強迫性クラウン
両親を戦争で亡くし、西の国において重要視される呪術の才能もなく、路地裏でひっそりと暮らしていた少年。
一人の男に拾われ育っていく中、男の家に居る奴隷の存在に気付いた少年は、男が好んでいる「面白いもの」を学び、行うことで自分の価値を手に入れた。
男は残忍かつ傲慢な性格で、気に入らないと暴れ、すぐに手をあげる困った人物であった。
男に「お前もやってみろ」と言われた少年は、断った後が怖く、初めて人を殺した。
それ以降、少年の考えは歪み、人の痛みや苦しみなどどうでもいいと言った様子で振る舞うようになる。
やがて成人になり、彼は
人を殺しては、溢れ出る朱に見蕩れる。
苦悶の表情を見て、笑みを浮かべる。
嗚呼、人の叫び声さえも心地よい。
そんな彼に名は、無い。
両親が残したものは体のみ。
心など、とうの昔に壊れている。
敢えて、名乗るとするのなら、「道化師」だ。
「っく…なんだこれ…」
虹は俺に道化の記憶をまるでその場で経験させるかのように見せつけた。
その後、まるで昔から知っていた、体験したことがあるような錯覚へと陥る。
「あれ…?はは、俺、なんで涙なんか…。」
涙が止まらない。
悲しくて、淋しくて、たまらない。
「チッ…。おい、グレア!アリア!こいつは任せた!」
動けない俺を二人の方へ放り投げ、ギルガメッシュはゼノンと道化師の前に立ちはだかる。
「まとめてかかって来いよ。テメェらの力、俺様が全部受け止めてやる。」
「キュクロス、泣いたまま放心してるけど、そっとしておいた方が良いのかな?」
「そうね、心が傷付いてる時はそっとしておくのが一番。」
「私達は立ち直れるまでそばに居るからね!」
二人の優しさが沁みる。
だが、今気にするべきところはそこではない。
あれはなんだったのか。あの虹の正体は?
「なぁ、グレア。俺の中に今ある悲しみだけ殺すことってできるか?」
「えっ、どうだろう?うーん、うん!
できる、できるよ!できて当然!」
その頃ギルガメッシュは、一人で二人の敵を相手にしていた。
「なァ、テメェ、機械になったけど何がどう変わったんだ?」
「速さと力、そして見た目だ!」
「隙だらけDeathよ!!」
正直、鬱陶しい。
かなりの速さで上下左右から攻撃してくる。
「あぁ、もう、うぜェんだよ!!」
渾身の右が道化の頬に炸裂。かなり吹っ飛んだ。
「な、なにするんDeathか!」
「うるせェ、俺様とテメェらは敵同士だ!殴って当然だろ!!」
「ん…たしかに、言われてみればそうですね…。」
馬鹿か、コイツは。
「んっ?!何かが口の中に!なんDeathか?!」
「一粒、二粒、三粒…。
さぁ、祈るのよ。そこは泉の存在しない冥府だから。
それじゃあ、2分間の冥府旅行、楽しんで。」




