相性アンドタクティクス
「テメェ、仲間割れか?」
ゼノンは驚く暇もなく死んだ。
胸を貫き、ずるりと引き抜かれた腕から崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。
利用された挙句、仲間に殺されるたァ、ついてねェ男だ。
「わかっているんDeathよ。貴様がこの戦いの後に私を殺そうとしていたことぐらい…!!」
状況が飲み込めないと言った表情でキュクロスがこちらへ駆けて来た。
「なんで、なんで仲間を殺すんだよ…」
「仲間…?はて、なんの事でShowか…。
元より、あんな男、信用に値しません。」
まるで人格でも作り替えられたかのように話を始める。
「あの人は、あの御方は…頼れるのは私しかいないと言っていたというのに!
こんなどこの馬の骨ともわからないような男に頼って…!」
「そりゃ、騙されてたんだよ。
ちょっとおだてられて調子に乗っちゃったんじゃないの、お前。」
キュクロスは先程の動揺が吹っ飛んだように、どこか自虐気味にそう言い放った。
その発言に気分を悪くした道化が手をかざし、キュクロス目掛けて弾を飛ばした。
「やばっ…!」
俺へと放たれた弾をすんでのところでギルガメッシュが受け止める。
「ったく、反撃されることも考えねェで相手のこと貶してんじゃねェよ…。」
ギルガメッシュは自分の手を確認すると、俺を再びグレアの方へ放り投げた。
「おい、グレア、交代だ!
コイツはキュクロスよりテメェの方が相性が良い。」
勝ち負け、大きく言えば生死を分ける戦いなんだ。悔しいけど、出ていって死ぬわけにはいかない。
「はーいっ!
キュクロス、無理しないで、今はゆっくり休んでね!」
ぴょんぴょんと小さく跳ねながらギルガメッシュの元へ走っていく。
隣でアリアさんは、杖を出し、何やらブツブツと呪文を呟いている。
グレアはギルガメッシュに耳打ちをして、ギルガメッシュはそれに頷いた。
いったい、何が起きるのだろう。
「何故、彼を引っ込めたのDeathか。
戦場に女性を駆り立てるなど、酷いことだとは思いませんか。」
「思うわけねェだろ。コイツはテメェの何千倍も強ぇんだ。
それに、男をピンポイントで即死させるようなモン使ってくる相手に男ぶつけんのは馬鹿のすることだ。」
「ほう、見抜いていたのDeathね。」
「この俺様の眼がありゃあ、楽勝も楽勝。」
「ね、早くしよ!絶対に…ぶっ殺す!!」
幼さ、あどけなさとは裏腹に、強い憎悪を感じる。
何かが憑いてるかのような迫力。
グレアは絶対に怒らせない方がいい。
そんなことを考えながら、俺はその戦いを見ている。




