記念日に
国境の長いトンネルを、
赤い軽トラで、
時速300キロで走り抜けると、
そこは、豪雪国だった。
緑国での半年の入院生活。
季節は、夏。
夏祭りが、今日の夕方から始まる。
窓から見える、その準備の光景。
仮装して楽しむ人もいた。
頭が2つあったり、腕が6本あったり、とてもユニークだ。
外に出て参加したいが、今回はベッド上で見学である。
────さて、もうすぐ始まるぞ。
暗雲来たりて、夕暮れの空を覆い隠す。
気温が僅かに下がり、冷たい風が一瞬さあっと、開けた窓から侵入して部屋をザワザワ騒がし、
窓下の人々の声が、開けた窓から侵入して部屋をザワザワ騒がす。
来たれ!
来たれ!
来たれ!
すると、空からヌイグルミが、
1個、ゆっくり落ちてきた。
2個、落ちてくる。
4個、続けて落ち、
────危険を感じ、窓を閉める。
8個
16個
32 個
128 個
512 個
2048 個
8192 個
32768 個
131072 個
1048576 個
16777216 個
134217728 個
1073741824 個
999999999999……個
と、土砂降りのヌイグルミが、国全体を覆っていく。
廊下を、パンプアップで破れそうな白衣を着た看護士が、ノシノシ歩いて行く姿が見えて、
呼び止めて、外の様子を訪ねると、
「“もふもふ”の海ですよ。これから体育会系の殴投食祭りが始まるので、元気で参加しないとね。貴方も体直して、死ぬ気で来年も来て下さいね。」
看護士は、口端を吊り上げた。
次の年、ヌイグルミは降らなかった。