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与えられた物は「勇気」のみ!~最強スキルで旅をする~  作者: ド・ド・弩レイダー
第三章 誰も知らない夜明け
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未亡人ノ介錯

「あれ?そう言えばさ、岩月龍之介は、エウフェミアって人と付き合ってるんじゃなかったっけ?」

「あ…」

俺とギルガメッシュ、そして父さんは同時に声を漏らした。

溢れた涙も引っ込んで、呆れたようにため息をつく。

「そうじゃん。すっかり忘れてた。

日本には帰らせません。ここでルヴナさんと幸せに暮らしてください。」

常ノ理(世界システム)に触れ、「岩月龍之介とエウフェミア・ルヴナを再開させ、二人は結婚する。」と命令した。

「ちょ、ちょっと待って、それは酷くないかい?僕はミス…」

「一人の女を愛し通せずに別の女に手ェ出して、その上目の前から消えて悲しませたテメェがふざけたこと言ってんじゃねェ!」

ギルガメッシュがバチン!と強くビンタしたところで、彼は足元に出現したワープホールに吸い込まれていった。

自分の父親がこんなのとは知らなかったと言うか、日本の方でこうなっていた可能性があったと思うと複雑な気持ちになる。


「ふぅ…はぁー…よし、それで、どうする?」

「そンなモン決まってンだろ。俺はお前らをぶっ飛ばす!」

「なァ、ずっと思ってたんだが、なんで俺様達を狙ってんだ?」

「なんでって…アナタ達が神を殺して世界を破壊してるからに決まってるじゃない。」

「えぇっ!そうだったの?!」

「いや…まァ、たしかに殺したけど…。」

「そう、アナタの仲間は悪なの。」

人を助けるために仕方なくだが、殺してしまったことには違いない。

こう考えると、俺らは悪な気がしてくる。

仮にも、神を殺している…。

「人を操る能力を持ってるテメェらの方が悪役みたいじゃねェか!」

「たしかに。じゃあ…」

「じゃあ、なンだよ?」

「最後に立ってた方が正義、どっちが悪か決めるために殺しあおうぜ!」

「はぁ、バカか!俺が勝つに決まってンだろ!」


「ちょっと、久宗(ひさむね)!勝手なこと…なに、どうしたの?」

「待って、貴女の相手は私だよ。私、貴女のこと嫌いだから手加減とかしないけど。

拒否しちゃダメ。貴女の仲間はやる気満々だし…たぶん、待ってくれないよ?」

「大胆ですわね。お手伝いいたしましょうか?」

「ううん、大丈夫。私強いもん。」

「アナタ、後ろについて回るだけの子かと思ってたけど…

ずいぶん自信家で、ワガママ。悪い子ね。」

「昔の私はそうだったけど、二人と一緒に居たらこうなっちゃった。二人とも優しいんだもん。ね、結貴さん。」

「ええ、とても。」

ニコニコと相槌をうつ彼女は私の邪魔にならないように手を振りながら少し離れたところへ歩いていった。

「でもね、グレアちゃん。アタシの方が、ずーっとワガママなの。

アレが欲しい、コレが欲しい…。アナタが欲しい、アナタはいらない…。

全て手に入って当然。全ての男が私にひれ伏すの!

ウフフ…あぁ…アタシ、アナタ達、みーんな欲しい…。」

「ねぇ、私さ。ずっと貴女のこと嫌いって言ってるでしょ?

なんでかわかる?そうやって誰かを支配して大きな顔して。

そのくせ自分じゃ何もしなくて。私が一番嫌いな人種!

今すぐぶっ殺してあげる。覚悟して!!」

地面に手をつき、「邪魔する奴はぶっ殺す」と唱えると、私と小此木を円で囲う。

これが二人だけの戦場。

「へーえ…やるじゃない…。

でも、アタシだって負けてないの。見てて。」

パチン、と指を鳴らすと、いつの間にか彼女の手には刀が握られていた。

「これね、天祢ちゃんの刀。凄いでしょう?

アタシを愛した人の力はアタシの力。それを自在に使えちゃうってワケ。

そして、オマケに…アンドロイドは(ブレード)電気羊の夢を見るか(ランナー)。」

彼女の胸元から刃が現れ、そこから広がるように鉄で覆われていく。

そうして彼女の全身は鉄で覆われ、ロボットのようになってしまった。

「あまり可愛くないわ。ダメダメね…。

さて、来ないの?来ないなら、こっちから行っちゃうんだから。」


強化されて彼女の身体能力は上がっているが、素人なのに変わりはない。月並みの、それ以下のしょうもない攻撃ばかり。

ギルガメッシュは何千倍も強い。

しかし、三回殺したはずなのに倒れる様子が無い。

そういえば、能力の元の持ち主であるゼノンという男もギルガメッシュの攻撃に長い間耐えていた。死ななくなる能力だろうか?

攻撃力も上がっているのは間違いないが、四本の腕から繰り出される無数の連撃より遅く、弱い。

ただ、私だって腐っても人間。刀に斬られてしまったら傷を負ってしまう。

「ふぅ…全部避けられちゃって、大変。

そうね…。力を今の半分にして、速さをその分上昇させる。」

一息つき、少し何かを考える素振りを見せ、そう呟いた。

「それと、これも。ほら、後ろを見てごらんなさい。」

勢いよく振り向くと、後ろにはもう一人彼女が居た。

気付けば何人もの彼女に囲まれている。

「どう?ちょっとした縛りプレイと、見せかけの人形(プリテンダー)。面白いでしょ?」

「どこが…!」

私も、何か武器が欲しい。

どんな武器が良いだろうか?

リョージの剣は大きくて、少し私には使いにくいかも。

ギルガメッシュが扱う武器の中でなにか良い物は…?

違う、違う。私の武器は私自身しかないんだ。

私の祈りが、願いが形になってこの能力を手に入れた。

「やっぱり面白いかも。貴女をたくさんぶっ殺せるから!」


なんだか身体が軽い。いつもより軽快に動ける。

悪魔みたいな爪で、テンポよく何人も見せかけの人形(プリテンダー)を破壊している。

「んふふっ…これ、楽しいかも!」

「うぐっ…!」

「あ、本物!あははっ!死ね死ね死ね〜っ!!」

まだ死なない。かなりタフだ。

しかし、今まで感じたことない高揚のおかげで、最高にドキドキしながら戦えている。

攻撃を当てると瞬時に偽物と紛れてなかなか攻撃できないのはあまり楽しくないが。

そういえば…


「俺様はどんな勝負だって負け知らずよ。」

「へぇ〜っ、すごい!

色んな話、聞かせて聞かせて!」

「そうだな、それは俺様が…」

…てな訳で、俺様が勝った。」

「じゃあ、素早い敵はどうするの?」

「俺様は来る場所を予測して先回りで攻撃するけど、グレアなら、相手の足を動けなくしてそのまま攻撃できるな。ま、動けなくする前に殺すだろうけど。」


動けなくすればいいんだ。

そうと決まれば、とひたすら偽物の中から本物を探し出す。

「アンタの足、ぶっ壊れろ!」

明らかに私の接近と触れることを嫌がっていたやつが本物。

偽物は私が近付こうと好き勝手に動き回りながら嫌な笑みを浮かべているだけ。

「…そんなこともできるの、羨ましい。」

動けなくなり、膝立ちで俯いたまま、彼女はぽつりと呟いた。

「私は、貴女が羨ましい。たくさんの人に愛してもらえて。」

「あら、寂しがり屋さんなの?でも、愛はそんなにイイものじゃないわ。

アナタは一途に一人を愛しなさい。たくさんの人に愛されるのはイイことかもしれないけど、相手は選びなさい。

可愛い顔してるから、きっとモテるわ。

さあ、殺すんでしょう?早くして。天祢ちゃんの所に行かないといけないんだから。」

「愛って、良いものじゃないの?それだけ聞かせて。」

「誰にあげるか、誰から貰うか。すごく難しいものなの。

愛すこと、愛されることは素敵なことだけど、愛は違う。

アタシみたいになっちゃダメよ。」

「言ってることの意味がわかんない。」

「そう?ちょっとカッコつけちゃったせいかも。

それに、今のはアタシへの戒めの言葉だから。自分だけわかればいいつもり。」

「そっか。じゃあ、小此木美姫。サヨナラ。」

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