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与えられた物は「勇気」のみ!~最強スキルで旅をする~  作者: ド・ド・弩レイダー
第三章 誰も知らない夜明け
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岩ノ鏡面

久宗(ひさむね)に呼ばれ、天袮(あまね)ちゃんを連れて中央より南側へとやってきた。

森の近くにある小さな村の広場に彼が待っていた。

「よぉし、やっと来たな。早く行こう。とンでもねぇぜ、待ちきれねぇ」

「…ちょっと、臭いんだけど。」

「ん、わり、秋原(あきはら)冬斗(ふゆと)って覚えてるか?アイツが居てな、殺してきたンだ。」

「はぁっ?!なにやってんの…?」

いいからいいから、と話を遮られ、森の奥へ進んでいくと廃墟の入口が姿を現した。

久宗は気にせず進んでいくが、こんな所に入りたくない。

入口付近で立ち止まっていると、見かねた天袮ちゃんにお姫様抱っこをされて中へ。

「この奥だ。腰抜かすなよ。」

「今更何が来ても驚いたりするはずないじゃない…。」

「万が一に備えてしっかり掴まっていろ。」

「口実作ってアタシとくっつきたいの?」

呆れた様子の天袮ちゃんの頬にキスして、強く抱きついた。

奥に進むにつれ、明るくなっていく。外だろうか。

出た先は森で、もう少し歩くと久宗は言っていた。

葉の隙間から射し込む光の眩しさに驚き目を閉じる。

やがて森から出て、完全に明るくなり、私は目を開けた。

「なにこれ…戻ってきちゃってるじゃない。」

最初に集まった村が前にあったのだ。

「そう思うだろ。でも全く違う。

ここには人が居ない。どこを探しても居ないだろうな。」

「鏡映反転か…」

「ふーん…ソックリの場所ってことね。」

「手分けして探索しよう。俺の感覚でしかないが、ここは元の場所より小さい。

さほど時間はかからねぇだろ。集合は中央、いつものビルだ。」


「それじゃあね、天袮ちゃん。また後で。」

腕から降ろした彼女は手を振りながら、地図の西側へ。

そしてもう一人の男は、とっくに東側へと行ってしまっていた。

中央にある要塞国家(パレオフルリオ)を目指し、走り出す。

久宗が言った通り、元の場所よりだいぶ小さい。かなり早く目的地に着くことができた。

まずは、入った所の近くにある墓場、『ゴルゴダの墓場』を見てみることにする。

相変わらず、不気味だ。書かれている名前も変わっていなかった。しかし…

「…っ!?山条天袮だと…?」

ふと触れた十字架には間違いなくそう書いてある。

地面を掘り返すと、地面には棺桶が埋められていた。

僅かに恐怖を感じつつも、開こうとする手を止めることなどできなかった。

「遺体が入っていない…中には手紙だけ…?」

手紙には差出人が書いておらず、誰からの物かわからなかったが、文字は丁寧な美しい筆跡で書かれており、小此木(おこのぎ)美姫(みき)の物だとわかった。

そして、自身の呼び方でも。


天袮ちゃんへ

この手紙が届いて、アナタが読んでくれていることを願います。

アナタは寡黙で、感情を表に出すことがありませんが、ふとした行動からいつも優しさを感じていました。

私達三人は、お互いの事を知ろうとしませんでしたね。

なので、未だに私はアナタが山条天袮という一人の男性であることしか知りません。

ですが…いえ、だからこそ私はいつの間にかアナタに魅力を感じていたのだと思います。


もし直接言えたら、もしアナタもそう思ってくれていたら。


私の心は子供のように飛び跳ね、舞い上がることでしょう。


愛しています。


小此木美姫より

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