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与えられた物は「勇気」のみ!~最強スキルで旅をする~  作者: ド・ド・弩レイダー
第三章 誰も知らない夜明け
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月を咲かせた大輪の花

「おい、天祢(あまね)…!お前、負けたらしいじゃねぇか!」

「やめて、久宗(ひさむね)。アナタに天祢ちゃんを悪く言う権利はない。

そもそも、負けたからって怒るなら最初からアナタが行けばいいんじゃなぁい?

すぅっごぉく強いんでしょう?」

「俺はっ…」

「それともなぁに?もし負けたら悔しいから戦わないの?」

「もういい、二人とも。これは自分の弱さが招いた結果だ。」

「んーん、天祢ちゃんは強い。それに、戦いには得意不得意があるの。

天祢ちゃんが勝てない相手はアタシがどうにかしてあげる。だから、私が勝てない相手は天祢ちゃんが倒して?」

「チッ…勝手にしろ…俺は出掛けてくる。」

「…部屋に戻る。何かあったら呼んでくれ。」

「は〜い…

ほんっとに面倒…なんで二人にはアタシの力が効かないワケ?

チートスキルって何よ…バカバカしい。でも…」


翌朝、いつもの鍛錬から戻った俺とギルガメッシュは、グレアと一緒に地図を眺めるのだった。

「う〜ん、その蜃気楼(ファタモルガーナ)の入口ってどこにあるのかな…?」

「さァな。全部の場所を調べりゃあ見つかるだろ。俺様はいままでそうしてきた。」

「えっ、それじゃあ俺らおじいちゃんになっちゃうよ」

「てことは、それまでみんな一緒だね!」

「う、うん、そうだけど…

…そういえば、南側には国がないんだね。」

俺はぽつりと呟き、何かヒントが無いかとアレス・アイアースの持っていた手帳を開いた。

「ん…おい、日記の再開前、最後に訪れた場所はどこだ?」

「えっと…アレスさんの居た村かな。そこを出てから場所の名前が書かれたことは無いね。」

「ふ〜ん、なるほどなァ…。」

「えーっ、なになに、二人ともわかっちゃったの?私にも教えて!」

「そう、これはね…南の方に何かがあるってことだよ!」


三人で盛り上がっていたら、部屋のドアが三回叩かれた。

「なんだァ…?」

「あ、俺が出るよ」

立とうと膝に手をついたギルガメッシュを手で制し、俺は油断しきった状態でドアを開けた。

「ドーン!」

「うわぁっ!」

開けるなり俺へと飛び込んできたのは、結貴(ゆき)だった。

そのままバランス崩し、後ろへ倒れる。

「あら、ごめんなさい。わたくしぐらい支えられるかと…」

「支えられるけど…!急にやられたら無理だよ…!」

顔に影がかかり、何かと見上げると、ニヤニヤと笑うギルガメッシュと困惑した様子のグレアが俺の顔を覗き込んでいた。

二人を見ると、優しい表情だった結貴は少し緊張したような表情になり、立ち上がった。

そうして俺は立ち上がり、四人で見合った。

「えっと、こちら、ゆ…」

「わたくしはレギナ・ハイドリヒと申します。レギナでもハイドリヒでも、オルコスでも。お好きなようにお呼びください。」

「えー!オルコスって、ここの女王様だよね!」

「わたくしのこと、知っていただけていたのですね。」

彼女より小さなグレアと屈んで目線を合わせ、頭を撫でて微笑む。

まるで、姉と妹のようだ。

「で、女王様が何の用だ?」

「ええ、実は昨晩…」


「ほォ…あの日本人がテメェの所に…。」

「凄いね、勝っちゃうなんて。」

「ええ、もちろん。それなりに強いと自負していますわ。

あと、お聞きしたいことがありますの。どこかで双子を見ませんでしたか?

男の子と女の子で、水色の髪をした双子ですわ。」

そういえば、結貴の話の中に双子が出ていた。もしかすると、岩月さんの仲間の双子のことなのかもしれない。

「ああ、見たな。昨日いろいろ話したんだ。今は中央の国(パレオフルリオ)に居るはずだぜ。」

「皆様、この後の予定をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「俺様は別に。ここでやりたいことも終わったしな。」

「私も!なんもないよ!」

「うん、俺も平気。

じゃあ、皆で中央に行こうか。…ん?仮にも王なのに出て平気なの?」

「変装は得意ですのよ。ほら、良く見ていてくださいね。」

何が起きるのかと見ていると、俺らの影から黒いもやが溢れ出した。

びっくりして声を上げて飛び跳ねるグレア。

やがてもやに包まれ、そのもやが晴れると中から現れたのは彼女とは全くの別人と言える女性だった。

「今のわたくしはオルコスではなくレギナ・ハイドリヒですわ。それでは、参りましょう。」


その行動に多少の疑問を抱きながらも、俺らは中央行きの馬車に乗り込むのだった。

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