廻る未来
「こンな暗い森の中に何があるって言うンだよ…」
森の深く。葉が生い茂っているのか、それとも夜なのか…。
定かではないが、辺りは真っ暗だ。
森に足を踏み入れてからと言うもの、やけに凶暴で大きな動物に襲われる。
魔物は多くないが居る。凶暴な動物だって居る。ただ、コイツらはそのどちらとも違う。
「ツタに覆われてて、しっかり管理されてねぇ感じ。ここが目的地か。」
俺は恐れることなく、剣を持ち、ランタンを片手に、暗い廃墟の中へと歩いて行った。
「さぁっ!着きましたわ!早く行きましょう!」
馬車から跳ぶように降り、結貴は俺の手を引いて駆け出す。
こけそうになりながらも俺は走って行く。
ふと結貴がこちらを振り向いた。その瞬間、俺の頭の中に確かに俺自身が体験した、しかし知らない記憶が浮かび上がった。
「ねぇっ、ほら、龍司!置いてっちゃうよ?」
知らない場所、知らない名前、そして…知らない結貴の、本当の笑顔。
「リョージ…」
「…どうかなさいましたか?」
「それが、俺の、名前…」
道の真ん中、立ち止まり俯く俺、顔を覗き込む結貴
走って来たグレアとギルガメッシュ
振り返り、俺は二人の方を向く。
「思い出したよ、俺の名前。
とは言っても、苗字は思い出せてないんだけど…。
龍司。それが俺の名前だ。」
「ほォ…なかなか良い名前じゃねェか。」
「うん、リョージってカッコイイ!」
「ただまァ、俺様のギルガメッシュって名前には劣るがな!ダーッハッハッハッハ!」
「…どうして」
喜ぶ二人を尻目に、腕を組みながら結貴が口を開く
「どうして急に、思い出したのでしょう?」
「わからない…けど、頭の中にワンシーンが浮かんだんだ。
黒いローブで、フードを被った結貴がさっきみたいに俺の手を引いてた。こっちを向いて、笑顔で。
空は暗くて、雲に覆われてた。地面も灰色で、酷く荒れてたけど、心の底から幸せだって、思ったんだ…。」
「ゆき?」
「多分オルコスの名前だ。」
「それはまだずっと未来のはず…どうであれ、名前を思い出したのは良いことですわ。さあ、龍司、行きましょう!」
俺が名前を思い出してから、結貴の表情が柔らかくなった様に見える。
きっと、彼女が愛した俺に近付いていっているのだろう。
そう思うと、なんだか心が熱くなる。
「双子ならアッチだ!ソッチじゃねェ!」
再び駆け出した二人は仲間の声によって方向を変える。
思い出した名前は今後にどんな影響を与えるのか。
何故体験したことない未来を思い出したのか。
旅は続く。まだまだ続く。




