The Destroyer
目を覚まし、起き上がる。
「ここは…!」
真っ白な部屋、真っ白なシーツのベッド。
俺がこの世界に来る前に訪れた部屋だった。
ただ一つ、その時と違うことをあげるとするならば、水色のホログラムのような俺が居ることだ。
「「お前は誰だ?」」
お互い同時に、一言一句たがわず同じ言葉を吐く。
「ははっ!ごめんごめん。」
もう一人の俺は楽しそうに笑いながら、ベッドに座った。
「ここはちょっと複雑な場所なんだ。だけどまず、無事に常ノ理の力を手に入れることができて本当によかった。
それで、ここはどこなのかって言うと…君の中にある常ノ理だ。」
彼はケロッとした表情で、そう言った。
「俺の中の常ノ理…?何言ってんだよ…」
俺は思わず聞き返す。
それに対しても彼は表情を変えず、俺に説明を続ける。
「受け取ったでしょ?常ノ理の権限を。
いいかい、神武 龍司くん。
常ノ理は体内に常ノ理の種を持つ者が扱えるものなんだ。
種を持つ者、通称シーズが子を産み、産まれた子にも種が埋められる。
最初は八人の人間に種が埋められた。そこからだんだん子孫が増えて行き…今じゃ数え切れないほど種を埋められた人がいる。」
「つまり親父はシーズで…俺も…」
「そう。そして、君の母親もだ。
驚いているだろうけど、最初の八つの種について話をさせてほしい。まず…」
まず、常ノ理の数だけ種に種類がある。
最初の八つの種はそれぞれ
盲信の種
雷の種
歌劇の種
戦の種
鉱物の種
華の種
幻想の種
無の種
と呼ばれており、後から出現した種より強大な力を持っている。
下の二つはその中でも異質で、幻想の種は全ての常ノ理を扱え、無の種は全ての常ノ理を扱えない。
下の四つ以外の常ノ理は破壊されており、存在しない。
神武 龍司の父親、岩月 龍之介は幻想の種を持っていて
神武 龍司の母親、神武 水主美は無の種を持っている。
龍之介から受け取った権限は体内の二つの種と交わり、龍司の体内で常ノ理となった。
「えっと、つまり、父さんと母さんはシーズで、俺は全ての常ノ理を扱えるし扱えない。そして俺の体内には常ノ理がある。理解できるかよっ!!」
「大丈夫、いずれわかるよ。それで、君の中の常ノ理を使う方法は、説明しなくていいね。もう、二回目だし。」
「神武 龍司と口に出す、だろ?」
「そうそう。少しずつ力の調整にも慣れるだろうから、頑張ってね。
それじゃあ、そろそろ君は起きる時間だよ。さあ、そこのベッドに横になって。」
彼は俺を真っ白なベッドに寝かせ、俺に親指を立てた。
前に寝た時とは違う、誰かが俺を底から引っ張り上げる様な感覚に包まれて…
「それでよ、リョージが俺様に…おっ、起きたか。」
「ギルガメッシュ…グレアも。あれ、結貴は?」
「お仕事があるからって帰っちゃったよ!」
上体を起こし、仲間二人の顔を見る。
俺の近くで座って話していたようだ。
「衛藤はどうなったんだ?姿が見えないな。」
「結貴が連れて帰ったよ。中央でさらに良い暮らしをさせる代わりにここでの事は他言無用、そして戦いから手を引くようにってな。
アイツ、リョージにはもったいないくらいいい女だよな。
賢いし、度胸もある。かなり長い時間生きてないとあんなオーラは出ないぜ。若いのによくできたヤツだ。」
「えっ?!あ、あぁ、はは…そうだよな。」
本当は一人でずっと戦ってたんだ、と言いたい気持ちを抑え、ぎこちなく頷いた。
「あ、常ノ理…。」
ゆっくりと立ち上がり、ずっと視界の中に居た常ノ理へと近付く。
胸に手を当て、自分の中にある常ノ理をイメージしてみる。
これもギルガメッシュに破壊されてしまうのだろうか。
「俺様は、ずっと誰かと仲間になることなく一人で旅してたんだ。
ここまでテメェらと旅できてよかったよ。やっぱり、一人より二人、二人より三人…だな。
こっからどうするかはテメェらの自由だ。ここが旅の終わりだって言うんなら、常ノ理を使って帰れ。」
「そんなの決まってるよ。なぁ、グレア。」
「うん、当然!」
「「まだ旅は続ける!」」
「はっ、そうかよ。それじゃあ次に行こうぜ。」
ギルガメッシュが常ノ理に触れ、一拍置いてから口を開いた。
「俺様とグレア、リョージを次の常ノ理がある世界へ転送した後、自壊せよ。」
「…なあ、常ノ理って無くなっていいのか?」
「ああ。むしろ不自然な出来事がなくなるから、無い方が正しいと思ってる。」
お互い顔を見合わせ、頷く。
次の世界でも、無事に常ノ理を見つけられるように強く祈りながら、願いながら、俺らはこの世界から別の世界へ転送された。
「華々しい世界だな。そのまんまの意味で。」
「たしかに。どちらかと言うと、花々しいって感じ?」
「んーと…どういうこと?」
第三章
誰も知らない夜明け
〜完〜
ひとまず完結です。
まあ、まだまだ続きますけど。
デイアネラが出ずに終わったのは、力量不足です。
彼女は、急にエウフェミアの前に帰ってきた龍之介を思いっきりビンタして、涙が溢れて感情を上手く表せないエウフェミアの分も叱ってくれました。
次の投稿はいつになるかわかりませんが、絶対新しいの出します。
次作は続編ではありません。始まったらちゃんと最後までやりきります。
ここまで読んでいただきありがとうございます。またお会いしましょう。




