因果性イレイザー
「はぁっ…はぁっ…どこだろ、ここ。」
思わず逃げ出してしまった。
二対一で、仮にも相手はギルガメッシュに勝っているのだ。
女の方は勝てそうだが、男の方は勝てる気がしない。
宛もなく真っ暗闇を彷徨い続けるのはもう嫌だ。
数日前まで当たり前に過ごしていた場所は、もう少し明るかった。
「ここで死ね…」
いきなり背後から向けられた殺気に咄嗟に反応し、身を翻すと、先程の二人組の一人、男の方が立っていた。
暗くてよく見えないが、確かにそこに居る。
昨日、ギルガメッシュに戦い方を教えてもらった時、気配を察知する能力が長けていると言われ、僅かな時間だったが、更に優れた物にしようと頑張っていた。
明確な悪意、殺意には対応できるようになったが、見えない人の気持ちまではわからない。
見えている人の気持ちならわかるのか、と言うのは愚問だ。
「ねぇ、名前、なんて言うの?私はグレア。」
「くだらん。これから死ぬ者の名前など、どうでもいい。」
「そう?私は知りたいな、これから死んじゃう人の名前。」
翠の綺麗なネックレスを握り、小さく呟く。
「…砕け散って死ね。」
言葉通りバラバラに砕け散ると、私の周りを漂う。
キュクロスから貰った不思議なアクセサリーだ。
僅かな時間だが、いかなる攻撃も無効化してくれる。
「奇妙な力だ。この手で殺してやろう。」
「それ、私が言いたかったんだけど?」
チャンスは一度きり。
たったの一度でも攻撃が見切られたりしたらスグ逃げる。
できない、じゃない。やらなきゃ何も変わらないんだから。
さっきの逃げ腰な考えは捨てて、真っ直ぐ、戦わないと。
「この恐怖、殺す!」
パンパンと顔を叩き喝を入れると、不思議なことに、なんでもできそうな気がしてくる。
もしかしたら私、本当になんでもできちゃうかも。
「くだらないおまじないは終わったか?行かせてもらうぞ!」
待っててくれるなんて、意外といい人…なんて考えてる場合じゃない!
このアクセサリーがあるから、多少強引でも行ける。
何度か攻撃を受けたり避けたりしながら、僅かな隙を探る。
痛みは無い。これなら平気だ。
「人の望む世界に、そのような力は不要だ。」
真っ直ぐ突きが来ると予測し、回避。
そして、臆さず剣を掴む。
「なっ…!なぜそんな無謀な行動を…!」
「折れて死ね!!」
必死になって叫ぶ。
私の叫びに世界が応え、彼の剣は剣身が真っ二つに折れて、地面に落ちた。
一定の距離を保ち、お互いに見合う。
時間もまだあるし、もしかしたら勝てちゃうかも。
「どんな術を使ったか知らんが、気味が悪い。
だが、刀など使わずとも人の処理など容易いことだ。」
「そっちが来ないなら、こっちから行っちゃうよ?」
「構わん。最後に立つのは俺だからな。」
私なんて余裕って感じ。
「それじゃあ、覚悟してよね。」
ダメなら逃げる。それだけを意識して戦えば平気。
絶対に一撃喰らわせてやりたい…!




