悲劇的最期、次へと続く死
「おお、旅のお方。良くぞ戻られました。」
喜びの笑みを浮かべた聖職者はギルガメッシュの背負ったアレス・アイアースを見て、表情を曇らせた。
「彼はもう…」
「いえ、言わずとも、わかります。
アレス様の祈りとヘルメース様の力が渦巻いている…。それと…」
彼はアレスの首にかかっていたネックレスを外すと、こちらに差し出した。
「アレス様から、『私が死んだら、これは次の旅人へ』と。」
ネックレスには薄緑の小さなクリスタルが付いていて、酷く濁っていた。
「ふぅん…俺様の趣味じゃねェから、お前が着けとけよ。」
太陽に透かすようにかざしていたネックレスを俺に渡し、ギルガメッシュは彼と何かを話していた。
「何聞いてたんだ?」
遺体を聖職者に渡し、別れた後、どこかへ向かっているギルガメッシュに聞いてみた。
「アイツん家。何かヒントになるもんがあるかもしれねェだろ?
旅ってのは、誰かの犠牲の元に成り立ってるもんだからな。」
着いた家は他の家とさほど変わらない見た目で、鍵はかかっていなかった。
家族は居ない
食べ物の好き嫌いは激しそうで、酒は飲まない
女癖も悪くない
困ってる人は良く助けるようで、いろいろなものを貰うらしい。
仲間は彼含め五人。(正しくは六人)
『岩月・龍之介』
『アレス・アイアース』
『セーム・デメテル・アリア』
『ディオスティアー・ジェミニ』
『アレセルカ・デイアネラ』
ディオスティアー・ジェミニは双子で、兄のカストリュース、妹のケルトスーラの二人をまとめてそう呼んでいるらしい。
八年ほど前、西の国『オロス・イディ』にて、北の国『メギストス・フォス』との戦争で恋人の女性と共に戦い、死別。
戦争が終わり、四年後にこの村に移り住む。
人当たりもよく、村の人達には頼りにされていたが、一年と経たずに龍之介の最後の仲間として旅立つ。
蜃気楼に関することは何も書いておらず、辿り着いてから三ヶ月ほどの間を置いて再開されていた。
その内容は村に帰ってきてからの事で、まるで蜃気楼での出来事を書くことを封じられてるようだった。
セーム・デメテル・アリアは西の国、ディオスティアー・ジェミニは北の国に。
アレセルカ・デイアネラは北の国と東の国『パレルソン・ヴァスィリオ』の中間に位置する小さな集落に現在は住んでいると書いてあった。
「なァ、人の日記見んのに抵抗とかねェの?」
パラパラとページをめくり、日記を読んでいると、掃除の手を止めたギルガメッシュに話しかけられた。
「ギルガメッシュは、なんで掃除なんかしてんの?」
「なんでってそりゃ、汚かったからだろ。
つーか、手伝えよ。日記見んのはその後だ。」
渋々日記を閉じ、部屋の整理に取り掛かる。
何か物を貰うは貰うけど使わないのだろう。
そう思えるほどに、家の中には様々な物が散らばっていた。
「さて…ギルガメッシュ、これの続きを読むぞ。」
「ああ、少なからず、役に立つだろ。」
『岩月・龍之介』
・出身地不明
・曲剣とも違う特徴的な剣を扱う
・剣技は神にも勝ると言っても過言ではないだろう
・恋人が居る
・かなり美人らしい
・恋人の名前は「エウフェミア・ルヴナ」
『セーム・デメテル・アリア』
・西の国出身
・八年前の戦争にて少し話した程度だが覚えている
・仲間の強化、敵の弱体化が主な役割
・明るく元気な女の子
・実際は女の子と言うほど若くないらしい
・旅に出ることを家族に話した時に貰った短剣を大切にしている
『カストリュース』
・双子の兄の方
・妹と違い不死身ではない
・様々な武器を扱える
・妹の意識と深く繋がることで一つになる
・一つになるのは体力の消費が激しいが強力
・繋がってる間に死ぬことはない
・シスコン
『ケルトスーラ』
・双子の妹の方
・不死身
・星の力を借りて戦う
・ブラコン
『ディオスティアー・ジェミニ』
・北の国付近の草原にて星空の夜に倒れているところを発見
・二人とも美形
・繋がってる間の強さは規格外
・連続での活動は三分から五分が限界
『アレセルカ・デイアネラ』
・東の国出身
・怪力
・女性のはずなんだけどな…
・すぐ無茶する
・彼女が居なかったら勝てなかった場面も多いだろう
「決まったな、キュクロス。次は西の国に行くぞ。」
常ノ理を求め、始まった旅。
貴重な情報を手に入れ、二人にとっての未開の地へと繰り出して行く。
蜃気楼への入口は見つかるのか。
二人を待つ更なる困難に不安を覚えるキュクロス、ワクワクが止まらないギルガメッシュだった。
第一章
勇者と死者、護り、廻らせる者。
〜完〜




