不足を補うために
道化師を殺し、問題も終わり、俺達は数日アリアさんのお世話になった。
彼女曰く、西の国には望んだ姿に身体を変えてしまう結界が張られていたという。
この国の人の多くが動物になっていたことが少々不安だが、俺もギルガメッシュもグレアも、何も変化がなかったのが不思議だ。
「それで、この後はどうするの?」
三人で顔を合わせ、少し考えた。
一度中央に戻るか、そのまま北の国に行くか。
あれよこれよと話し、ギルガメッシュの一言で決まった。
「新しい鎧が欲しいから中央に戻る。」
今の彼は皮の防具を着ている。
たしかに、その姿はギルガメッシュらしくないな、と思いながら俺は頷いた。
中央行きの馬車を待っている時、グレアとアリアさんが二人でこっそりと話していた。
特に気にはしていなかったがその後、馬車に乗る前に、グレアの髪にリボンが着いていることに気付いた。
くすりと笑うアリアさんと、小さく恥ずかしそうに髪を弄るグレア。
ギルガメッシュがその光景を見て、グレアの頭を撫でながら「可愛くしてもらってよかったな。」と言っていた。
中央に着き、俺はポーションを買いたかったので、二人と分かれて薬屋へ行くことにした。
木でできた重い扉を引いて、中へと入っていく。
扉の動く音を聞いて、奥から老婆が姿を現した。
「こんにちは!」
「はい、どうも。
あんた、今中央じゃ有名だよ。神殺しの罪人としてね。
変なやつに襲われたりしなかったかい?」
変なやつとは、おそらく転生者たちだろう。
そういえばギルガメッシュもそんなことを言っていた気がする。
「まぁ、一応…。撃退しましたけどね!」
その言葉を聞いて、老婆は目を見開いた。
「あんな化け物じみた三人組をかい?
自慢じゃないがね、人の強さを見るのは得意なんだよ。
どうもあんたにゃ勝てそうに無かったけどねぇ。」
「俺だって強いんです!メキメキ成長してますから!」
そう言うと、安心したように笑った。
「大事なのは気持ちだよ。最後まで自分を信じる気持ちを捨てちゃあダメだからね。」
その後次の行き先を話し、何本かポーションを買って店を出た。
まだギルガメッシュたちが居るかと思い、俺は武器屋を訪れた。
中ではプトレマイオスさんとギルガメッシュが何やら会話に熱中しているようだった。
「グレア、どうしたの、これ。」
つまらなさそうに座っているグレアに声をかける。
「なんかね、武器の話が始まったら盛り上がっちゃってね、ずっとこんな感じ。」
気の毒に思っていると、二人がこちらに気付き、会話は中断された。
「おぉ、キュクロス。遅せェじゃねェか!」
「おや、二人はどう言ったご関係で?」
「一緒に旅してんだ。俺様と、キュクロスと、グレア。」
そう言うと、ギルガメッシュはグレアをひょいと抱き上げた。
驚いた表情を浮かべるも、すぐに満更でもなさそうな笑顔になった。
「そうだったんですね!たしかに、私の加工したネックレスを身につけていますね。」
こくこくと頷き、手をパンと叩いて、彼はこう言った。
「よろしければ、今夜泊まって行きませんか?食事も用意しますよ!」
俺は驚いた。グレアも驚いた。ギルガメッシュも驚いた。
真っ先にギルガメッシュが口を開き、今日はお邪魔することとなった。




