悪質性ドミネーター
ため息ひとつついて、俺も大通りへと歩いていく。
あんな少女がひとりぼっち。
保護してあげられたりしないだろうか。
路地から出ると、衝撃的なシーンが俺の目に映った。
「っ…!ヴロミコー!」
拘束され、必死に声にならない叫びを上げるヴロミコー。
口をパクパクさせているが、やはり何も聞こえない。
「おいっ…!お前…!」
スーツの男から彼女を引き剥がそうとするが
少し鍛えてるだけの俺と、屈強で大柄な男ではどちらが強いかなんて一目瞭然。
俺はあっさりと跳ね除けられてしまった。
抵抗虚しく、最後までヴロミコーを救えなかった俺は、とぼとぼと宿へ戻ってきた。
「おっ、遅かったな。すっかり腹減っちまったよ。
飯食いに行こうぜ。昨日良い店見つけたんだよ。」
ベッドから上体を起こし、こちらに声をかけてくる。
「あぁ…そうだな、行くか。」
「で、オー・エヴィエニスのところから逃げ出した、ヴロミコーって少女を助けたいと。
今日の騒ぎはそういうことだったのか。」
ううむ、と唸りながら大きな口にステーキを運ぶ。
これで四枚目。排泄はしないが、空腹、満腹の概念はある…。
面白い身体だ。
「よっしゃ、明日行こうぜ。正面切って奪うぞ!」
勢いよく立ち上がり、大きな声を上げる。
周りからの視線を感じながらも、俺達は店を後にした。
数日前、曲がらなかった道。
そこをひたすらに真っ直ぐ進んで、森の奥の奥の奥。
白ポプラの木に囲まれた洋館。
門の前には、二人の門番が居た。
「やあやあ、ちょっと用事があって来たんだが。」
ギルガメッシュは恐れることなく、二人に近付いていく。
「オー様から客人の話は聞いていない。帰れ。」
一瞥してそう言うと、首を横に振った。
片方の門番の面前まで迫ると、するりと首を締め始めた。
「お、おい!何をしている!!」
「今だ、行け!キュクロス!」
その声に合わせて走り出す。
こちらに気付いた門番に捕まらないように、そう願いながらがむしゃらに走り、大きなドアを開け、洋館の中へ入っていった。
「えーっと…どこ行けばいいんだ…?」
侵入できたのは良いものの、初めて入るうえに地図なんか持ってない。
地図というか…マップ…いや、どっちも同じか…。
ゲームとかならミニマップが画面上に表示されたりするんだろう。
残念ながらこれはゲームじゃないので、そんなのがあるはずない。
巡回に見つからないように、中を探すしか無さそうだ。
「おい、お前…厄介事を増やすなと言ったはずだろう…!」
「す、すみません…すみません…。」
「お前の手で殺してこい。その右手でな。」
「わかりました…。」
「まったく、汚い奴隷のガキめ…。」




