高稼働性アンドロイド
「あぁ!太陽がこんな近くまで!
本当ならフィールドを外まで伸ばしても良いのですが、せっかくなので…」
マジックを行う素振りを見せ、目の錯覚を利用し、太陽へ手を伸ばす。
そうして道化の指に挟まれた太陽は掌でビー玉のように転がる。
太陽が無くなり、辺りは一気に暗くなった。
「それを離しなさい!
何があっても盗んでいいものではないの。どんな代物かわからないでしょう!」
アリアが声を上げ、杖を構える。
「はぁ。何が不満なんです。
明るさですか?寒さですか?
…それでは、マジックでこちらを消してしまいまShowか。」
小さな太陽を掲げ、これみよがしに口へと運ぶ。
道化はニタリと笑い、それを飲み込んだ。
「マジックって?」
「人の思い込みとかを利用して、あたかも不可能なことが起きているかのように見せるものだ。」
「私の力みたいなこと?」
「それは…実際に不可能を可能にしてるからちょっと違うかもなァ。」
呑気なものだ。
とは言っても、俺もあの行為がどれだけ大きなものなのか理解していない。
青ざめて震えている彼女を見れば、凄く良くないこと、ということがわかる。
俺の頭でこれ以上のことはわからない。が、とにかく目の前の敵を倒せばいいのだろう。
「おぉ…見える…わかる…!
虹が教えてくれている…!…まず、貴方。」
俺を指さし、気味の悪い笑みを浮かべる。
「貴方は刃で胸を貫かれて死ぬ!」
「な…なんだと…」
いったい、何が奴の身に起きているのだろうか。
次はグレアの方を向いて口を開く。
「貴女は苦しまずに即死、Death」
「痛くないんだ!よかったぁ。」
動揺も恐怖もしない様子を気に入らないのか、道化は鼻で笑い、背後に元のサイズと同等か、はたまたそれ以上の大きさの太陽を出現させた。
「一人であの大きさを作り出すなんてバカげてるわ!」
「ちょ、ちょっと待って、アリアさん。
俺達なんにもわかってないんだけど、説明してくれたりしないかな?」
「貴方達、アレが何か知らないの?学校で習わなかったのかしら。」
「行ってたけど、こことはちょっと違う場所。」
「俺様は一回説明したけどコイツが忘れてるだけ。」
「学校?」
「…そう。説明は後。まずは目の前の状況をどうにかしましょう。
そうしたらわかるまで何度でも教えてあげる。」
「さぁ、準備はできましたか?」
「おう!準備はできてるぜ!」
「貴方ではありません。」
「とっくにできてる。話が長いんだよ…。」
そこには、元の姿とは似ても似つかない、無骨な機械となったゼノンが立っていた。




