家族
「それで、ボク達になんの用?」
「わたくし、貴方がたと少しお話がしたくてお伺いいたしましたの。」
「なあ、結貴。その話って、俺らが聞いてても平気か?」
「そうですね…。では、三時間後にここでまた会いましょう。」
結貴は紙に簡易的な地図と場所の名前を書き俺に手渡した。
そのメモを受け取り、俺らは店の外へと出る。
「なぁ、ギルガメッシュ。そういえば俺らってこの国じゃ指名手配なんじゃなかったか?」
「ん…あァ、そんな話もあったな。テメェの嫁がなんかしてんじゃねェのか?」
「え!キュクロス…じゃなかった、龍司ってさっきの人と結婚してたの?!」
「いや、してないけど…」
「ダハハハッ!満更でもなさそうな表情しやがってよ!」
そんな会話をしながら、特に宛もなくフラフラ歩いていると、前から歩いてくる一つの人影に気付いた。
小此木美姫だ。両手にパンパンに膨らんだ袋を持っている。買い物帰りだろうか。
あまり得意としない人種なので、気付かれないようにと願っていたが、ギルガメッシュはそんな事を考えないし、俺らは目立つ。
「おい、テメェ、こんなとこに居やがったのかよ!」
こちらに彼女が気付くと同時にギルガメッシュが怒鳴った。
「アナタ達こそ、こんな所に居たのね。」
グレアが臨戦態勢をとる。なるべく目を合わせないようにと俺はそっと目線を逸らした。我ながら情けない。
「私、あなたのこと大っ嫌いなんだから!」
「あら、こんな白昼堂々戦闘?
私は上部が揉み消してくれるからしてもいいのだけれど、アナタ達はそうもいかないでしょう?
それに、攻撃しないって約束してくれるなら、面白いこと、教えてあげちゃうけど、どうする?」
ウフフ、と嫌な笑みを浮かべながら交渉を持ちかけてくる。
こちらとしても、問題を起こすことはなるべく控えたい。仮に結貴がなにかしてくれていたとしたら、それを無下にしてしまう。
「わかった。約束してやる。だから、俺様に面白いことってのを教えやがれ。」
「なかなか素直じゃなぁい?やっぱり男の子は素直な方が可愛いわ。」
「俺様は別に男の子なんて歳じゃねェよ…」
困惑した様子でそう呟きながら、グレアを抱き上げ、攻撃の意思がないことを示した。
「今久宗が南の方へ行っててね。
何があったのかは知らないけど、随分興奮した様子で連絡してきたの。
荷物置いたら行くつもり。なんなら、着いてきてもいいのよぉ?」
「わりィけど、この後予定があんだよ。それに、テメェらと行動したくねェしな。」
「あら、そぉ?それじゃあ、またね〜。」
手をヒラヒラと振りながら彼女は去っていった。
「むぅぅ…なんなのアイツ…」
「ほら、そろそろ時間だぜ。約束の場所に行こうじゃねェか。」
ギルガメッシュはグレアの頭を撫でながら目的地へと歩き出す。
「うわぁ…すごい、おっきいね…。」
「あァ、俺様の城ほどじゃねェけどな。」
本当に合っているのか不安になるほど高いビルだ。
エントランスに入ると、結貴が出迎えてくれた。
「待っていましたわ!本日は泊まって行ってくださいませ。」
「ん、泊まるって?」
「あら、ここはお高いマンションですのよ。レギナ・ハイドリヒ名義で契約していますの。さぁっ、今晩はご馳走いたしますわ!」
そうして俺らは結貴の高級マンションで、フカフカのベッドと久々の日本風の味付けのご飯を堪能。
パンや肉、芋やブドウばかりを頻繁に食べていたので、かなり染みた。
曰く、「能力で出して調理しているだけで、食材はこの世界には存在しない」らしい。てっきりどこかで米を栽培しているのかと思ったが、違うようだ。
グレアはしばらくあのベッド以外じゃ寝れないだろう。ギルガメッシュも「ここ以外で寝たくねェ」と言っていた。もちろん、俺もそう思う。




