段取り編14 このワイの眼力をもってすればっ!・・・って読めない事だらけじゃん
このままで予定組んで行くとパンクするって聞き捨てならない話が出てしまったので、さっさとお茶飲んで寝る予定が引っ繰り返されてしまった。
取り敢えず、何がどうダメなのか聞いてみない事には・・・
「や、スケジュールに関しては問題無く予定がバッティングしない様に組むつもりだよ。各種イベント開催地から次の開催地に向けての移動手段とかも時間的余裕を確保出来る様に段取りを組むつもりだし、好天時と雨天時でスケジュールを2段構えにする事も抜かり無く準備する予定だし、スケジュールがパンクする事態にはならん様に予定を組むから問題無いはずなんだけどなぁ・・・」
妻は私の言葉を黙って聞くと、飲んでいたお茶の湯飲みをテーブルに置いた。
そして、頬をポリポリ掻きながら、あーやっぱり当たってたかぁ、的な表情をする。
「・・・ああ、やっぱり思った通りだねぇ。このまま予定表を作ったら、多分現地でパンクして大慌てするか大幅な予定の修正を余儀無くされると思うよ」
「ってことは今作っているこのシートに問題があるって事だよね?具体的には?」
「・・・うーんとねぇ、問題があるとすればシートそのものって話とかでは無くって、むしろシートを作った君の頭の中の方?」
頬に手を当て首傾げながらとんでもねーこと言ってるよ、奥さん。
「・・・うん、貴方が私にケンカ吹っ掛けていない事は知ってるけど、もう一寸こう言い方っていうか・・・」
「君、パズルゲームの様にスケジュールをエクセルシートを切り張りして出来る限り、効率良く数多くのイベントを埋めようとしてるでしょ?」
ん?何を当たり前の事言ってるんだ?時間最大効率を実行する為に出来る限り効率良くスケジュールをまとめないと旅行自体の満足度が低くなるじゃん。
「そら勿論。でもって今も言った様にそれを好天時と雨天時の2つ作るつもりだよ。無論、移動時間とかは雨天時は晴天時よりかもっと時間が掛かるだろうから余裕を持って計算する必要はあるけど、今後父や息子との3者会議的なモノを実施して、優先順位を付けた目的地を上位から順にどう効率良く可能な限り色々な場所であったり、様々な体験が出来る様に段取りを組むかを考える。それを重視しているのだけど、それが何か問題だって話なの?」
父にとっては両都市共に複数回行った場所ではあるが、息子にとっては初めての場所ではあるし、何より国内旅行やアジア圏の旅行と比較してもそうそう簡単に行ける場所でも無い訳だから、出来る限り行ける所行って、やりたい事やった方が良いと思うのは当然の事だと思う。
でも彼女の表情は曇りがちで、腕を組みながらうーんと考え込んでいる。
何かそんなに大きな問題でも?
「君、土日祝日とかの休日で予定が無い時って何時もどんなこと家でしてるっけ?」
「ん?大抵一緒にいるんだからんなモン言わずとも知ってんじゃん」
この人は何を言わんとしているんだ?
「そう何時も一緒にいるから知っているんだけど、予定が無い休日の時は君、基本トドの様にソファの上でゴロゴロしながら携帯でソシャゲやってたり、アシカの様に床の上でゴロゴロしながらテレビでアニメやスポーツや動画を見ていたり、アザラシの様にダイニングテーブルの上に上半身をゴロゴロさせながらパソコンやってたり、オットセイの様にベッドの上でゴロゴロしながらそこそこデカいイビキ掻きながら惰眠キメ込んだりしてるよね?」
「・・・君が私の事、海獣扱いだってのが良く判ったよ。で、それが今回の件とどう繋がるの?」
「ボストンは兎も角、ニューヨークの場合は気温や湿度とか東京よりかは若干マシみたいだけど、それでも、夏の暑さは結構厳しいみたいな事ネットとかでも結構言われてるんだよね。でもってそういう環境で朝から晩まで隙間無く予定詰めまくって、連日連夜あちこち観光したり体験したりした場合、さてはてどの様な事態が考えられるでしょーか?」
と首を傾げながらネコ口して得意満面で聴いて来る。
うん、まあ貴方の言わんとする事は判ったけど、何かチョットそのドヤ顔態度がムカつくんだが。
「えーっと、要は体力的にキツくなって最終的には誰かしらぶっ倒れてしまい組んでいた段取りがポシャってしまう、とか?」
そう言うと右手を振って何かハンドベルの様なものを鳴らすしぐさをしながら、
「からーんからーん、おぉーあたーりー。正解商品として愛妻によるデコピンチケット100枚綴りを贈呈しちゃいまーす。消費期限は3日以内だけど」
「要らんわ、ンなモン。・・・うーん、俺の場合は普段ゴロゴロしていたとしても夏のサバト(コミックマーケット)とか毎年の様に行ってるし、クソ暑い蒸し風呂の様な会場ですえた臭いする参加者達を掻き分けながら、雑踏を闊歩するのは得意な方だと思ってるんだがなぁ・・・まあ、父や息子の体力面を考慮した場合、あんまり詰めすぎるのもどうよ、的な考えが出て来るってのはリスクコントロール、って面では必要なのかも知れないけど・・・うーん、でも別に毎日キチンと睡眠時間は取るつもりだし、昼飯時とかも休めるし、それ以外に更に休息時間を設ける必要があるって事かい?」
顎に手を当てながら状況を想像してみる。好天時には確かに公共交通機関や徒歩による移動を結構想定していたけど、言うて歩くと言っても1日中歩きっぱなしと言う訳では無いし、炎天下の中歩く&滞在する可能性があるイベントをピックアップするとすれば、日中にハイラインを歩くとか、マンハッタン&ブルックリン橋を渡る、セントラルパークのサマーステージに参加する、スモーガスバーグで飲食とかが思い浮かぶ、あー後はワンチャンメッツの試合をデーゲームで観戦する、とかも入るか。
でも言うてそれ位なんだが。
そしてボストンの場合はニューヨークと比較して気温も湿度も低いから、熱中症だったり疲労蓄積だったりのリスクは低減出来ると思う。
そんな感じなら問題無くイケるんじゃね?って感じていたりもする。
妻はそんな首を傾げる私の姿に嘆息しながら、
「基本的に人間って1日2日位なら何のかんので結構無茶出来るもんなのよ。でも今回の旅行では6泊8日と言うスケジュールで海外に滞在するでしょ?普通に考えて3日目位からしんどくなってくる可能性は十分にあるよ。これがパックツアーとかなら貸し切りバスでの移動とか結構あるから、移動時間中に寝ちゃうとか色々と隙間時間で参加者は休む事が出来るのよ。でも今回は基本君がスケジュールの組み立てを全部行う訳だから、恐らく移動も徒歩や公共交通機関を利用する事がメインになると思うの。だって、読んでいる資料の内容から地下鉄やバスに関しての情報は色々と書いてあるけど、タクシーとか長距離バスとかに関しての情報は殆ど記載が無かったから。それで、イベントを隙間無く組もうとすれば、組めると思うよ。でも旅行代理店が作っている『旅のしおり』には書いていない隙間時間の休息について、作っている資料を見る分には君が考えているとは思えないんだよねぇ・・・」
と言い、妻は再び湯飲みに手を出しお茶をすする。
なるほど行動の幅をもっと緩やかにして、特に気温や湿度の面で負担が掛かる午後のスケジュールは例えば屋内でお茶が出来る機会を一定数確保するとか、ホテルに戻ってシェスタの様な休憩時間を設ける事で、リカバリーを図り体力面のリスクを軽減した方が良いって事か。
最近では毎週末ゴルフに行っている位精力的に活動を再開しているとは言え70代後半の父に関しては、その辺りについては一考する必要があるのかも知れない。
「なるほどね、その事に関しては検討した方が良いかもってことか。多分、日中に回る予定の地域でアクセス可能な屋内のカフェとかをリストアップしたり、回っている地域から一旦ホテルに戻って休憩後に次の目的地に向かうルートで導線を引き直す必要が出て来るって事なんだろうね・・・うーん、そういう視点で段取りがどんな感じで組めるのか一旦調べてみるよ」
「ですです」
と頷きながら言う妻の鼻息はフンスフンスと力強いモノがあった。
そんなに鼻息荒くドヤ顔していると鼻の穴が大きくなっちゃうよってツッコミたくもなったが、それ言うと絶対に10倍以上の「お返し」が来るから言わない。
我が家では平和が何よりも大事なのだ。
早速、話した内容をパソコンのワードにToDoリストとして記載しておく。
具体的には明日以降の作業になるのだろうけど、作業量的にはそこまで大きいものにはならないだろう・・・と思う。
しっかしまあ色々な見解ってのはやっぱり聞くもんだし、改めてこのワイの眼力ってのは結構節穴だらけなんだねぇ。
ま、知ってたけどさ。