可塑性カタストロフ
やけに静かだ。
もっと、監視とか置いてないのだろうか?
そもそも、こんな所に来る方が稀有か…。
「書斎…。こういう所に隠し物があったりすんだよな!」
俺は嬉々として書斎へと足を踏み入れた。
「見つからねぇ…!本を引いたら扉が出るもんだろ…!」
手当り次第触ってみたが、何かがある様子はない。
隠し扉は無いということか…。
流石に及ばないが、これだけの本があるのを見ると、中央の図書館を思い出す。
ルヴナさんの記憶というか残留思念というか…を見た時は、たしか脚立を…
「おっと…」
台に積まれていた本を落としてしまった。
「ん…?」
落ちた本を取ろうとした時、あることに気付いた。
この棚に動かされた形跡があると。
「よい…しょぉっ!やっぱり!俺冴えてる…!」
地下へと繋がる、恐ろしく不自然な階段が俺の前に姿を現した。
ギルガメッシュは無事だろうか。
足を階段にかけた瞬間、頭の中を過ぎる。
死なないことはわかっているが、やはり不安になってしまう。
きっと他の部屋を見てるだけに違いない。
俺は自分にそう言い聞かせ、勇気を出して階段をおりて行った。
まるで洞窟、洞穴のように岩肌が露出していて、掘られてできたものなのだと考えられた。
「これは…檻…?」
そちら側とこちら側をわけ隔てるように設置された鉄格子。
開いたままの扉があり、中には何もない。
「ここに超極秘生物が居たりして…。な〜んて、居るワケないか…。」
特に何も無かった。
次の部屋へ行こうと階段をのぼり、書斎を出る。
部屋のドアを開けると…
「っ…!誰だ、貴様!」
監視が居た。
お互い驚いてしばらく固まってしまったが、そんなことしてられない。
俺は来た道を戻るように走り出した。
「おっ、キュクロス!そっちに居たのか!
いやー、探したんだぜ?
てか、そんな走ってどうしたんだよ?」
「一旦ここから出るぞ!!」
通路の奥から大声で話しかけてくるギルガメッシュを捕まえ、屋敷の外へと走り出す。
扉を抜け、門を抜け。白ポプラの木に見つめられながら道を走る。
「ふぅ…ここまで来れば安全だな。
実は監視の奴らが大量に追いかけて…あれ…?」
俺の手に確かにギルガメッシュの腕が握られているが、本人が居ない。
「なにやってんだよ俺は〜…!」
無理に引っ張ったから抜けてしまったのだろう。
道端に座り込んでギルガメッシュが来るのを待った。
「ったくよォ…テメェってヤツは…」
ギルガメッシュに逃げ出した理由を話し、腕を返す。
「とりあえず、一旦戻ってあの屋敷の地図を描こう。
詳しくなくても、形さえ把握できれば充分だろ?」
そう言って、俺らは西の国へ戻って行った。
「申し訳ございません、オー様。侵入者共を逃してしまいました。」
「何をしているんだ…!!
この役立たず共め!!」
「あの二人が、助けてくれるのかな。私のこと。
毎日祈ってたのが…届いたのかな…。」




