら、ホテルのチェックアウト前後にネットで改めてチケットの手配を行い、大慌てで空港に向かう羽目になるし、空港内で何らかのトラブルになった場合その処理に時間を消費するリスクも一応は考えておかなければならない。


 幾らニューヨークからボストン行きのフライトが数多く運航されていて、チケットの確保が容易であったとしてもこのシナリオは避けたい。

 その事を考えた場合は搭乗時間をシート6の11:00発便に設定して置いて、ホテルチェックアウトの時間をシート5の6:00に想定して置く、と言う手段もリスクヘッジ、と言う面では十分選択肢に含まれるし、むしろその選択肢の方が無難な気がして来た。

 恐らく時間が余るはずだし、その場合はチェックイン&セキュリティーゲート通過後に空港内のコンセッションで朝食を取るなり、土産物を探したりすれば問題無いはずだ。


 まあ、こんな感じだろう。

 明日、会社に行って会長にその旨を伝えカードで航空券を手配するとしよう。


 歯を磨きに洗面所に行こうとすると、風呂場から音楽と息子のドラ声が聞こえて来た。

 や、ただでさえ『デイリージャイアンリサイタル』なイベントがデイリーミッションで行われていて、いかにも本場のジャイアンリサイタルですって言わんばかりの『独特な』歌声が風呂場に本人のみにとって気持ち良く響き渡っていて、洗面所で聴かされ続けるのも結構しんどいなぁと思いつつ歯ブラシを取り歯磨き粉を付ける。


 潜水艦のソナー員じゃないけど、『雑音』を頭の中で取り除き風呂場に持ち込まれているスピーカーから流れて来る音楽だけに意識を集中させる。

 すると、実は結構面白そうな歌だった事が判る。

 転調の連続で曲としてもテクニカルに面白いと思うし、最後の「ピカルディ終止」は歌全体の転調の連続による緊張感や歌詞の意味が持つ絶望感を最後の最後にぶっちぎる狂気にも似た不自然な程の明るさがあって、目が覚める様なテンションがあった。


 歯を磨き終わり、寝る前の水分補給の為に飲む少量の麦茶を全員分のコップに注ぎ終わった頃、風呂の外でも『リサイタルアンコール』が続いていた息子がリビングダイニングに雑音響き渡らせながら入って来た。


 「おう、さっき歌ってた歌、何てタイトル?」


 と聞く。


 「え?どれ?何曲も歌ってたから教えてくれないと判んねぇよ」


 と息子は頭を左手でバスタオルを持ちガシガシこすりながら、右手でコップを持ちゴッゴッと麦茶を一気飲みする。

 自身が歌うのも嫌なので歌詞だけ伝えると、


 「ああ、その歌は今流行りの『推しの子』の主題歌だよ。知らないの?」

 「へぇ、それ今期のアニメ主題歌なんだ?いや、今期の春アニメの中ではノーチェックだなぁ」


 と言うと喜色満面で喰いつく様に、


 「えーっ?『推しの子』も知らないのぉ?それってちょーヤベェレベルの情弱じゃーん」


 とドヤ顔で言って来やがった。

 いやぁ、息子ながらそのドヤ笑顔、何かちょっとかるーく引っ叩きたくなるレベルでイラっと来るわぁ。


 「って言うけど俺が今追っかけてる作品だって『ヴィンランド(サガ2期)』だろ、『鬼滅(の刃 刀鍛冶の里編)』だろ、『ゴールデン(カムイ4期)』だろ、後今回からのだと『スキップとローファー』とまあ、これでも結構絞ったんだが、観たい作品が多すぎるんだよ。だからあんまり新規の作品が入って来る余地があんまり無いのは仕方が無くね?」

 

 と指折り数えながら今追っかけている作品をカウントする。

 うん、普通に考えて五十路のオッサンがウィークリーミッションをクリアするには結構ギリギリの作品数だと思うぞ。

 土日の朝とかに早起きしてまとめて観ているんだが、それでも時間が足りない事も多くどうすんべ、って思っていたりしているのだ。


 「平日の夜に観る事が出来るオレ様勝ち組ぃ~」

 「おう、そう言えばこの間の小テストの結果出てるだろ。はよ出せぇや」

 「・・・おやすみなさーい」


 ちっ、やっぱりか。

 この様子じゃロクな結果じゃないんだろうな。


 「オイ、試験結果写真でスクショ取って俺の携帯に送っとけよぉ。ああ、後さっき話した歌の情報も教えろよな」

 

 自分の部屋に戻ろうとする息子の背中に声を掛けると、一瞬こちらを振り返って、


 「YOASOBIの『アイドル』」


 とだけ言ってバタンと扉を閉めた。 


>「YOASOBIの『アイドル』」


 いやぁ、スゲェ歌だなぁとは思っていましたけど、まさかここまで影響力が老若男女に拡散しこの年を代表する歌の一つになるとはこの当時は想像していませんでしたね。

 まあ、私の想像力なんか何時もポンコツ仕様なんですけどね。


 実際この年の紅白における演出は控えめに言って神懸かっていました。

 個人的に永久保存版でしたね。


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