不確定性プリズナー
模擬戦用の木でできた剣を突きつけられる。
また同じ負け方をしてしまった。
「まだ抜けねェのか、癖は。」
わかってはいるが、今俺ができる攻撃の中で、最もギルガメッシュに近付けるのはこの攻撃しかないだろう。
これ以外で、何か有効な手を見つけられるまで成長したい。
「よし、今日はここまで。飯食って少ししたら、情報収集兼観光に行こうぜ!」
荷物を整理し、宿屋の外で二手に分かれて観光が始まった。
そういえば、岩月さんのこの武器、どこで手に入れたものなのだろうか。
武器の名前の知識なんて無い俺は、この武器がなんなのかを解明できずにいる。
ギルガメッシュに聞けばわかるのだろうか。
商店街のような、食べ物やアクセサリーの店が並ぶ道を歩いていると、ふと、路地裏へ続く通路に目がいった。
「何か居たな…」
気になったので路地裏を進んでいくと、ボロボロの服を着た黒髪の少女が居た。
「…お兄さん、『オー・エヴィエニス』の仲間?」
俺の姿を見ると、両手を広げたまま構えて戦闘態勢に入った。
「い、いや、俺は…ギルガメッシュって言う、骸骨の仲間。」
「骸骨?ずいぶん変なのと一緒なのね。」
やっぱり変だよな…。
しかし、俺の自慢の仲間だ。
何か情報を吐いたワケではないが、ギルガメッシュのことを言ってよかったのだろうか?
疑われて戦いが始まるよりはマシか。
仮に狙われても、ギルガメッシュが負けるはずない。
「ところで、君、名前は?」
「私…私の名前は…ヴ、ヴロミコー。私、もう行くね!」
『ヴロミコー』と名乗る少女は、慌ただしく俺の前から消えていった。
少女と分かれてから少しして、ギルガメッシュと合流した。
「なんかいい話は聞けたのか?ギルガメッシュ。」
「あぁ、まぁ…貴族のオーなんとかってやつの従者が人探してたな。」
きっとさっきの少女のことだろう。
『オー・エヴィエニス』か。覚えておこう。
「貴族が?どんな関係の人を探してるとか言ってなかったか?」
「んなこと言うはずないだろ?
仮にソイツんとこから何者かが逃げ出したとなりゃ、逃げ出した何者かの存在自体が大スクープだったりするかもしれねェんだぜ。」
「たしかに、そうか…隠したいものとかあるだろうしな…。
…ギルガメッシュ、悪い、先に宿戻っててくれ。」
どうも嫌な予感がする。
貴族のところから逃げ出したボロボロの少女。
おそらく奴隷だろう。もっとよく見ておくべきだったかもしれない。
なにか決定的な証拠を見つけられたかもしれないのに。
少女のことだと確定したワケではないが、俺は急いで走り出した。
「ヴロミコー、どこにいるんだ…?」
路地裏。路地裏ならいるかもしれない。
そう思い、小道を進んでいくと、奥から啜り泣く声が聞こえてきた。
「ヴロミコー?」
気になって声をかけてみると、思った通り、先程の少女だった。
「お兄さん…!よかった、心細かったんだ。」
「ねぇ、よかったら何があったのか、教えてくれない?」
少女は苦い表情を浮かべると、口をゆっくりと開いた。
「――――。――――――!」
必死に口をパクパクさせるが、何も聞こえてこない。
「…ごめんなさい…!」
謝るなり、俺を押しのけて大通りへと走っていってしまった。




