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与えられた物は「勇気」のみ!~最強スキルで旅をする~  作者: ド・ド・弩レイダー
第三章 誰も知らない夜明け
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龍を司る男と神の意志

「お前らは強いなぁ!でも俺には遠く及ばねぇ!

なンてったって、正真正銘最強無敵だからな!」

「この俺様を差し置いて最強だァ?なァ、おい!サシでやろうぜ。英雄王ギルガメッシュ様に喧嘩売ったこと、後悔させてやるよ。」

ギルガメッシュはこちらを向き、さっさと離れろと言うように俺を追い払った。


「はぁー…ギルガメッシュってば、自分勝手だな…」

体育座りしながら二人の戦闘を眺めていると、結貴が隣に座った。

「グレアちゃんとギルガメッシュさん、とても良く似ていますわね。」

「グレアは、最初に俺らと会った時から随分変わったよ。

ギルガメッシュは面倒見がいいからよく色んなこと教えててさ、見て学んだ結果なのかな。」

妙に自信家なところも、楽しそうに戦うところも、良く似ている。

楽しそうに戦うことがいいことなのかはわからないが、彼女がそう有ることを望んでいるなら文句は言わない。

「ギルガメッシュがさ、グレアにフォークとナイフの持ち方教えてたんだよ。

初めて一緒に飯食べた時かな。そんで、最初の方は覚えてたんだけど、パンとかばっか食べてて、十数日ぶりにフォークを使う機会があったんだけど

グレアがギルガメッシュと向かい合って座りたがってさ。それで見よう見まねでやるんだけど、見えてるのは左利きの持ち方で。それからグレア左利きになってたんだよね。」

「あら、まるで小さな子供みたい。」

「小さな子供だよ、グレアは…。俺らと会って生まれたんだ。」

上手く説明が伝わっただろうか、とか考えながら俺は少し俯いていた。

そして、ふとした瞬間に押し寄せる不安。

父さんは俺に戻っちゃダメだと言った。

もし戻れたら、俺は母さんと父さんに会える。

年齢的にはもう少しで大人かもしれないが、まだまだ俺は子供だ。親に会いたいし、支えていてほしいと思っている。

まだやり残したことはたくさんあるし、それもやりたい。

そういえば、俺はこっちに来る前なにしてたんだっけ。



好きなシリーズの映画を観に行った帰りだった。

アニメのラスト、劇場版を匂わせてから随分と時間が経っての公開だったため、非常に期待されていたが…。

「間違いなく、駄作だったな。」

元々漫画原作で、その内容通りのストーリーで来るのかと思われていた。

しかし、中途半端なオリジナル要素が足を引っ張ってしまい、意味のあるはずだったシーンが、ただの謎のシーンになっていたりと、俺個人の意見としては、作り直してくれと頼みたくなるほど酷い出来だったと思う。

「それにしてもあっつい…。買ったばっかなのにもうこれしかないとかマジか…。」

映画館から駅に向かう途中の自動販売機で買ったお茶。駅が少し遠いのもあって、飲む頻度がかなり高かった。

駅に着いた時には既にカラで、俺はそれをゴミ箱に押し込んだ。

汗を拭いながら電車を待つ。揺らめく景色の向こう側から、ようやく現れた。

呑気に欠伸してホームに停車するのを待っていると、後ろから強い衝撃を感じ、気付けば俺は…



「死んだ、よな…。帰ったら、おかしいか。高校卒業まで生きてたかったけど…。」

「ただいまーっ!ねぇねぇっ、勝ったよ勝ったよ!」

ギルガメッシュは乱暴な戦い方をするから血まみれになって帰ってくるが、グレアは武器を使ったりすることはないから綺麗なまま…いや、服がボロボロになったりするな…。

「おかえり。よく頑張ったな!」

結ばれていた後ろ髪は解けて、前髪は汗で額に張り付いている。

そういえば、小此木はどうやってグレアと戦ったのだろうか。

彼女の能力はせいぜい支配して操る程度だ。それ以外に何かあるのか?

「大変だったぁ…。だって急に刀取り出したり増えたりするんだもん。」

「小此木が?そんな能力だったか?」

「なんか、アタシを愛した人の力を使えるみたいなこと言ってた。」

「それは厄介だったでしょう。お疲れ様です。」

グレアの乱れた髪はいつのまにか結貴によって綺麗にされていた。

鏡を取り出し、様々な方向から自分の髪を見て楽しんでいる。グレアもいつか化粧をしたりするのだと思うと、成長を見守りたい気持ちが出てくる。


「なぁ…おい!随分手間取らせてくれやがったな!

次は誰が来ンだよ。俺に女殴る趣味はねぇから…お前だな。」

「わりィ、コイツの馬鹿力に俺様の体が耐えられなかった。」

ギルガメッシュの頭を目の前に投げ捨てられ、急いでそれをグレアが拾う。

相手は俺と戦いたがってるし、ちょうど今ので俺もコイツをぶん殴りたいと思ったから、断るなんてことはしなかった。

「いいぜ、上等。ギルガメッシュの分までボコボコにしてやる。」

「むぅぅ…あんなやつ、あんなやつぅぅ…!」

「龍司。耳を貸して。」

後ろから肩を叩かれ、言われた通り、俺は耳を結貴の方へ向ける。

「貴方の名前は神武(じんむ) 龍司。全てを思い出して。」

「俺の名前は神武 龍司…。」

その瞬間、俺の全身に常ノ理(世界システム)の力が満ちた。


「見てくれよ、この強靭な肉体。そして無敵の精神。まさに俺って、最強だよな。

ほら、かかって来いよ。ヒョロい雑魚が。あぁ、懐かしい。お前みたいなやつからよく金奪ったもンだ。」

「このDQN野郎が…絶対にぶっ倒す…いや、お前なんかぶっ倒せて当然のクズ野郎だ!」

今まで感じたことのないほど大きな力が俺の体内に溢れている。

恐怖は無い。ただそこにあるのは、勇気と自信だけ。

「刀身烈風…散!切り刻め!」

砕けた刀身は宙に散らばり、衛藤の方へと飛んで行く。

しかし、無数の刃に何をされようと表情を変えずにこちらを見ている。

「そンなしょっべぇ攻撃で俺が痛がるとでも思ってンのかよ?!」

衛藤の身体と同じぐらい大きな剣を構え、こちらへ向かってくる。

「刀身烈風・結、戻れ!」

俺も同じく剣を構え、攻撃を受ける体勢を取った。

「防御する気か?それじゃああの骸骨は無駄死にと同然じゃねぇか。せっかく俺の武器がどれだけつえぇか証明してくれたってのによ!」

刃同士が触れ合う。火花が散り、強烈な衝撃波と共に…

お互いの距離が離れた。

「なンだよそれ…この剣は全てを斬り伏せる絶対的な力じゃねぇのかよ…!!」

「俺の剣は誰にも折らせちゃいけない、旅の終わりまで必要な剣なんだ。

こんなところで、お前に負ける訳にはいかない。この剣を折るやつが居るとするなら!それは、ギルガメッシュだ!!」

「へぇぇ…ここは旅の終わりじゃねぇって言いたいのかよ…」

「あぁ、俺はお前に負けない。ギルガメッシュと、グレアと旅を続けないといけないんだ。」

俺の燃え上がる闘志は、この確固たる意志は、太陽の姿で現れる。

大地が干上がりそうなほど、強烈な熱線を放っている。

「刀身烈風、舞!」

「またそれか?通用しないってのは見てりゃわかンだろうが。」

「お前は…何も斬れない。その身体は酷く脆い。今お前を包んでるのは幻だ。」

「アホか。俺の自身に対する認識を揺さぶろうとしたって無駄無駄。ここにあるのはお前を倒す絶対的な自信だけだからな。」

「汝の(もと)に在りし願いは破滅なり。

過現未(かげんみ)(かい)曼荼羅(まんだら)日天(にってん)』」

宙を舞う刃に反射した光は虹となり、彼の身体を貫いた。

「っぐ…な、なんだ?何を…!」

「もうお前の手元にはナマクラしかない。それじゃあ俺を殺せない。自慢のボディも爪で引っかかれただけで血が出るほど脆い。観念しろ。

今ここで、確実に、お前をこの剣で殺す。」


「おい、グレア。様子が変だ。結貴と一緒にリョージの様子を見てきてくれ。」

「うん、わかった!よし、行こっ!」

わたくしの手を引く少女は、彼の言った通り生まれたばかりの子供のように無邪気で、全てに興味が尽きないと言った様子。

その彼は、剣を引きずり、衛藤の所へと歩いている。このままだと彼は衛藤を殺してしまう。

「グレアちゃん、龍司を止めましょう。ちょっと走りますわよ!」

小さな彼女を抱きかかえ、走り出す。


彼の目の前で止まり、グレアを下ろして彼とジッと目を合わせる。

「結貴、どうしたの?」

「わたくしは貴方に人殺しをさせたくないのです。

どうかお願いしますわ。彼のことは見逃してさしあげてください。」

「ありがとう、結貴。でも、絶対に殺すんだ。」

彼の目は青く光っており、少し震えていた。

(あぁ、まだ彼に常ノ理を制御するほどの力はなかったのですね。)

「ごめんなさい、龍司。わたくしのせいですわ…。」

言葉を合図にグレアが彼に触れ、呟く。

「止まって。」

「グレア…俺を止めないでッ…くれ…」

彼は静かに、その場に倒れ込んだ。

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