魔性の女
俺達と彼女達を隔てる壁を出したのはグレアだったようだ。
「どうやってそんなことを…?」
「やってみたらできたの。大事なのは想像力だもんね!」
にこっと笑顔をこちらに向け、自慢げに語る。
当たれば一発即死の力をどう扱えば、このように壁を出せるのかはイマイチ理解できないが、本人が実際にしてみせたことなのだ。グレアの想像力は立派だ。
「チッ…ねーえ、天祢ちゃん?
あそこに倒れてる男拾ってきてくれる?あいつ、生きてるでしょ?」
そう言って彼女はゼノンを指さす。
てっきり死んでいるものだと思い、反応が遅れた。
おそらくわかっていても彼は守れなかったかもしれない。
忍者の様な男が一瞬にして彼を奪い去ってしまった。
「起こして。」
彼女が男に命令すると、男は強く腹を蹴った。
「ぐぶっ…」
ゼノンは強制的に気絶から起こされる。
彼女がゼノンの前にしゃがみこみ、語りかけるように口を開く。
「アタシは小此木 美姫。
実は命を狙われちゃってて…。特別にすっごぉいのあげるから〜、アタシの為に命、捨てて?」
答えを待つことなくゼノンにキスをした。
「あら?天祢ちゃん、羨ましいの?ちゅーしてあげよっかぁ?」
「くだらん…。」
キスをされた衝撃で放心状態なのかはわからないが、ゼノンは一向に動かない。
「ンフフッ!道化ちゃんと仲良くね?」
額をデコピンし、小此木と男は去っていく。
「ギルガメッシュ!」
「おうよ!」
その二人を逃がすワケにはいかないと武器を構えて走り出す。
攻撃を仕掛けようとしたとき、俺らの攻撃は一本の剣に防がれた。
「よくも影なんかに閉じ込めてくれましたね…!
お前ら全員まとめてここで死ぬんDeathよ!ハーッハッハッハ!」
影から現れた道化は相当怒っている様子なのが見て取れる。
噛ませのような扱いだったから、仕方ない。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」
ぼそりと呟く声に気付き後ろを振り向く。
ゼノンが立ち上がり、こちらを指さした。
「命に代えてでも、お前を、お前らを殺す。」
目のハイライトは消え、こちらの言う事なんか聞かずに今でも飛びかかってきそうだ。
「いやはや素晴らしい!
一緒にコイツらを殺しまShowか!
美しい死に場所を用意してさしあげます!
エーラ、天空の城!」
地面は揺れ、大きな音で叫んでいる。
勢いよく縦に伸び、円柱のバトルフィールドが出来上がった。




