単純性スローデュエル
「俺かよ…!」
バトルマスで指名されてしまった。
それもそうだろう。今一番ライフが少ないのは俺。
もしかしたら一気にライフを削るバトルがあるかもしれないし。
場合によっちゃ、全員から狙い撃ちされるかもな…。
「バトルのルールは単純明快!
シンプルな殺し合いですっ!チマチマしょうもないゲームしてもつまらないですからねぇ…。」
ボードゲーム開催してるやつが何言ってんだ。
とは言っても、殺し合いって…
「負けても死にはしません。削られるライフは2000です。全力でどうぞ!」
「よぉ〜し、テメェ、名前は?俺はアレクサンドロスだ!」
「よろしく、アレクサンドロス。俺はキュクロス。」
「多少は骨がありそうだな。他のヤツらだと一瞬で終わっちまいそうだ!」
普段からギルガメッシュに鍛えられてる、頭に体がついて行けば、勝てるだろう。
いや、油断大敵だな。そういう考え方はやめておこう。
「はぁっ…はぁっ…着いたっ…!」
私はギルガメッシュの骨を握ったまま、中央の何かありそうなテントへと辿り着いた。
中へ入ってみるが、何も見えない。真っ暗だ。
「…!」
何かが居る。
私の後ろに何者かが立っている気配がする。
距離を取れるか?いや、下手に動くのは良くない。
「動いたら殺していた。
俺はここから離れるが、そのまま真っ直ぐ進め。」
後ろからそう囁かれると、背中を押され、結局そのまま歩き出した。
「ぐっ…なんて強さだ…」
この男、強すぎる。
本気のギルガメッシュ…は強すぎて話にならないだろうが、普段俺と手合わせしてる時のギルガメッシュより数段は強い。
これは、思考をノータイムで動きに反映しないと勝てないな。
俺ならできる。できないとダメなんだ。
俺だって強くなった。できて当然だ!!
「おっ、動きが変わったなぁ!でも、俺はこんなもんじゃねぇぜ!」
更に動きが機敏に、一撃が重くなる。
追いつけ、俺の腕…俺の脚、俺の思考…!
「これはぁ…アレクサンドロスの勝ちですねぇ…。」
「うん、そうだろうね。俺もそう思う。」
「勝負は最後までわからないもの。逆転の可能性だってあるわ。」
「そう?お姉さん、こういう勝負とか好きだったりするの?こっから出たら、話聞かせてよ。」
「こういうのに興味はあるけど、アナタみたいな男には興味無いから。」
攻撃の激しさが増す一方、俺の体は重くなっていっている。
だんだんと追い詰められ、最後の一撃を受けそうになった時だった。
「っ…!なんだ…これ…!」
世界の動きが遅くなっている。
「これなら、まだ戦える!!」
「なっ?!あの状態からガードを…?!」
「ふふ、ほらね。負けはまだ決まっていない。」
この調子で反撃を…って…
「あれ?」
「偶然か…カッコつけちゃったのに…。」
次の瞬間、俺は情けない姿を晒すのだった。




