絶望性エンプティ
「キュクロス、テメェはどっちと殺りてぇんだ?」
「俺は…」
「どっちもー…とか、いいんじゃない?」
アリアが後ろから顔を出し、提案する。
どっちもだなんて、難しい話。
だが、こうして弱気になっていては勝てる勝負も勝てない。そう考え、俺は決意する。
「どっちも、やらせてくれ。」
「おう!道化は俺様が止めとくから、好きなだけやれよ!
負けたらただじゃおかねェからな?」
剣を強く握り、呟く。
『纏まれ』
「…いや、違うな…。」
『集え』
「うん、いい感じ。」
「…なにやってんだ。」
口上はカッコイイ方がいい。男子諸君、わかってくれるね。
剣は僅かに風を吹かせながらいつも通りの形を保っている。
影はこちらを指差し、口を開いた。
「オレがオ前を倒してヤル。」
「っ…!?」
ノイズがかかっているが、間違いなく俺の声だ。
雄叫びをあげ、剣を両手で持ちながら俺に向かって走り出した。
「お…オオ…おオおおおオお!!」
今まで戦ってきた敵の中でも段違いに怖い。
だが、俺はここで立ち止まったりしない。
俺には何ものにも代え難い最強スキルがあるから。
「来い!俺はお前に、負けない!!」
長い時間、一進一退の攻防を続けている。
しかし、道化の言った通り、影の持つ武器は時間が経つにつれ、強くなっていく。
今使っている岩月さんの剣は、それに耐えている。
空振りした時に地面を抉る様な攻撃を耐えるなんて、異常さが窺える。
戦いはと言うと、中々決定打を与えることが出来ず、お互いがボロボロだ。
「どうすれば勝てるんだ…?」
アレは俺と同じ力を持っていると言っていた。
つまり弱点も同じ…かはわからないけど
ギルガメッシュやグレアはこんな時どうするだろうか。
『斬れば死ぬ。斬れないなら叩け。叩けないなら貫け。貫けないなら、締めろ。全部やりゃあ、答えは出るだろ。』
これなら確実だ。でも少し難しい。
グレアは?
『どうって…ぶっ殺す!!ってやる。』
そうだった、グレアは感覚派だ。
「もウ、終ワラせル。」
『闇カラ逃れル者無シ。深い絶望に染マり、影の世界で滑稽に踊れ。』
『深くて暗い無間地獄』
持っていた剣を地面に突き刺すと、俺の方へ影が伸び、無数の手が足を掴んだ。
「キュクロス!」
こちらへギルガメッシュが視線を向ける。
「余所見とは、関心しませんね…。
彼は私の物。私を倒すことができれば、貴方の仲間を出してさしあげまShow!」
俺は抵抗虚しく、そのまま影へと引きずり込まれていってしまった。




