奇襲性トラップカード
もうダメだ。情けない。
いや、そんな弱音を吐いてる場合じゃない。
グレアもどこかで戦っているかもしれないのに倒れたら加勢できないし。
「ね、ねぇ、そろそろ止めてあげないと…」
「アイツは…こんなんじゃ負けねェはずだ。」
何か解決策を考えないと。
幸いこいつのパンチが軽いから今は何とかなっているが、残りの回数分殴られた時、俺は立っていられる自信がない。
そうだ、こんな攻撃、痛いはずない。
この程度で痛みなんか感じなくて当然なんだ。
「どうかしたのか?落ち込んだような顔して。」
「あぁ…痛てぇよ…。」
痛くない瞬間があったが、速攻で効果が切れてしまった。
どうやら、ここではその力は封じられてしまうようだ。
「まだまだ、倒れないでくれよ。」
そういえば、なんでミハイルは俺のことをずっと殴っていられるんだっけ。
ターン制の戦いだったような。
そして、俺はふと閃いた。
「へっ。上等…!
俺は次のターン攻撃しない代わりに、防御力二倍だ!」
相手は二度目の宣言を自ら封じた。
つまり、俺は安全に効果の宣言ができる。
予想通り、この宣言は通り、おかげでミハイルの攻撃は痛くない。
最後まで耐えきれた。
反撃開始、と言いたいところだが、制約のせいで俺は攻撃できない。
その次のターン、ミハイルは運良く六を出したが、疲れていたのか痛くなかった。
「さぁ、ミハイル!正真正銘、反撃開始だ!!」
勝つつもりだからこそ俺にかけた効果のおかげでサイコロを三つ振れる。
どうせなら、一撃で終わらせたい。
意識がブッ飛ぶほど強く殴ってやりたい。
「これで仕留められなかったら俺の強制敗北になる代わりに…
そうだなぁ、それぞれを指数にするとかでいいか。俺数学苦手だから効果小さい方選んじゃうかもしれないけど。」
攻撃力を大幅にアップさせる作戦だ。なかなか悪くない。
「よーし、行くぜ、ミハイル。
何倍か計算できないけど、三の五乗をさらに六乗した数倍の攻撃力だ!」
「だいたい200兆…。
これじゃ、跡形も残らないね。あぁ、こわいこわい。」
「随分他人事だな。まだ何か隠してるのか?」
「そんなのどうでもいいよね?ほら、早くして。」
何か狙いがあるのか、考えを張り巡らせるが、俺の頭で何か思いつくようなものはない。
どちらにせよ、次のターンにはどっちかが勝ってる。それだけで充分だ。
「変なこと考えるよなァ…。
指数指数って…覚えたてのガキみてェ。」
「単純にかけるより豪快だから私は好き。」
時おり、ガヤの声に耳を傾けてみたりする。
だいたいギルガメッシュが何か言ってるのだ。
ギルガメッシュの言っていたことを忘れるために頬を叩き、覚悟を決め、殴りかかる。
「待ってました!罠カード、ハノ。」
罠?ハノ?
そんなことを考えているうちに、ある事に気が付いた。
殴る気を消された。
俺の都合なんざ知るはずもなく、無情にもこのターンは終了した。




