封を切る
「天袮も小此木も…考えがあめぇンだよ…」
ため息を漏らしながら文句を言いながら、俺は馬車に揺られている。
要塞国家の偉いヤツが手配した、俺専用車両で、今は地図の南側へ向かっている途中だ。
どうやら南にある森の中で何かが起きているらしく、国内で指名手配中の「キュクロス」「ギルガメッシュ」と関係があるかもしれないから調査してこいとのこと。
「アイツらは今北に居るっつーのに…。俺らの事を便利屋とでも思ってンじゃねぇのか?!」
ここに来てから、ここに来る前か…。ツイてない日々だった。
俺の人生は上々。
学校内での地位も、金も、女も、俺は持っていた。
ムカつくヤツは殴って黙らせる。根暗なヤローから金を巻き上げる。そうして仲間で集まってりゃ、自然と女が寄ってくる。
俺は無敵だ。誰にも負けなかったし、一瞬でも遅れをとったことはなかった。
「親に迷惑をかけたくない」「僕にはそんな勇気がない」と、復讐をしてこない根暗ばっかで、いい小遣い稼ぎになるからと何度も繰り返していたんだ。
信号待ち、仲間と話していた時。
すっかり会話に夢中で、周りの様子を把握していなかった俺は、後ろから走ってぶつかってきたデブに気付かなかった。
「お、おお、お前がっ…悪いんだか―――」
はね飛ばされ道路へと出て、その後、俺はトラックに撥ねられて死んだ。
あのことは、なるべく思い出したくない。
「死ぬッ…あ、あれ…?」
どれぐらい気を失っていたのかはわからないが、直前の尻もちをついた状態で目を覚ました。情けない話だ。
暗い部屋、青白い火の明かり。
顔が見えない奇妙な服を纏った男か女か分からないヤツらが俺を囲っていた。
「あはっ!情けなぁい…。アナタで最後ね。
さっさと説明して。私達に何をしたの?」
「テメェ…!」
「考えるより体が動くタイプか。頭の悪そうな男だ。」
俺は生意気な女を殴ろうとしたが、別の男によって止められた。
それにビビることもなく、女は髭の偉そうな男を怒鳴った。
「おお、申し訳ない。
皆様はこの世界に呼び出された異界の戦士なのです。
衣食住の全ては保証します。この世界の破壊を目論む男を、どうか殺していただきたい。」
何を言っているかさっぱり理解できなかったが、とりあえず誰かを殺せばいいということはわかった。
それに衣食住が保証されているなら、そこまで困ることはないだろう。
俺を含め、その場に居た四人全員、承諾した。
絶対正義の剣
衛藤久宗
魔魅の瞳
小此木美姫
活殺自在の短刀
山条天袮
そして…
激情の獣
秋原冬斗




