シャトゥーン
廃墟の奥、巨大な化け物の口のような壁があり、行き止まりだった。
帰ろうと振り返った時、微かにその口から空気が漏れているのに気付き、再びその方向を見る。
俺を丸呑みにしようとしているのかと錯覚するほど、大きく口を開いていた。
「例えば秋、冬。生き物はそれぐらいの時期になると、種を残そうとしたりすることが増える。
もちろん、その時期だけってわけじゃあないんだが。
冬眠、という言葉ぐらい、君みたいなバカでも聞いたことがあるだろう?
その生き物が生き残るため、そういう行動をとるんだ。」
「秋原ァ…!」
秋原冬斗。俺らと一緒に召喚された男だ。
メガネで、人を見下している、ガリ勉野郎。
大きく開いた口の中から、ソイツが姿を現した。
「しかし、全員が全員冬眠できるわけじゃない。
そこから漏れ、『穴持たず』と呼ばれるようになるクマが居てね。
身体が大きすぎて穴に入れないとか、冬眠前の秋に充分な栄養が取れなかったりして、そうなるんだと。」
「何が言いたいンだよ…」
「この世界での新生活が始まる前に、充分な支援が受けられなかった僕はまるで『穴持たず』みたいじゃないか?」
「あぁ、そうだな。無様でお前にピッタリだ。」
「知ってるかい?『穴持たず』っていうのは、飢えていて危険なんだよ。」
ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべ、目が赤く光る。
その瞬間、俺は落下感に襲われる。下を見ると先程の化け物が口を開けて迫ってくる。いや、俺が落ちているんだ。
「食われるッ…!」
恐怖のあまり目を閉じるが、何も起こらない。恐る恐る目を開けると、目の前には秋原の姿が。
「くっ…ふふふ…ははははっ!
情けないじゃないか!世界を救う英雄なんじゃないのか?!
そんな姿晒して、英雄の名が泣いてるぞ!」
鋭い武器を持っている。あれはなんだ?
それに無骨な鎧まで着ている。その姿は何かある種の恐怖を感じさせた。
「俺は英雄なンて大層なモンじゃねぇ。
俺が守ンのは、女と飯、金と明日の暮らしだけだ。
お前は女か?飯か?金か?違ぇよな。だったら良かった、安心してぶっ殺せるぜ!」
俺の剣に斬れない物は無い。俺が持つのに相応しい武器、全部斬れて当然だろ。
「さあ、どうした!ぶっ殺すんじゃないのか?!
なんだ、思っただけ?それじゃあ三流のままだなぁ、お前は!」
大量の凶暴な生き物を手足の様に操り、俺にぶつけてくる。
この世界に存在する生き物だけでなく、空想上の生き物まで出てきている。
「見たことあるかい?!ヒポグリフ、ケルベロス、ドラゴン!
僕は神話だとかそういうものは信じないタチでね、おそらく君が世界で初めてその生き物と対峙しただろう。
そうだな、『英雄王』ギルガメッシュでも存在しない限りは!」
「ベラベラとうるせぇやつだな!!
めんどくせぇ、こンなの無視して直接ぶっ殺す!!」
剣を構え、秋原へと突進する。
邪魔してくる生き物が居るが構わず突き進む。
勢いよく突き刺した剣は秋原の心臓を貫いた。
「ぐぶっ…へ、へぇ…僕は君を侮っていたよ…。
さ、最後の抵抗だ…。死なないでくれよ。」
ドラゴンに掴まれ、秋原は高く飛び上がる。
身を這う気持ち悪さに気付いた時、既に俺の身体は無数の虫に覆われていた。
「ちょっと刺すよ。危険な毒持ちだから解毒は早い内にするべきだ。
ここから出られればなんだけどね。ははははっ…。」
これは常時展開されている結界、あいつが死ねば消える。
「なぁ!お前、俺が誰だか忘れてンじゃねぇのか?
最強の男だぜ、こンなのに刺された程度じゃ死なねぇ。毒でもな!」
チートスキル。俺らを召喚したヤツらはそう言った。
毒は効かず、身体も頑丈で、俺はまさに無敵だ。
数十分した後、気付けば俺は化け物の口があった所に立っていた。
まだ奥がある。こっから先は、アイツらも呼んで行こう。
なろう、いいですよね。
こんな文字の羅列を公開できるんです。
ところで、ハーレム物は好きじゃありませんが、見てもらうためにはハーレムを築かないといけないんでしょうか。
好きなものだけじゃダメなんでしょうね。悔しい。




