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与えられた物は「勇気」のみ!~最強スキルで旅をする~  作者: ド・ド・弩レイダー
第三章 誰も知らない夜明け
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二歩進んで一歩さがる

キュクロスの居る現在から遥か未来、魔王に支配された世界『ベルクヴェルク』

そして…そこから少し過去の日本

彼女は都会に産まれた。

父は彼女が産まれてすぐ、交通事故で亡くなる。

出産後の精神が不安定な時期であったこともあり、彼女の母静かに、そして確実に狂気に満ちていく。


母は宗教にハマっていました。

誰も知らないような、何ができるのかも分からないような神を信仰していらっしゃいましたわ。

全てが終わるまでは、わたくしもそれが嬉しくて、楽しく感じましたの。

『貴女は自慢の娘』『私には貴女が必要』

その言葉は全て、わたくしの性格や振る舞いではなく、身体に向けられていました。

気付けたのは、死んでから。


難しいことを考えることができなかった頃に母から言われた言葉は、今思うと、全て狂気に包まれていたように感じますわ。

『貴女は神の子を産むの』『子供が産めるようになったら、お母さんがちゃんと全部教えてあげる』『相応しい立ち振る舞いはこう。覚えて、お母さんに恥をかかせないで。』

まだまだ思い出せるものはあります。

全部言ったら、厳しいように、優しくないように、感じるかもしれませんが、それでもわたくしは、母が好きでした。


私が14歳になった頃。

ある日学校から帰ると、母が居るはずの家の中は電気がついていないで、暗かった。

特に疑問に思うことはありませんでした。買い物にでも行っているのだろうと、考えていましたの。

その日は満月で、とても月が近く感じました。

ベランダからマンションの前を眺め、母が帰ってくるのを待つ。

母はその日、帰ってはきませんでしたわ。


翌日から、身なりの整った綺麗な男性が我が家に住むこととなっておりました。

きっと、あの男性が母の信仰していた宗教の神なのだろうと、思います。

母はその男に最大限のもてなしをして、常に機嫌を取って、文句も指図も口にすることはありませんでしたわ。

男性が家に来てから二ヶ月、わたくしは目隠しをされ、拘束され、怪しげな部屋でその男に休む間もなく身体を犯されました。

体を休めることができたのは、男が食事をとったり、お風呂に入ったり、寝ていたりした時。

わたくしは食べることも、体を洗うことも許されませんでした。

その結果、当然死んでしまいました。


気が付けば、わたくしは真っ白な部屋に倒れていて、死んだのだとすぐに理解できましたわ。

ぼんやりと気持ち悪さを感じながら、母のことを考えていると、目の前に女性が現れ、わたくしのことを優しく抱きしめてくださいましたの。

「可哀想な子。でも安心して。

貴女にはもっと綺麗で素敵な人生を歩む権利があるの。

そこまでの道のりはきっと長いけれど、負けちゃダメ。大好きな人と一緒に暮らせる未来を掴む力が貴女にはある。

困った時は私が助けてあげるわ。

さぁ、疲れているでしょう。隣で見ていてあげるから、ゆっくり寝てちょうだい。」

女性はわたくしを抱きかかえ、ベッドへと寝かせた。

忘れていた母の温もりを感じ、思わず涙をこぼしてしまう。

そうしてわたくしは泣き疲れ、安心して、深い眠りにつきました。


その後目を覚ましたのは、空が青かった頃の、魔王が現れるより前の『ベルクヴェルク』でした。

『レギナ・ハイドリヒ』という名前で、暮らしは小さいけれど、大きな愛をくださる素敵な家庭の子供として、生まれ変わりましたの。

歌や踊り、そういった趣味を謳歌して、わたくしは成長していきました。

今でも、歌や踊りは大好きですわ!

ある時から、空は黒い雲に覆われていることが当たり前になっていきました。

その頃、「キュクロスと名乗る王が世界各地を制圧している」という話が多く聞かれるように。

そうして、わたくしの住んでいた村も制圧されてしまいました。


キュクロスが世界を掌握し、人々を管理するようになりました。

わたくしは彼の城へ連れられ、傍にお仕えするようになりましたわ。

彼はただの少年で、今までしてきたことが嘘だと感じるような性格でした。

それでも、そこでの生活は到底幸せと言い難く、『悪に寝返った女』と、人々から厳しい言葉を浴びせられる毎日で、ついには産まれなかった方が幸せだと思えるようになってしまいました。

それからわたくしは、「過去に戻りたい」と強く願うようになります。

彼と触れ合っている時にも。

一瞬、思考にノイズが走り、目眩がしました。

気付けばわたくしは空が青い頃のベルクヴェルクに、成長したままの姿で立っていたのです。


東奔西走、世界各地を巡り、魔王の生まれる原因や生まれる場所、全てを調べあげましたわ。

そこまでで57回ほど時間遡行をいたしました。

その後何回も何回も時間遡行を繰り返し、ようやく魔王が生まれることを未然に阻止することに成功いたしましたの。

未来を変えることができたと、平和にまた暮らせると、元の時間へと戻りましたが、結果は何も変わらず。

心が折れ、過去の世界に入り浸っていた頃、わたくしの目の前に双子が現れました。

名前を聞いても教えてくれませんでしたが、話し相手として、とてもありがたい存在でしたわ。

ある時、何回過去に戻っても二人に会えなくなってしまいました。

しかしまたある時、再びわたくしの前に姿を表しました。

「お姉さんの願いを叶えてあげる。」

そう言い、わたくしの意識を身体から抜き取り、この世界で、日本に居た頃の身体をベースに作った器へと入れたのです。


「お姉さんの未来は決まっている。過去を変えたとしても、新しい未来が生まれるだけで、お姉さんが居た未来が変わることはない。

変えるのは過去じゃなくて、未来なんだよ。その未来に直面する時に使える手段を増やすために過去へ走るんだ。

やり直したくなったら、またあの場所に来て。

僕たちは、どの過去、どの未来でも同一の存在だからね。

僕からアドバイスをひとつ。一人より、二人だよ。」

そうしてわたくしは、この世界で何かを変えようと、必死にもがきましたわ。


やっと気が付きましたの。


ねぇ、貴方…いいえ、キュクロス。


わたくしが、何があっても絶対に傍に居てさしあげます。


ですから、どうか、もう寂しがったりしないでください…。

文章力が足りなく伝わりにくかったかもしれません。

簡潔にまとめると


日本に居た頃の母は宗教にハマっており、結果的にそれが原因で死亡。

ベルクヴェルクでは良い暮らしをするも、魔王キュクロスが世界征服してしまい、辛い人生へ一転。

思いが力になり、時間遡行の能力を手に入れる。

どうにか魔王誕生を防ぐも、未来は変わらない。

過去の世界で不思議な双子と出会い、キュクロス達が現在居る世界へと訪れる。

一人より二人。

常に寄り添って、仮にギルガメッシュやグレアとはぐれても大丈夫なようにしてあげるため、キュクロスにプロポーズする。


と言うことです。それでは。

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