失楽性ディスコード
道化師の記憶を見た時、グレアとの記憶があった。
それは決して綺麗とは言えず、汚いものだった。
出会ってからたった数日、それでも俺は彼女のことを家族のような、大切な仲間だと思っている。
だから、こいつは絶対に殺す。
仲間を傷つけるやつは誰だろうと許さない。
怒りに駆られ、半ば狂乱状態で攻撃を仕掛ける。
なぜ急にここまで怒りが爆発したのかはわからない。
それでも、目の前の敵だけは、倒さないといけない。
「見えてます、見えてますよぉ。
そんなちゃちな攻撃で、面白みに欠けますね。」
なにか一瞬でも隙を作れれば、仕留めることができる。
怒りを抑えろ、冷静になれ。
「そうか…!」
合図で刃を道化師の心臓目掛けて飛ばす。
攻撃を防ぎながら、少しずつ反撃へと転じて行く。
「言ったでShow…見えていると。」
「違う…狙いは直接攻撃じゃない…。
見ろ、お前の後ろにある刃の輝きを!!」
いくつもの刃で道をつくり、虹を反射させる。
道化師の攻撃を利用したのだ。
この虹がどんな効果を発揮するかはわからない。
それでも、利用できるものは利用していかないと勝てる勝負にも勝てなくなってしまう。
「あ…え…?何もない…何も見えない…。」
崩れる様に膝をつき、青ざめた顔に触れている。
いったい、どんな反応が起きたのだろうか。
「どうした、道化師。立てよ。」
「あぁ…しばしお待ちを…。」
ゆっくりと立ち上がり顔を上げた時、その顔は怒りに満ちた恐ろしい顔になっていた。
振り返り、ゼノンの方へ勢いよく駆け出す。
その少し前、ギルガメッシュはゼノンの守りを崩し、とどめを刺すということを繰り返していた。
「ずいぶん機械の部分が減ったじゃねェか。死なねェのはそれのおかげか?」
「あぁ、どうせ君には勝てないし、教えてあげる。
この状態では、七回まで死ぬ事ができるんだ。
ただ、八回目、トドメを刺されたら僕は本当に死ぬ。」
今は六回目、あと二回でこいつを殺せる。
「なァ、聞かせてくれよ、あの女のこと。」
「君も興味があるのか?」
「馬鹿言え、俺様はあんなガキに興味ねぇよ。
絶対服従の不思議な力。それについて詳しく聞きてぇんだ。」
「そのまんまさ。絶対服従の不思議な力なんだ。
何よりも彼女が美しく、気高く見える。好きになってしまう。
馬鹿馬鹿しいかもしれないが、僕はそうだった。」
「俺様がかかったのとは別の力か…。」
俺様はただ、動けなくなるだけだった。
それとも、同じ力だが、こいつと俺様では出る効果が違った、とかだろうか。
「なるほどな。おもしれぇ話、ありがとよ。
さて、あと一回でテメェは死ぬ。どうする?」
「戦うとも。彼女に心を捧げた事実は変わらないからね。」
「立派だな。さぁ、行くぜ、ゼノン。
覚えとけ。テメェを殺す相手はこのギルガメッシュ様だ!」
「最後まで諦めないよ。
ギルガメッシュ、君の首は、彼女のために持って帰る!!」
お互いの攻撃が交差する瞬間、ゼノンは後ろから貫かれ、心臓を潰された。




